悪役令嬢として役を頂いたからには、最後まで演じきりたいです!

椎名さえら

文字の大きさ
12 / 17
エディス・コーンウォール嬢の婚活

4

しおりを挟む
ノーランから聞いた話は、ますます私を気鬱にさせた。

オスカー・ナイトウェル将軍は、やはりこの国の英雄と言ってもいいほどの戦歴を誇る軍人であった。もともと地方の平民の出なのだが、賢王と名高い今生の王が騎士試験を一般市民にも門戸を広げて受けることを許したことにより、難しいと言われている騎士試験を一発で合格、その後騎士として鍛錬を積み、どんどん出世をしていき、王から将軍補佐として任命されたのだという。普通将軍と名のつく役職につくのは有力貴族の出が多いことからものすごい抜擢だったと思われる。

私の予想と違ったのは参謀役でもある彼はきちんと前線でもガンガン出ていく戦士だということ。なので部下からものすごい慕われているそうだ。つい先日の異国での闘いで凄まじい戦果をあげたオスカー・ナイトウェル将軍補佐はついに将軍に昇進した。これだけの経歴を持つ人なので間違いなく侯爵の爵位を受勲するというのもあながち噂ではないのかもしれない。

一般人はこういうヒーローを求めているもので、ノーランによるとオスカーの立身出世物語は大衆紙でも書き立てられ、ものすごい神聖化しているそうだ。

私はゴリラが好きなので、あまり頭がいい方は好きではない(マイルドに言いましたが失礼なことを言っています、反省している)。そういうと前世の彼のことを揶揄っているようだが、私が言っているのは狡猾な人が好きではないという意味で、彼は別に普通の人だった。だからオスカーのように絶対にぜーーーったいに頭がそういう意味で回る人は好きじゃない。

オスカーはなんでか知らないが、私に多少は興味を持っているのかもしれないが、そういうの、大丈夫です。これだけ素晴らしい方であるなら、ほかにふさわしい方がいらっしゃると思いますので、

断る!断ってやるーー!!


と、思っていたのだが。



訪問は午後に設定されていたのでお茶を一緒に飲む事になった。我が家に颯爽と現れたオスカー・ナイトウェル将軍は昨日の夜会に比べるとカジュアルな格好をしていたので、要は薄着だったため、筋肉の鍛え具合がよく分かったのである。

(確かに…確かに、上腕二頭筋と上腕三頭筋は私の好みほど鍛えられていないけど…大腿四頭筋とハムストリングのバランスはとても好みだし、下腿三頭筋の締り具合も思っていたより良い…そして大胸筋はこれくらいの厚さの方が意外にいいかもしれない…あまりに厚すぎると日常生活に支障をきたすかもしれないしね)

ああでも上腕筋は捨てがたい…

私が阿呆なことを考えている間に両親とノーランが、オスカーに話しかけてくれるので助かった。やがて私がほとんど話していないのを気にした父親が私にオスカーを庭園に案内にするようにけしかけた。ええーーー!?行きたくないなぁ…でも仕方ないのでしぶしぶ席を立って彼と庭園に向かうことにする。季節は春なので外を歩くのは気持ちがいいことは否定できない。彼とは身長差は25センチと言ったところか。やはり近くに立つと言葉にできない威圧感はある。庭園の小道をゆっくり歩きながらオスカーはまず私の右腕を気遣ってくれた。

「公爵夫妻の前で言うのは憚られると思って聞かなかったのだが…その様子だと右腕は問題ないようだな?」

最初に聞いてくれるのは礼儀正しいと、思った。もしくは本気で心配してくれてる風である、と。

「はい、ナイトウェル将軍のご助言通り、昨夜冷やして寝ましたので…朝には元通りでしたわ」

彼は私の素っ気ない返事に、嫌味のない感じでさらりと笑った。

「君は面白い令嬢だね、普通は俺の気をひこうとしてあれやこれやと喋りかけてくるのに」

モテてる男の台詞ですね。うん、間違いなくこの男の女性遍歴は凄そうだ。どうかどうかご自分のことを慕っている令嬢の中から結婚相手をお探しくださいませ!

「まぁ普通ではないのかもしれませんね(だから私に興味を持っても仕方ないですよ)」

彼が私の答えを聞くと、破顔した。しかめ面ばかりするような印象を与える容貌だが、笑うと若々しいし、意外に表情は豊かだった。

「君はきっと詩とか唄を贈って欲しくない感じかな?」

「そうですね、何の足しにもなりませんのでね」

嫌われてもいい相手なので、気遣わずするする言葉が出る。ふむ、と彼が顎に手をやって考える。

「この感じだと宝石とかにも興味がなさそうだ…君が興味を示すのって何だ?」

(それは勿論、筋肉…)

でもさすがの私もそこまでは言えなかったので、上品に肩を竦めてみせる。

「適度に知的な会話、くらいでしょうか」

「適度に…」

またもや爆笑している。
意外にも話していてあまり苦痛に感じない相手だ。
私も思っているよりはこの人悪い人ではないのだな、ということは分かった。ゴリラ率としては1%だと思っていたがきちんと筋肉を検分した結果、ゴリラ率は14%にあがりました、おめでとうございます!

オスカーは何事かを考えていた様子だったが、彼らしく質問は直球だった。

「俺が求婚をしたら受けてくれるか?」

「は?」

あまりにも突然のことを言われると、公爵令嬢としての口調を保っていられなくなる。

「俺が平民の出であることが気にならないなら君に求婚したい」

断ることも忘れて、ただただ私はぽかんとした。

「私は爵位などは気にしませんが…あのそれより、昨日の今日で…早すぎませんか?」

「俺は直感を信じる性質タチでね。俺の直感は外れたことがない。それで君に求婚しろって俺の直感は告げている」

直感直感うるさいし、

ド ン 引 き。

「いやそれは…私に軍人の妻は務まらないと思いますし、謹んでお断りーー」

またしても全部は言わせてもらえなかった。

「それは心配はいらない。近々侯爵になった暁には将軍の名は返還する。王にも承諾を得ているから俺がこれ以上戦場に赴くことはない」

「いやそう言われましても…」

「では君のご両親に今から話に行こう」

「ええええ!?」

今、私の躊躇い、聞いてた?
気づいてない?
一回も肯定してないよ?

絶対うちの両親、2つ返事で了承するよね?!彼が踵を返しかけて、ふと私の顔をまじまじと見るので、まぁゴリラ率14%でもこれだけのイケメンに見つめられると私の顔は多少熱くなった。

「一目惚れだ。昨夜、あの酔っ払いのしょうもない屑に言い返している声がまず良かった。凛としていて、内容には筋が通っていた。一歩も引かない気の強さもグッときた。それから振り返って俺を見たときにこんな美しい令嬢がこの世にいたのかと思うほど、外見もこれ以上ないほどの俺の好みだ。俺の直感はこの人を離してはいけないと言っている」

不意打ち、ず、ずるくない?
こういう攻撃、さすが策略家…

私の心は若干揺らめいた。

オスカーは私の右手を取って、ちゅっとキスを落とした。

「俺のことはこれから知って貰えばいい。きっと君に後悔はさせないと約束しよう。大事にする」
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢が睨んでくるので、理由を聞いてみた

ちくわ食べます
恋愛
転生したのは馴染みのない乙女ゲームの世界だった。  シナリオは分からず、登場人物もうろ覚え、タイトルなんて覚えてすらいない。 そんな世界でモブ男『トリスタン』として暮らす主人公。 恋愛至上主義な学園で大人しく、モブらしく、学園生活を送っていたはずなのに、なぜか悪役令嬢から睨まれていて。 気になったトリスタンは、悪役令嬢のセリスに理由を聞いてみることにした。

【完結】元悪役令嬢は、最推しの旦那様と離縁したい

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
「アルフレッド様、離縁してください!!」  この言葉を婚約者の時から、優に100回は超えて伝えてきた。  けれど、今日も受け入れてもらえることはない。  私の夫であるアルフレッド様は、前世から大好きな私の最推しだ。 推しの幸せが私の幸せ。  本当なら私が幸せにしたかった。  けれど、残念ながら悪役令嬢だった私では、アルフレッド様を幸せにできない。  既に乙女ゲームのエンディングを迎えてしまったけれど、現実はその先も続いていて、ヒロインちゃんがまだ結婚をしていない今なら、十二分に割り込むチャンスがあるはずだ。  アルフレッド様がその気にさえなれば、逆転以外あり得ない。  その時のためにも、私と離縁する必要がある。  アルフレッド様の幸せのために、絶対に離縁してみせるんだから!!  推しである夫が大好きすぎる元悪役令嬢のカタリナと、妻を愛しているのにまったく伝わっていないアルフレッドのラブコメです。 全4話+番外編が1話となっております。 ※苦手な方は、ブラウザバックを推奨しております。

「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)

透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。 有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。 「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」 そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて―― しかも、彼との“政略結婚”が目前!? 婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。 “報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

転生賢妻は最高のスパダリ辺境伯の愛を独占し、やがて王国を救う〜現代知識で悪女と王都の陰謀を打ち砕く溺愛新婚記〜

紅葉山参
恋愛
ブラック企業から辺境伯夫人アナスタシアとして転生した私は、愛する完璧な夫マクナル様と溺愛の新婚生活を送っていた。私は前世の「合理的常識」と「科学知識」を駆使し、元公爵令嬢ローナのあらゆる悪意を打ち破り、彼女を辺境の落ちぶれた貴族の元へ追放した。 第一の試練を乗り越えた辺境伯領は、私の導入した投資戦略とシンプルな経営手法により、瞬く間に王国一の経済力を確立する。この成功は、王都の中央貴族、特に王弟公爵とその腹心である奸猾な財務大臣の強烈な嫉妬と警戒を引き寄せる。彼らは、辺境伯領の富を「危険な独立勢力」と見なし、マクナル様を王都へ召喚し、アナスタシアを孤立させる第二の試練を仕掛けてきた。 夫が不在となる中、アナスタシアは辺境領の全ての重責を一人で背負うことになる。王都からの横暴な監査団の干渉、領地の資源を狙う裏切り者、そして辺境ならではの飢饉と疫病の発生。アナスタシアは「現代のインフラ技術」と「危機管理広報」を駆使し、夫の留守を完璧に守り抜くだけでなく、王都の監査団を論破し、辺境領の半独立的な経済圏を確立する。 第三の試練として、隣国との緊張が高まり、王国全体が未曽有の財政危機に瀕する。マクナル様は王国の窮地を救うため王都へ戻るが、保守派の貴族に阻まれ無力化される。この時、アナスタシアは辺境伯夫人として王都へ乗り込むことを決意する。彼女は前世の「国家予算の再建理論」や「国際金融の知識」を武器に、王国の経済再建計画を提案する。 最終的に、アナスタシアとマクナル様は、王国の腐敗した権力構造と対峙し、愛と知恵、そして辺境の強大な経済力を背景に、全ての敵対勢力を打ち砕く。王国の危機を救った二人は、辺境伯としての地位を王国の基盤として確立し、二人の愛の結晶と共に、永遠に続く溺愛と繁栄の歴史を築き上げる。 予定です……

悪役令嬢のはずですが、年上王子が幼い頃から私を甘やかす気でいました

ria_alphapolis
恋愛
私は、悪役令嬢なのかもしれない。 王子の婚約者としては少し我儘で、周囲からは気が強いと思われている―― そんな自分に気づいた日から、私は“断罪される未来”を恐れるようになった。 婚約者である年上の王子は、今日も変わらず優しい。 けれどその優しさが、義務なのか、同情なのか、私にはわからない。 距離を取ろうとする私と、何も言わずに見守る王子。 両思いなのに、想いはすれ違っていく。 けれど彼は知っている。 五歳下の婚約者が「我儘だ」と言われていた幼い頃から、 そのすべてが可愛くて仕方なかったことを。 ――我儘でいい。 そう決めたのは、ずっと昔のことだった。 悪役令嬢だと勘違いしている少女と、 溺愛を隠し続ける年上王子の、すれ違い恋愛ファンタジー。 ※溺愛保証/王子視点あり/幼少期エピソードあり

目覚めたら大好きなアニメの悪役令嬢でしたが、嫌われないようにしただけなのに全員から溺愛されています

月影みるく
恋愛
目を覚ましたら、大好きだったアニメの世界。 しかも私は、未来で断罪される運命の悪役令嬢になっていた。 破滅を回避するために決めたことはただ一つ―― 嫌われないように生きること。 原作知識を頼りに穏やかに過ごしていたはずなのに、 なぜか王族や騎士、同年代の男女から次々と好意を向けられ、 気づけば全員から溺愛される状況に……? 世界に一人しかいない光属性を持つ悪役令嬢が、 無自覚のまま運命と恋を変えていく、 溺愛必至の異世界転生ラブファンタジー。

王子好きすぎ拗らせ転生悪役令嬢は、王子の溺愛に気づかない

エヌ
恋愛
私の前世の記憶によると、どうやら私は悪役令嬢ポジションにいるらしい 最後はもしかしたら全財産を失ってどこかに飛ばされるかもしれない。 でも大好きな王子には、幸せになってほしいと思う。

処理中です...