悪役令嬢として役を頂いたからには、最後まで演じきりたいです!

椎名さえら

文字の大きさ
16 / 17
オスカー・ナイトウェル将軍の結婚

彼の愛しの奥様

しおりを挟む
オスカー・ナイトウェルは泣く子も黙る鬼将軍であった。

今は侯爵の爵位を賜り、将軍の座は惜しまれつつも王に返上した。
これからは王から褒章として得た地方の侯国を領地として治めながら生きていくことにした。

何しろ最愛の人を見つけたのだ。将軍のままであったら戦時は異国に行かなければならないし、自分の命だってもちろん危うい。守るべき者を得た人間こそ、上に立って指揮をすればと思われるかもしれないが、オスカーは子供時代からずっと出世するために邁進してきたし、愛する人を見つけた今はもうのんびりと暮らしたいと思った。

エディス嬢は、公爵令嬢であったが、オスカーにとってはいつも想像以上のことをしてくれる。

最初に気づいたのは、結婚してしばらくしてから、彼女の方が珍しく先に起きた朝にベッドのすぐ側の床で謎のポーズをしているのを見つけたことだ。あまりにも独特のポーズだったので、声をかけずにしばらく眺めていた。やっぱり意味が分からなくて声をかけたら、自分が考えついた軽い運動を毎朝10分すると、すごく体が軽くなるというのだ。やれこれがワニのポーズでお腹の動きが活発になるとか、チャイルドポーズは体を徐々に目覚めさせる狙いがある、とか熱く語ってくるので、興味を惹かれて自分もしてみることにした。

これが不思議なことに彼女の言う通り、するとしないとでは寝起きの身体の動きが違う。もともと鍛えているのでそこまで朝から身体が動かないと思ったことがないのだが、彼女によるとその前段階でとにかくこのゆっくりした動きがいい、という。

昼や寝る前も気づけば時々この謎の運動をしているので自分も暇があれば参加するし、徐々に彼女はオスカー用に考えたポーズを指導してくれるようになった。彼女の説明は淀みなく分かり易かったので彼はその時間も楽しむようになった。

ある朝なんかは「肩が痛い」といって、首を左右に倒したり、ケンコウコツ?を片方ずつグルグル回してみて、痛い方のソウボウキン?を手でおさえてそのままケンコウコツ?を背中側にひきよせて大きく回して…あとなんだっけな、なんか色々やって自分でだいぶ良くなったわぁといってニコニコしていたので、ベッドに横たわりながらじっと見守りつつ、実に興味深い女性だなと見ていて飽きない。

すごく不思議な女性で、初めてベッドと共にした時も、確かに処女だったのだがやけに手慣れていたので、他の男がいたのかと思わず嫉妬した。エディスはまったく焦ることなく、貴方は童貞ではないでしょう?と言い返してきた。私は処女だったのよ、と。そう言われるとその通りなのだが、自分は若い頃に興味本位で一度二度娼館に行って寝た経験があるだけ(しかも特にいいとも思えなかった)とは言えなかった。その後は凄まじい忙しさと鍛錬の厳しさでとても女性のことを考えている暇なんかなかったのである。エディス曰く、公爵令嬢としてちゃんと閨の指導があったのをキチンと受けていただけだ、と、言われると平民出身の自分は黙るしかない。それにしてもエディスは…言葉は下衆になるが…とてつもなくエロかった。彼女には言えないが、正直…娼婦より…エロかった。そういう意味でも彼女以外の女は考えられない。

とはいえ、エディスはしかし全然公爵令嬢らしくなかった。

自分が国の英雄となってから出会った貴族令嬢たちは皆押し並べて白粉を塗りすぎ、化粧も厚化粧すぎ、声は高すぎ、人に媚びすぎ、でまったくもって全員が同じ人間に見えるくらいの類似品にしか感じられなかった。国の英雄であるオスカーに興味はあるが、オスカー・ナイトウェルという人間には興味がないのだろう。彼女たちは婚約者になる人間をただのアクセサリー、自分の付属品としか見ていないのは丸わかりで、貴族令嬢なんかろくでもないなと思っていた矢先に出会ったのがエディスだった。

凛として男に一歩も引かなかった姿に一目惚れした。知れば知るほど愛は深まっているし、彼女を逃さないと追いかけたのは今でも英断だったと思っている。

寝室のドアを開けたら彼女が…両膝を開いてしゃがんで、胸の前で手を合わせてふぅーーーと深呼吸をしていた。

「これは…何のポーズかな?」

慣れたものでポーズの名前を聞く。彼女はきらりと瞳を輝かせて、花輪のポーズと答えたので、頷いておく。

「股関節が柔らかくなるのよ」

「コカンセツ…?」

何故か彼女が顔を赤らめたのだが意味がまったく分からない。まぁでも今日も元気そうで何よりだ、と思いながらクロークに向かう背中に彼女が何かを呟いていた。

「ほら貴方のが…大きいから…攻められている時間も長いし…ほぐしとかないといけないかなと思って…筋トレの効果でゴリラ率も徐々に上がってきているしね…」

しかし残念ながらオスカーの耳には届いておらず、寝室に再度戻ってくると、彼女の顔は真っ赤だったのでもう一度言って欲しいと頼んだが、エディスは二度と口にしなかった

「ほら…まぁ…いいから、ね」

ゆったりと彼女がもたれかかってくると、彼女の身体の柔らかさを感じ、心ゆくまで愛でることしか考えられなくなる。オスカーは愛しい妻にすっかり溺れていた。彼女さえ側にいてくれたら、それ以上は望むべくもない。


<了>

________________________________________


エディス嬢、ヨガのインストラクターでしたね。
ヨガいいですよねー。
そしてうまいこといってオスカーの体を彼女は自分好みにどんどん鍛えていくのでしょう🤣

レオナルドに比べると普通だったかな…元将軍




しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢が睨んでくるので、理由を聞いてみた

ちくわ食べます
恋愛
転生したのは馴染みのない乙女ゲームの世界だった。  シナリオは分からず、登場人物もうろ覚え、タイトルなんて覚えてすらいない。 そんな世界でモブ男『トリスタン』として暮らす主人公。 恋愛至上主義な学園で大人しく、モブらしく、学園生活を送っていたはずなのに、なぜか悪役令嬢から睨まれていて。 気になったトリスタンは、悪役令嬢のセリスに理由を聞いてみることにした。

【完結】元悪役令嬢は、最推しの旦那様と離縁したい

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
「アルフレッド様、離縁してください!!」  この言葉を婚約者の時から、優に100回は超えて伝えてきた。  けれど、今日も受け入れてもらえることはない。  私の夫であるアルフレッド様は、前世から大好きな私の最推しだ。 推しの幸せが私の幸せ。  本当なら私が幸せにしたかった。  けれど、残念ながら悪役令嬢だった私では、アルフレッド様を幸せにできない。  既に乙女ゲームのエンディングを迎えてしまったけれど、現実はその先も続いていて、ヒロインちゃんがまだ結婚をしていない今なら、十二分に割り込むチャンスがあるはずだ。  アルフレッド様がその気にさえなれば、逆転以外あり得ない。  その時のためにも、私と離縁する必要がある。  アルフレッド様の幸せのために、絶対に離縁してみせるんだから!!  推しである夫が大好きすぎる元悪役令嬢のカタリナと、妻を愛しているのにまったく伝わっていないアルフレッドのラブコメです。 全4話+番外編が1話となっております。 ※苦手な方は、ブラウザバックを推奨しております。

「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)

透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。 有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。 「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」 そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて―― しかも、彼との“政略結婚”が目前!? 婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。 “報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

転生賢妻は最高のスパダリ辺境伯の愛を独占し、やがて王国を救う〜現代知識で悪女と王都の陰謀を打ち砕く溺愛新婚記〜

紅葉山参
恋愛
ブラック企業から辺境伯夫人アナスタシアとして転生した私は、愛する完璧な夫マクナル様と溺愛の新婚生活を送っていた。私は前世の「合理的常識」と「科学知識」を駆使し、元公爵令嬢ローナのあらゆる悪意を打ち破り、彼女を辺境の落ちぶれた貴族の元へ追放した。 第一の試練を乗り越えた辺境伯領は、私の導入した投資戦略とシンプルな経営手法により、瞬く間に王国一の経済力を確立する。この成功は、王都の中央貴族、特に王弟公爵とその腹心である奸猾な財務大臣の強烈な嫉妬と警戒を引き寄せる。彼らは、辺境伯領の富を「危険な独立勢力」と見なし、マクナル様を王都へ召喚し、アナスタシアを孤立させる第二の試練を仕掛けてきた。 夫が不在となる中、アナスタシアは辺境領の全ての重責を一人で背負うことになる。王都からの横暴な監査団の干渉、領地の資源を狙う裏切り者、そして辺境ならではの飢饉と疫病の発生。アナスタシアは「現代のインフラ技術」と「危機管理広報」を駆使し、夫の留守を完璧に守り抜くだけでなく、王都の監査団を論破し、辺境領の半独立的な経済圏を確立する。 第三の試練として、隣国との緊張が高まり、王国全体が未曽有の財政危機に瀕する。マクナル様は王国の窮地を救うため王都へ戻るが、保守派の貴族に阻まれ無力化される。この時、アナスタシアは辺境伯夫人として王都へ乗り込むことを決意する。彼女は前世の「国家予算の再建理論」や「国際金融の知識」を武器に、王国の経済再建計画を提案する。 最終的に、アナスタシアとマクナル様は、王国の腐敗した権力構造と対峙し、愛と知恵、そして辺境の強大な経済力を背景に、全ての敵対勢力を打ち砕く。王国の危機を救った二人は、辺境伯としての地位を王国の基盤として確立し、二人の愛の結晶と共に、永遠に続く溺愛と繁栄の歴史を築き上げる。 予定です……

悪役令嬢のはずですが、年上王子が幼い頃から私を甘やかす気でいました

ria_alphapolis
恋愛
私は、悪役令嬢なのかもしれない。 王子の婚約者としては少し我儘で、周囲からは気が強いと思われている―― そんな自分に気づいた日から、私は“断罪される未来”を恐れるようになった。 婚約者である年上の王子は、今日も変わらず優しい。 けれどその優しさが、義務なのか、同情なのか、私にはわからない。 距離を取ろうとする私と、何も言わずに見守る王子。 両思いなのに、想いはすれ違っていく。 けれど彼は知っている。 五歳下の婚約者が「我儘だ」と言われていた幼い頃から、 そのすべてが可愛くて仕方なかったことを。 ――我儘でいい。 そう決めたのは、ずっと昔のことだった。 悪役令嬢だと勘違いしている少女と、 溺愛を隠し続ける年上王子の、すれ違い恋愛ファンタジー。 ※溺愛保証/王子視点あり/幼少期エピソードあり

目覚めたら大好きなアニメの悪役令嬢でしたが、嫌われないようにしただけなのに全員から溺愛されています

月影みるく
恋愛
目を覚ましたら、大好きだったアニメの世界。 しかも私は、未来で断罪される運命の悪役令嬢になっていた。 破滅を回避するために決めたことはただ一つ―― 嫌われないように生きること。 原作知識を頼りに穏やかに過ごしていたはずなのに、 なぜか王族や騎士、同年代の男女から次々と好意を向けられ、 気づけば全員から溺愛される状況に……? 世界に一人しかいない光属性を持つ悪役令嬢が、 無自覚のまま運命と恋を変えていく、 溺愛必至の異世界転生ラブファンタジー。

王子好きすぎ拗らせ転生悪役令嬢は、王子の溺愛に気づかない

エヌ
恋愛
私の前世の記憶によると、どうやら私は悪役令嬢ポジションにいるらしい 最後はもしかしたら全財産を失ってどこかに飛ばされるかもしれない。 でも大好きな王子には、幸せになってほしいと思う。

処理中です...