小林結城は奇妙な縁を持っている

木林 裕四郎

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友宮の守護者編

行き止まり

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「!? 何だ今の―――――うわっ!」
 不意に伝播してきた巨大な振動に気を取られ、危うくハルバートの一撃を受けてしまうところ、結城は間一髪で回避した。
 油断さえしなければ甲冑が放ってくる攻撃は避けられる。しかし、いくら急所に木刀を叩き込んだところで、中身が泥のゴーレムではほとんど効果がない。本当にただの泥なのだから。
 それも泥のゴーレムだけでなく、外殻であるフルプレートアーマーもゴーレムだというのだから余計に手強い。霊視能力のある佐権院ならともかく、今の結城では目の前の二重デュアルゴーレムを倒す手段は思いつかなかった。ただ、それよりも―――――
「先に行けって。佐権院警視はどうするんですか!?」
 佐権院からも投げかけられた提案。結城が先に進むという選択。友宮の執り行う神降ろしの儀式の完成まで、もう時間がないかもしれない。だからこそ、誰かが先に行くしかない。それは解る。が、
「二重ゴーレムは私が食い止める! 君はその犬神と儀式が行われている場所に行け!」
「けど、それは……」
 ゴーレムの急所『emeth』の文字がどこにあるか分からない結城が相手をするより、霊視ができる佐権院の方が有利なのは確かだ。それでも、佐権院は結城と同じく人間だ。ここまで後ろを任せてきた人ならざる者たちとは違う。ゴーレムの強さも厄介さも、今まで出くわしてきたどの敵より上だ。結城自身、ギリギリの攻防を続けているが、体力が無尽蔵のゴーレム相手に交戦を続ければ、勝算は圧倒的に低い。佐権院も相当な剣の腕を有し、パートナーであるトオミの能力も相まって高い戦闘力はあるが、二重ゴーレムを相手にどこまで保つか。
 先を急がなければならないが、犠牲者を承知で進むことも、結城には躊躇われた。
「小林くん!」
「あっ!!」
 考えを巡らせ過ぎたのか、気付いた時には甲冑が振るったハルバートの横薙ぎが、結城の目前まで迫っていた。もう避けられる距離ではない。命の危険が差し迫り、周りがスローモーションに見える中、結城は砕かれることを覚悟で木刀で防御体勢を取った。
 幸い、ハルバートの刃部には当たらなかった。だが、衝突した柄はゴーレム二体分の膂力が乗っており、人間一人分の身体を簡単に吹き飛ばす威力を持っていた。
「ぐあっ!」
 マスクマンが材料を選び、アテナが設計し、シロガネが製作した極太の木刀は、ハルバートの一撃に耐えうる程に頑強だった。その耐久力に救われはしたものの、腕から胴体に強い衝撃を受けながら、結城は長大な廊下の端まで飛ばされた。その終端にあった扉に激突し、扉もろとも内部へと転がり込んだ。慣性が収まらないまま二転三転して、ようやく結城は床の一角で落ち着いた。
「うぅ……いたた……って、ここは」
 背中を強く打ちつけた痛みに堪えながら立ち上がった結城は、飛び込んだ部屋を見渡した。まるで体育館のように広大な空間だった。天井に吊るされた幾つもの巨大なシャンデリア。展望バルコニーへと続くシンメトリー造形の二つの階段。磨き上げられた無垢の床材。素人の結城から見ても、見事なダンスホールがそこに拡がっていた。
「……あれ?」
 ただ、その場所を一通り見回した結城には一つの疑問が浮かんだ。整然としたダンスホールには、窓と展望バルコニーはあるが、どこにもドアがない。つまり、次に進むための通路がない。
「まさか……行き止まり?」
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