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化生の群編
媛寿の隠れ箱
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爆発と見紛うほどの威力で壁が吹き飛び、風とともに塵芥が殺到する。まるで猛吹雪の中でのホワイトアウトのように、その場にいた誰もが状況を確認できなかった。
「な、何!?」
「何だ!?」
雛祈も稔丸も立ち込める粉塵に視界を遮られ、衝撃に襲われた居間がどうなったのか分からない。手探りで進もうにも、何者かが襲撃してきた可能性もあるので、迂闊には動けない。かと言って粉塵が晴れるのを待っていては手遅れになっているかもしれない。
(ど、どうすれば……)
進退窮まり歯噛みしていた雛祈の手首を誰かが握った。
「えっ!? わっ!」
掴まれたことに驚く間もなく、雛祈は手から一気に引き下ろされた。滑り込むようにして倒れたその先は、かなり薄暗かったが粉塵は舞っていなかった。
一体どこに引きずり込まれたのかと思い、雛祈は上を見上げると、天井が居間にいた時よりもずっと近くなっている。薄暗い中で捉えたその天井の材質には見覚えがあった。
段ボールだ。それで雛祈は自身がどこに移動したのかを察知した。
「どわっ! あっ、雛祈ちゃん!」
「うおぅ! お、お嬢!」
「ひゃあぁ! お、お嬢様~」
覘単語き窓から漏れるわずかな光のみの段ボール箱の中に、稔丸、桜一郎、千冬と、次々に引きずり込まれてくる。結城が雛祈と稔丸を、媛寿が桜一郎と千冬を、それぞれ段ボール箱の中に匿ったのだ。皆が粉塵で視界を奪われる中、箱の中にいた結城と媛寿だけは難を逃れ、四人を箱に避難させるという行動が取れた。
「あとは村長さんを―――」
残るは村長のみ。吹き飛ばされたりしていないければ、村長も割りと近くにいるはずと思い、結城は覘き穴から外を見ようとした。
「わひゃっ! ちょっとドコを触って―――」
「へっ? おわぁっ! ご、ごめんなさい!」
かなり大きめの段ボール箱ではあっても、計六人も詰まってはさすがに身動きが取りづらい。覘き窓に近付こうとした結城の手は、何か柔らかいものを押し潰したような感触を捉えたが、どうやら雛祈の体のどこかに手をついてしまったらしい。
「殺す! 今からでも殺してやる! 祀凰寺家の力を全部使って社会的に抹殺してやる!」
「ぎゃあ! 待って! ひ、ひっかかないで!」
「お嬢、落ち着け!」
「お、お嬢様! お、お気を確かに!」
「暴れると箱が壊れるぞ、雛祈ちゃん」
「ゆうきいじめるならでてけぇ!」
段ボール箱内でプチ内乱が起こりかけたが、次に聞こえてきた声で全員が凍りついたように動きを止めた。
「お、お前は―――ぐあぁ!」
村長、岸角碩左衛門の声だった。何かに驚いた様子だったが、すぐにそれは苦悶の声に変わった。聞いていた全員の神経が強張る。
だが、状況は非常に悪い。村長の口ぶりから、何者かが襲撃してきていることは、もはや間違いなかった。
すぐにでも突撃したいところだったが、まだ粉塵は晴れていない。視界の効かないうちに攻撃を仕掛ければ、村長に怪我を負わせることにもなりかねない。
一瞬の遅れも許されない中、誰もがその一瞬の中で動けなくなっていた。
いや、一人だけ、段ボール箱の外に躍り出る影があった。桜色の振袖をはためかせる小柄な影。
媛寿だった。飛び出しざまに左袖の中から何かを引き抜き、肩担ぎに大きく振りかぶる。
「せーの、ワッショーイ!」
媛寿の体よりも二回りは大きい、『祭』の文字がでかでかと書かれた大団扇が、掛け声とともに振りぬかれた。部屋全体の空気を一度に追い出し、同時に立ち込めていた粉塵も、破壊された壁の外に弾き出された。
(好機!)
視界を遮っていた粉塵が除去されたと知るや否や、雛祈は段ボール箱を払いのけた。
「ああっ! えんじゅの段ボール!」
やや乱暴に払いのけたので、段ボール箱は形がひしゃげてしまった。
「桜一郎! 千冬!」
媛寿の悲鳴をよそに、雛祈は従者の鬼たちに命ずる。すぐに二人は雛祈を護るように前面に出て身構える。
布陣は完了。これでどんな状況にも対応できる。
雛祈は押し入ってきた襲撃者を確認すべく前を見据えたが、その姿に目を見張った。
「な、何!?」
「何だ!?」
雛祈も稔丸も立ち込める粉塵に視界を遮られ、衝撃に襲われた居間がどうなったのか分からない。手探りで進もうにも、何者かが襲撃してきた可能性もあるので、迂闊には動けない。かと言って粉塵が晴れるのを待っていては手遅れになっているかもしれない。
(ど、どうすれば……)
進退窮まり歯噛みしていた雛祈の手首を誰かが握った。
「えっ!? わっ!」
掴まれたことに驚く間もなく、雛祈は手から一気に引き下ろされた。滑り込むようにして倒れたその先は、かなり薄暗かったが粉塵は舞っていなかった。
一体どこに引きずり込まれたのかと思い、雛祈は上を見上げると、天井が居間にいた時よりもずっと近くなっている。薄暗い中で捉えたその天井の材質には見覚えがあった。
段ボールだ。それで雛祈は自身がどこに移動したのかを察知した。
「どわっ! あっ、雛祈ちゃん!」
「うおぅ! お、お嬢!」
「ひゃあぁ! お、お嬢様~」
覘単語き窓から漏れるわずかな光のみの段ボール箱の中に、稔丸、桜一郎、千冬と、次々に引きずり込まれてくる。結城が雛祈と稔丸を、媛寿が桜一郎と千冬を、それぞれ段ボール箱の中に匿ったのだ。皆が粉塵で視界を奪われる中、箱の中にいた結城と媛寿だけは難を逃れ、四人を箱に避難させるという行動が取れた。
「あとは村長さんを―――」
残るは村長のみ。吹き飛ばされたりしていないければ、村長も割りと近くにいるはずと思い、結城は覘き穴から外を見ようとした。
「わひゃっ! ちょっとドコを触って―――」
「へっ? おわぁっ! ご、ごめんなさい!」
かなり大きめの段ボール箱ではあっても、計六人も詰まってはさすがに身動きが取りづらい。覘き窓に近付こうとした結城の手は、何か柔らかいものを押し潰したような感触を捉えたが、どうやら雛祈の体のどこかに手をついてしまったらしい。
「殺す! 今からでも殺してやる! 祀凰寺家の力を全部使って社会的に抹殺してやる!」
「ぎゃあ! 待って! ひ、ひっかかないで!」
「お嬢、落ち着け!」
「お、お嬢様! お、お気を確かに!」
「暴れると箱が壊れるぞ、雛祈ちゃん」
「ゆうきいじめるならでてけぇ!」
段ボール箱内でプチ内乱が起こりかけたが、次に聞こえてきた声で全員が凍りついたように動きを止めた。
「お、お前は―――ぐあぁ!」
村長、岸角碩左衛門の声だった。何かに驚いた様子だったが、すぐにそれは苦悶の声に変わった。聞いていた全員の神経が強張る。
だが、状況は非常に悪い。村長の口ぶりから、何者かが襲撃してきていることは、もはや間違いなかった。
すぐにでも突撃したいところだったが、まだ粉塵は晴れていない。視界の効かないうちに攻撃を仕掛ければ、村長に怪我を負わせることにもなりかねない。
一瞬の遅れも許されない中、誰もがその一瞬の中で動けなくなっていた。
いや、一人だけ、段ボール箱の外に躍り出る影があった。桜色の振袖をはためかせる小柄な影。
媛寿だった。飛び出しざまに左袖の中から何かを引き抜き、肩担ぎに大きく振りかぶる。
「せーの、ワッショーイ!」
媛寿の体よりも二回りは大きい、『祭』の文字がでかでかと書かれた大団扇が、掛け声とともに振りぬかれた。部屋全体の空気を一度に追い出し、同時に立ち込めていた粉塵も、破壊された壁の外に弾き出された。
(好機!)
視界を遮っていた粉塵が除去されたと知るや否や、雛祈は段ボール箱を払いのけた。
「ああっ! えんじゅの段ボール!」
やや乱暴に払いのけたので、段ボール箱は形がひしゃげてしまった。
「桜一郎! 千冬!」
媛寿の悲鳴をよそに、雛祈は従者の鬼たちに命ずる。すぐに二人は雛祈を護るように前面に出て身構える。
布陣は完了。これでどんな状況にも対応できる。
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