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竜の恩讐編
閃光の救援者 その2
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「タケミカヅチ様……」
結城の危機に現れた雷光の武神に、アテナは驚きのあまり目を丸くした。
幸いコチニールは建御雷神が来た時の雷で、横に吹き飛ばされて倒れているが、アテナとしては珍しく無防備な状態を晒していた。
「……」
建御雷神は不思議そうに見てくる結城を一瞥すると、
「アテナ殿」
あっさりとアテナの方を向き、その傍らまでやって来た。
文字通り稲光の瞬きで。
「無事であったようだな」
建御雷神は片膝をつくと、アテナの肩にそっと触れた。
「なぜ、ここに?」
「天照から其方の力になるよう遣わされてきたのだ。其方が随分と不調であったようなので案じておったぞ」
普段のアテナであれば、天照からの厚意に対し、何かしら勘繰っていたかもしれない。
しかし、この時ばかりはそういった思考を巡らすことさえ忘れていた。
その理由は目の前にいる武神だった。
掴みどころがなく、飄々として実力が見えない男神。
アテナに接触こそすれど、戦いを挑むでもなく、無理に関係を迫ることもしない、底知れぬ存在の一角。
もしも直接対決となれば、アテナでも本気以上を出さなければ勝敗が分からないと危惧していた相手が、この土壇場において現れた。
それは知恵と戦いの女神であっても、予想だにしない出来事だった。
「まさか其方をここまで追い込む輩が野にいようとはな―――む?」
建御雷神は今度はアテナの横にいる千春を見た。
「ほう……鬼か」
「! 分かるの!?」
「人間の血が混じっているが、相応の力を持っているな。もし純正の鬼神であったならば、アテナ殿を凌ぐほどであったやもしれぬ。あくまで『今の』アテナ殿に限れば、だが」
「ふん! 言ってくれるじゃない、タケミカヅチ様? おエラい神サマが地上くんだりまで何のご用で?」
千春の質問には答えず、建御雷神はアテナに視線を戻した。
「安堵したぞ、アテナ殿。不調とはいえ其方に傷を負わせるのは、やはりその力に見合う兵でなくてはならぬ。少なくとも――――――そこな醜い獣であるなど、以ての外よ」
立ち上がった建御雷神は、ようやく意識を取り戻したコチニールを横目で睨んだ。
その視線はもはや怒りを通り越し、冷たい殺意さえ感じさせる。
「グが……う……何ダ? 何ガ起こっタ?」
「この期に及んで何も察することがないか。愚鈍な獣だ」
「だ、誰ダ? 貴様ハ」
「愚鈍な獣に聞かせる名など持たん。代わりに一太刀馳走してやろう―――我が手ずから、な」
コチニールを見据えながら、建御雷神は腰の太刀に左手を
添えた。
結城の危機に現れた雷光の武神に、アテナは驚きのあまり目を丸くした。
幸いコチニールは建御雷神が来た時の雷で、横に吹き飛ばされて倒れているが、アテナとしては珍しく無防備な状態を晒していた。
「……」
建御雷神は不思議そうに見てくる結城を一瞥すると、
「アテナ殿」
あっさりとアテナの方を向き、その傍らまでやって来た。
文字通り稲光の瞬きで。
「無事であったようだな」
建御雷神は片膝をつくと、アテナの肩にそっと触れた。
「なぜ、ここに?」
「天照から其方の力になるよう遣わされてきたのだ。其方が随分と不調であったようなので案じておったぞ」
普段のアテナであれば、天照からの厚意に対し、何かしら勘繰っていたかもしれない。
しかし、この時ばかりはそういった思考を巡らすことさえ忘れていた。
その理由は目の前にいる武神だった。
掴みどころがなく、飄々として実力が見えない男神。
アテナに接触こそすれど、戦いを挑むでもなく、無理に関係を迫ることもしない、底知れぬ存在の一角。
もしも直接対決となれば、アテナでも本気以上を出さなければ勝敗が分からないと危惧していた相手が、この土壇場において現れた。
それは知恵と戦いの女神であっても、予想だにしない出来事だった。
「まさか其方をここまで追い込む輩が野にいようとはな―――む?」
建御雷神は今度はアテナの横にいる千春を見た。
「ほう……鬼か」
「! 分かるの!?」
「人間の血が混じっているが、相応の力を持っているな。もし純正の鬼神であったならば、アテナ殿を凌ぐほどであったやもしれぬ。あくまで『今の』アテナ殿に限れば、だが」
「ふん! 言ってくれるじゃない、タケミカヅチ様? おエラい神サマが地上くんだりまで何のご用で?」
千春の質問には答えず、建御雷神はアテナに視線を戻した。
「安堵したぞ、アテナ殿。不調とはいえ其方に傷を負わせるのは、やはりその力に見合う兵でなくてはならぬ。少なくとも――――――そこな醜い獣であるなど、以ての外よ」
立ち上がった建御雷神は、ようやく意識を取り戻したコチニールを横目で睨んだ。
その視線はもはや怒りを通り越し、冷たい殺意さえ感じさせる。
「グが……う……何ダ? 何ガ起こっタ?」
「この期に及んで何も察することがないか。愚鈍な獣だ」
「だ、誰ダ? 貴様ハ」
「愚鈍な獣に聞かせる名など持たん。代わりに一太刀馳走してやろう―――我が手ずから、な」
コチニールを見据えながら、建御雷神は腰の太刀に左手を
添えた。
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