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第10話 新しい侍女と発熱
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久しぶりにダンスレッスンに参加できた数日後、侍女長から新しい侍女が紹介された。
シャルロットは多忙につきフリード殿下に謁見することは叶わなかったが、フリードの側近に手紙を渡すことはできた。
手紙には侍女の不手際については自分に非があると詳細を綴ったが、外された侍女は処分など受けていないだろうか。
シャルロットは外された侍女が解雇されていないか心配になったが、それは無いということで一先ず安心する。
ビアンカと名乗った新しい侍女は、随分と若かった。
自分といくつも違わないように見える。
この国では一般的に侍女は三十代や四十代以上の女性が多く、祖母の年齢と変わらないような侍女がしゃきしゃきと働いていることもままある。
勝手ながらビアンカが優秀であることが窺えた。
「これからよろしくね」
「はいっ、よろしくお願いします!」
緊張気味のビアンカが頭を下げる。
愛嬌があって可愛いらしい女性だ。
ーーー
ビアンカが配属されてすぐにシャルロットが発熱で倒れてしまった。
ビアンカはテキパキと医者の手配や家庭教師やダンス講師への連絡、そして食べられそうな物をシャルロットに聞くと料理室へお願いしに言ってくれた。
「助かるわ……」
「きっと疲れが溜まっていたのですね」
心配して労るようなビアンカの言葉にシャルロットは心が温かくなる。
医者の診断が終わりベッドに寝転ぶが、ここに来てから暇な時間というのは初めてだった。
手持ち無沙汰でつまらない。
やっと手首の怪我が治りダンスレッスンに復帰できたと言うのに。
ベッドに横たわっていても暇で仕方がない。
しかし本を読む気力もなく、うとうとと時間だけが過ぎていく。
ノックと共にビアンカが入ってくるとシャルロットに声を掛けた。
「アラン様がお話しがあるようで……」
「何かしら?通していいわよ……?」
「ですが、寝衣ですので…」
確かにベッドで横になっているのに男性を招くのは良くないだろう。
「では天蓋越しになら……ギリギリセーフかしら」
ビアンカもなんとか納得したようで、天蓋を下ろしてくれると、アランが入って来た。
ビアンカも部屋の隅に待機している。
「お体が辛い時に申し訳ありません。急ぎだったため」
シャルロットはベッドのそばに跪くアランに椅子を勧める。
アランは素直に座ってくれた。
「いいのよ、とっても暇だったの……」
発熱のせいでどうしようもなく気怠い。
「簡潔にお話しますと、今日の夜より二十日程巡業に参りますので、代わりの者が護衛につきます」
「巡業……?」
「剣術大会の優勝者は、主要都市に子供たちへの指導という名目で出向き、騎士の普及活動に行かねばなりません」
「あら、重要な任務じゃない」
「通例では大会が終わってから数ヶ月後に出立するのですが、今回は急遽日程が決まってしまい。弱っているあなたを残して、行きたくはなかったのですが……信頼出来る者を置いていきますので」
「わかったわ、……気をつけて行って来てね」
「はい。……お加減はいかがですか」
「薬も飲んでいるし……大丈夫よ?……私の風邪が伝染ると大変だからはやく戻って」
「あなたはいつもそうですね。何かして欲しいことはありませんか」
少し沈黙が続くと弱っているせいか、シャルロットからポロリと本音が溢れた。
「……社交パーティーに行きたかったわ……そしてダンスを踊りたかったの」
「週末の社交パーティーは難しいですが、次回があれば参加しましょう」
「……いっしょに行ってくれるの?」
週末の社交パーティーだって約束をしている訳じゃなかった。
「ええ、あなたが望むのなら」
「……嬉しい」
「他には?」
「……少しだけ手を握ってくれる?」
「わかりました」
アランは天蓋の布の境目から手を差し込むとシャルロットの手を握る。
「安心するわ……」
シャルロットが目を瞑る。
アランは時間の許す限り天蓋越しにシャルロットを見つめ続けた。
二人は意識していなかったが、最初から最後まで部屋の隅にはビアンカが待機している。
二人が手を繋いだ時に思わず息を呑んだが、なんとか両手で口を抑えた。
ビアンカは二人のただならぬ雰囲気に混乱しながらも、アランが退出するまでドキドキする胸を抑えて存在感を消すことに集中した。
シャルロットは多忙につきフリード殿下に謁見することは叶わなかったが、フリードの側近に手紙を渡すことはできた。
手紙には侍女の不手際については自分に非があると詳細を綴ったが、外された侍女は処分など受けていないだろうか。
シャルロットは外された侍女が解雇されていないか心配になったが、それは無いということで一先ず安心する。
ビアンカと名乗った新しい侍女は、随分と若かった。
自分といくつも違わないように見える。
この国では一般的に侍女は三十代や四十代以上の女性が多く、祖母の年齢と変わらないような侍女がしゃきしゃきと働いていることもままある。
勝手ながらビアンカが優秀であることが窺えた。
「これからよろしくね」
「はいっ、よろしくお願いします!」
緊張気味のビアンカが頭を下げる。
愛嬌があって可愛いらしい女性だ。
ーーー
ビアンカが配属されてすぐにシャルロットが発熱で倒れてしまった。
ビアンカはテキパキと医者の手配や家庭教師やダンス講師への連絡、そして食べられそうな物をシャルロットに聞くと料理室へお願いしに言ってくれた。
「助かるわ……」
「きっと疲れが溜まっていたのですね」
心配して労るようなビアンカの言葉にシャルロットは心が温かくなる。
医者の診断が終わりベッドに寝転ぶが、ここに来てから暇な時間というのは初めてだった。
手持ち無沙汰でつまらない。
やっと手首の怪我が治りダンスレッスンに復帰できたと言うのに。
ベッドに横たわっていても暇で仕方がない。
しかし本を読む気力もなく、うとうとと時間だけが過ぎていく。
ノックと共にビアンカが入ってくるとシャルロットに声を掛けた。
「アラン様がお話しがあるようで……」
「何かしら?通していいわよ……?」
「ですが、寝衣ですので…」
確かにベッドで横になっているのに男性を招くのは良くないだろう。
「では天蓋越しになら……ギリギリセーフかしら」
ビアンカもなんとか納得したようで、天蓋を下ろしてくれると、アランが入って来た。
ビアンカも部屋の隅に待機している。
「お体が辛い時に申し訳ありません。急ぎだったため」
シャルロットはベッドのそばに跪くアランに椅子を勧める。
アランは素直に座ってくれた。
「いいのよ、とっても暇だったの……」
発熱のせいでどうしようもなく気怠い。
「簡潔にお話しますと、今日の夜より二十日程巡業に参りますので、代わりの者が護衛につきます」
「巡業……?」
「剣術大会の優勝者は、主要都市に子供たちへの指導という名目で出向き、騎士の普及活動に行かねばなりません」
「あら、重要な任務じゃない」
「通例では大会が終わってから数ヶ月後に出立するのですが、今回は急遽日程が決まってしまい。弱っているあなたを残して、行きたくはなかったのですが……信頼出来る者を置いていきますので」
「わかったわ、……気をつけて行って来てね」
「はい。……お加減はいかがですか」
「薬も飲んでいるし……大丈夫よ?……私の風邪が伝染ると大変だからはやく戻って」
「あなたはいつもそうですね。何かして欲しいことはありませんか」
少し沈黙が続くと弱っているせいか、シャルロットからポロリと本音が溢れた。
「……社交パーティーに行きたかったわ……そしてダンスを踊りたかったの」
「週末の社交パーティーは難しいですが、次回があれば参加しましょう」
「……いっしょに行ってくれるの?」
週末の社交パーティーだって約束をしている訳じゃなかった。
「ええ、あなたが望むのなら」
「……嬉しい」
「他には?」
「……少しだけ手を握ってくれる?」
「わかりました」
アランは天蓋の布の境目から手を差し込むとシャルロットの手を握る。
「安心するわ……」
シャルロットが目を瞑る。
アランは時間の許す限り天蓋越しにシャルロットを見つめ続けた。
二人は意識していなかったが、最初から最後まで部屋の隅にはビアンカが待機している。
二人が手を繋いだ時に思わず息を呑んだが、なんとか両手で口を抑えた。
ビアンカは二人のただならぬ雰囲気に混乱しながらも、アランが退出するまでドキドキする胸を抑えて存在感を消すことに集中した。
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