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後日談 我慢はほどほどに③
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本格的な寒さが街を駆け抜ける。
シャルロットがメイドが準備した防寒用のコートを見つめながらニコニコと笑みを浮かべる。
今日はアランと日中に出掛けようと約束をしている。
建国祭からひと月半ぶりのデートである。
その為今日という日を心待ちにしていた。
夜にお喋りするのも楽しいが、陽が出ている時間のデートはまた違った楽しみがある。
ゴンゴンと玄関のノッカーが音を立てると、侍女が重い扉を開く。
「こんにちは」
「アラン!ごきげんよう」
アランが挨拶のキスを頬にすると、そのまま腰を抱きながらシャルロットに問う。
「準備は大丈夫ですか?」
「ええ、バッチリよ」
シャルロットはコンパクトな斜め掛けのポシェットを持ち上げる。
アランが侍女からシャルロットのコートを受け取ると背後に回り、シャルロットの腕を袖に通して肩まで引き上げる。
正面に立つと、しっかりと首元までボタンを閉じた。
「ありがとう」
上目遣いでアランにお礼を言うシャルロットが、上機嫌に微笑む。
侍女に声をかけてエントラスを出る。
今日は侍女を連れずに二人きりでお出かけだ。
馬車に乗ると、相変わらずぴたりと寄り添うように座る。
「今日はどこに行くのかしら?」
「昼食を食べに行きましょう、馴染みのレストランがあるので」
「まあ素敵!城下町のレストランかしら?」
「いえ、王城を挟んで城下町とは反対側に小さな丘があるのはご存知ですか?」
「知らないわ?」
「味には疎い俺でも美味しいと思うので、前からぜひ連れて行きたいなと」
馴染みのレストラン?
いつもは誰と行くのかしら?
不思議に思いながらも楽しみのほうが勝る。
馬車がゆっくりと走る。
見つめ合うとお互いにすぐにキスがしたくなる。
アランが顔を寄せると、寸前でピタリと止まる。
「口紅が落ちてしまいますね」
眉を上げて残念そうに顔が離れて行くと、シャルロットがアランの顔を両手で挟み引き止める。
「……お化粧直しのための口紅、持ってきたわ?」
キスをして、と同義の言葉にアランは嬉しそうにシャルロットに覆い被さった。
「んっ…」
「ドレスは新しい物ですか?今日もとびきり可愛いですね」
「んっ、あなたもとびきり格好いいわ……」
シャルロットは今日のためにドレスを新調したが、まさかアランが気づいてくれるとは思わなかった。
アランの瞳の色と似た新緑のドレスは、防寒に優れている生地で作られ、足さばきも良く、シャルロットはとても気に入っていた。
アランは綺麗なタックが入った黒のスラックスに白いシャツを合わせ、その上に濃い紺色をしたシングルのチェスターコートを着ていた。
上衿がベルベットで作られており、とてもお洒落である。
シンプルだが上質で上品な装いが、背丈が高く体の大きいアランにとても似合っていた。
手鏡を持ちながら口紅を塗り直すシャルロットが、こっちを見ないでと怒ったり、そんなシャルロットも可愛いくてまた口付けたくなるアラン。
じゃれあっていると小高い丘の上にあるレストランに着いた。
「いらっしゃいませ」
ドアマンが扉を開けると、慣れた様子でアランが挨拶をする。
二人のコートを預かってもらうと、シャルロットはエスコートされながら足を進める。
「個室もありますが、個室よりもオープンフロアのほうが景色が良いので」
案内された窓際のテーブルにつくと眼下に住宅街とその向こうに広大な森林地帯が見える。
城下町とは反対側の街並みを一望できた。
「わあ……!素晴らしい景色ね」
「平坦な土地が多いこの国では、中々珍しい立地ですよね」
アランが手を挙げると素早く年配のウェイターがやってきた。
「この度はご来店誠に有難うございます。アラン様、ご無沙汰しております」
「お久しぶりです、お元気にしておりましたか」
「お陰様で元気に過ごしております。本日は可愛らしいお嬢様をお連れいただき、大変光栄でございます」
「ああ、紹介します。恋人のシャルロット嬢です」
「シャルロットと申します」
シャルロットが会釈する。
「ようこそおいでくださりました。苦手な食べ物はございますか?」
ウェイターがシャルロットにいくつか質問をしながら今日のおすすめを説明する。
アランよりもシャルロットにフォーカスして接客する馴染みのウェイターに、アランは後で多めにチップを渡さねばと考える。
アランは特に食にこだわりはないし、それをウェイターも知っている。
なによりこの店では何を食べても美味い。
アランが初めて連れてきた恋人が極めて特別な存在だと理解したウェイターは、シャルロットを喜ばせることが重要だと直ちに判断したのだろう。
ウェイターが席を離れると、シャルロットが目を輝かせてアランを見つめる。
「最後のデザートはいくつも運んでくださるとおっしゃっていたわ!」
「甘いものも評判がいいようですよ」
オードブルが運ばれてくると、シャルロットが美しい所作で口元に運ぶ。
改めてスラットレイ伯爵家のご令嬢なのだとアランは実感する。
最近はいやらしく乱れる姿ばかり見ていたため、なんだか新鮮である。
「そういえば、馴染みの店と言っていたけれど、ご家族と来ていたの?」
シャルロットは気になっていたことを聞いてみた。
シャルロットがメイドが準備した防寒用のコートを見つめながらニコニコと笑みを浮かべる。
今日はアランと日中に出掛けようと約束をしている。
建国祭からひと月半ぶりのデートである。
その為今日という日を心待ちにしていた。
夜にお喋りするのも楽しいが、陽が出ている時間のデートはまた違った楽しみがある。
ゴンゴンと玄関のノッカーが音を立てると、侍女が重い扉を開く。
「こんにちは」
「アラン!ごきげんよう」
アランが挨拶のキスを頬にすると、そのまま腰を抱きながらシャルロットに問う。
「準備は大丈夫ですか?」
「ええ、バッチリよ」
シャルロットはコンパクトな斜め掛けのポシェットを持ち上げる。
アランが侍女からシャルロットのコートを受け取ると背後に回り、シャルロットの腕を袖に通して肩まで引き上げる。
正面に立つと、しっかりと首元までボタンを閉じた。
「ありがとう」
上目遣いでアランにお礼を言うシャルロットが、上機嫌に微笑む。
侍女に声をかけてエントラスを出る。
今日は侍女を連れずに二人きりでお出かけだ。
馬車に乗ると、相変わらずぴたりと寄り添うように座る。
「今日はどこに行くのかしら?」
「昼食を食べに行きましょう、馴染みのレストランがあるので」
「まあ素敵!城下町のレストランかしら?」
「いえ、王城を挟んで城下町とは反対側に小さな丘があるのはご存知ですか?」
「知らないわ?」
「味には疎い俺でも美味しいと思うので、前からぜひ連れて行きたいなと」
馴染みのレストラン?
いつもは誰と行くのかしら?
不思議に思いながらも楽しみのほうが勝る。
馬車がゆっくりと走る。
見つめ合うとお互いにすぐにキスがしたくなる。
アランが顔を寄せると、寸前でピタリと止まる。
「口紅が落ちてしまいますね」
眉を上げて残念そうに顔が離れて行くと、シャルロットがアランの顔を両手で挟み引き止める。
「……お化粧直しのための口紅、持ってきたわ?」
キスをして、と同義の言葉にアランは嬉しそうにシャルロットに覆い被さった。
「んっ…」
「ドレスは新しい物ですか?今日もとびきり可愛いですね」
「んっ、あなたもとびきり格好いいわ……」
シャルロットは今日のためにドレスを新調したが、まさかアランが気づいてくれるとは思わなかった。
アランの瞳の色と似た新緑のドレスは、防寒に優れている生地で作られ、足さばきも良く、シャルロットはとても気に入っていた。
アランは綺麗なタックが入った黒のスラックスに白いシャツを合わせ、その上に濃い紺色をしたシングルのチェスターコートを着ていた。
上衿がベルベットで作られており、とてもお洒落である。
シンプルだが上質で上品な装いが、背丈が高く体の大きいアランにとても似合っていた。
手鏡を持ちながら口紅を塗り直すシャルロットが、こっちを見ないでと怒ったり、そんなシャルロットも可愛いくてまた口付けたくなるアラン。
じゃれあっていると小高い丘の上にあるレストランに着いた。
「いらっしゃいませ」
ドアマンが扉を開けると、慣れた様子でアランが挨拶をする。
二人のコートを預かってもらうと、シャルロットはエスコートされながら足を進める。
「個室もありますが、個室よりもオープンフロアのほうが景色が良いので」
案内された窓際のテーブルにつくと眼下に住宅街とその向こうに広大な森林地帯が見える。
城下町とは反対側の街並みを一望できた。
「わあ……!素晴らしい景色ね」
「平坦な土地が多いこの国では、中々珍しい立地ですよね」
アランが手を挙げると素早く年配のウェイターがやってきた。
「この度はご来店誠に有難うございます。アラン様、ご無沙汰しております」
「お久しぶりです、お元気にしておりましたか」
「お陰様で元気に過ごしております。本日は可愛らしいお嬢様をお連れいただき、大変光栄でございます」
「ああ、紹介します。恋人のシャルロット嬢です」
「シャルロットと申します」
シャルロットが会釈する。
「ようこそおいでくださりました。苦手な食べ物はございますか?」
ウェイターがシャルロットにいくつか質問をしながら今日のおすすめを説明する。
アランよりもシャルロットにフォーカスして接客する馴染みのウェイターに、アランは後で多めにチップを渡さねばと考える。
アランは特に食にこだわりはないし、それをウェイターも知っている。
なによりこの店では何を食べても美味い。
アランが初めて連れてきた恋人が極めて特別な存在だと理解したウェイターは、シャルロットを喜ばせることが重要だと直ちに判断したのだろう。
ウェイターが席を離れると、シャルロットが目を輝かせてアランを見つめる。
「最後のデザートはいくつも運んでくださるとおっしゃっていたわ!」
「甘いものも評判がいいようですよ」
オードブルが運ばれてくると、シャルロットが美しい所作で口元に運ぶ。
改めてスラットレイ伯爵家のご令嬢なのだとアランは実感する。
最近はいやらしく乱れる姿ばかり見ていたため、なんだか新鮮である。
「そういえば、馴染みの店と言っていたけれど、ご家族と来ていたの?」
シャルロットは気になっていたことを聞いてみた。
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