148 / 318
青の村にて 助け合いの気持ちと抜けがけ
しおりを挟む
あれから一日が経って眠っていた兄さんと姉さんが目を覚ました。正直なところ、僕は兄さんと姉さんの無意識にへばりついていたあいつを排除するために大量の魔力を使ったから、もしかしたら二人の身体に何か影響が出ているかもしれないって気が気じゃなかった。
「「…………」」
「兄さん、姉さん、身体の調子はどう? どこか違和感ある?」
「「ヤート!!」」
兄さんと姉さんが突然大声で僕の名前を叫んでからガバッと起き上がり頭を下げてくる。僕も急に動く事があるけど、近くにいる人が何の脈絡もなくわけの分からない動きをしたらこんな気持ちになるのか。あとでラカムタさん達に謝っておこうって思うけど、今は兄さんと姉さんだね。
「急に二人ともどうしたの?」
「迷惑掛けちまったから……」
「私もそうね……」
兄さんと姉さんが弱々しく言ってきた。……はあ。僕はため息ついてから兄さんと姉さんの頭に手刀を落とす。うん、ベシッて音がしたから、そこそこ良い打撃になったかな。兄さんと姉さんは頭を押さえて僕に困惑した顔を向けてくる。……これははっきり言った方が良さそうだね。
「兄さんと姉さんは前に、弟を助けるのは兄と姉の当たり前の役目だって言ってくれたよね?」
「お、おう……」
「……そうね」
「だったら弟が兄と姉を助けるのも当たり前の事でしょ? 僕は特に迷惑とか思ってないから気にしないで」
「「…………」」
兄さんと姉さんが嬉しいような気恥ずかしそうな照れてるような複雑な顔になった。なんか話が進まないから確認作業に入る。
「さっきの質問に戻るけど、身体に違和感とかある?」
「……ちょっと待て」
「今確認するわ」
二人が身体の各部を曲げたり伸ばしたりする。……うーん、あとで僕の同調でも確認するけど、見てる分には異常は無さそうだね。
「俺は問題ないな」
「私も自分で確認できる範囲は健康体だと思うわ」
「一応、同調で確認させてもらうよ。そのまま力抜いて立ってて」
兄さんと姉さんの肩に触れて同調する。……うん、二人とも問題ない。これなら食事もすぐにできそうだ。
「兄さんと姉さんに話を聞きたいところだけど、やっとみんなの緊張が解けたから一休みがてら食事にしよう」
「そうですね。すぐに用意させましょう。イリュキン、ハインネルフにこちらの問題が解決した事と、報告会を兼ねた食事会の準備をするよう伝えてください」
「わかりました。準備ができたら私が呼びに来るから、それまでヤート君達は休んでいてくれ」
イリュキンがさわやかに笑って部屋から出て行くのを見送った後、兄さんが僕の肩を抱いてきたり姉さんが僕の背中越しに抱きついてきたりした。こういう触れ合いも、みんなが健康だからできる事だなって改めて思う。
少ししてイリュキンが戻ってきた。どうやらちょうど食事時と重なってたみたいで、僕達の分の食事も用意されているらしい。兄さんと姉さんのお腹からググ~っていう音も聞こえてきたから、僕達はサッと移動して広場で食事を始める。食事をしながら僕が兄さんと姉さんの異常を治す過程を話したり、他のところの報告を聞いていると、二人が異常の原因について何かを思い出したみたい。
「そういや青の村の広場から初めて大霊湖を見た時に、何かチカチカ光るものを見た気がするな。マイネはどうだ?」
「……ああ、言われて思い出したわ。記憶はぼやけてるけど、湖底の方で光ってたはずよ」
「そうだそうだ。あの光はなんだったんだろうな?」
兄さんと姉さんの言葉を聞いてラカムタさんとリンリーが怪訝な顔をした。
「俺はそんなもの見てないぞ」
「私もです」
「……青の方で二人の言っているものを見た奴はいるか?」
ラカムタさんの問いかけに、青のみんなはお互いに顔を見合ったり聞いたりして心当たりを探ってるようだけど、この様子だといないみたいだな。……それにしてもチカチカする光か。
「用心しておこう……」
「ヤート、何か言ったか?」
僕のつぶやきにラカムタさんが反応してきたけど、今のところ僕の予想でしかないから伝えない方が混乱させない気がする。それにあとで僕が異常の原因を倒せば済む話だからごまかそう。
「やっと少しは手がかりが出てきたなって」
「そうだな。……ところでヤート、一つ聞いておきたい事があるんだが」
「何? ラカムタさん」
「お前、まさかとは思うが、異常の原因を自分一人で見つけて倒そうとか思ってないよな?」
僕が考えていた事をラカムタさんに当てられた。基本無表情な僕の考えが何でわかったんだろ? ……って、しまった。直球で当てられて思わず黙ったら肯定してるのと変わらない。何とか話を変えようとしたら、ラカムタさんにガシッと肩をつかまれる。
「ヤート、抜けがけは無しだ。俺も連れて行け。今まであった異常を引き起こした奴には、かなりイラついてるからぶっ飛ばしたい。わかったな?」
僕はラカムタさんのギラギラしてる目を見て、これはごまかせないって判断した。
「……わかった。もう少し兄さんと姉さんの調子を見てから、青の村を抜け出そう」
「了解だ。周りにバレないようにな」
「もちろん」
僕とラカムタさんは周りから不自然にならないように食事に戻る。当初の予定だと僕一人で行くのが、ラカムタさんとになった。まあ、経験豊富なラカムタさんなら、どんな相手でも大丈夫か。
「ラカムタ殿、それこそ抜けがけというものですな」
僕達の会話は、話し合いと食事に集中しているみんなのざわめきに紛れて聞かれてないはずだったけど甘かったな。僕とラカムタさんの後ろにはタキタさんが立っていた。
「わしらも行くので」
「……わしら?」
「あれを」
タキタさんが指差す方を見たら、ハインネルフさんとイーリリスさんが僕達の方を見ていた。……うん、これも誤魔化すのも断るのも無理だね。実力者がそろったって前向きに考えよう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
「「…………」」
「兄さん、姉さん、身体の調子はどう? どこか違和感ある?」
「「ヤート!!」」
兄さんと姉さんが突然大声で僕の名前を叫んでからガバッと起き上がり頭を下げてくる。僕も急に動く事があるけど、近くにいる人が何の脈絡もなくわけの分からない動きをしたらこんな気持ちになるのか。あとでラカムタさん達に謝っておこうって思うけど、今は兄さんと姉さんだね。
「急に二人ともどうしたの?」
「迷惑掛けちまったから……」
「私もそうね……」
兄さんと姉さんが弱々しく言ってきた。……はあ。僕はため息ついてから兄さんと姉さんの頭に手刀を落とす。うん、ベシッて音がしたから、そこそこ良い打撃になったかな。兄さんと姉さんは頭を押さえて僕に困惑した顔を向けてくる。……これははっきり言った方が良さそうだね。
「兄さんと姉さんは前に、弟を助けるのは兄と姉の当たり前の役目だって言ってくれたよね?」
「お、おう……」
「……そうね」
「だったら弟が兄と姉を助けるのも当たり前の事でしょ? 僕は特に迷惑とか思ってないから気にしないで」
「「…………」」
兄さんと姉さんが嬉しいような気恥ずかしそうな照れてるような複雑な顔になった。なんか話が進まないから確認作業に入る。
「さっきの質問に戻るけど、身体に違和感とかある?」
「……ちょっと待て」
「今確認するわ」
二人が身体の各部を曲げたり伸ばしたりする。……うーん、あとで僕の同調でも確認するけど、見てる分には異常は無さそうだね。
「俺は問題ないな」
「私も自分で確認できる範囲は健康体だと思うわ」
「一応、同調で確認させてもらうよ。そのまま力抜いて立ってて」
兄さんと姉さんの肩に触れて同調する。……うん、二人とも問題ない。これなら食事もすぐにできそうだ。
「兄さんと姉さんに話を聞きたいところだけど、やっとみんなの緊張が解けたから一休みがてら食事にしよう」
「そうですね。すぐに用意させましょう。イリュキン、ハインネルフにこちらの問題が解決した事と、報告会を兼ねた食事会の準備をするよう伝えてください」
「わかりました。準備ができたら私が呼びに来るから、それまでヤート君達は休んでいてくれ」
イリュキンがさわやかに笑って部屋から出て行くのを見送った後、兄さんが僕の肩を抱いてきたり姉さんが僕の背中越しに抱きついてきたりした。こういう触れ合いも、みんなが健康だからできる事だなって改めて思う。
少ししてイリュキンが戻ってきた。どうやらちょうど食事時と重なってたみたいで、僕達の分の食事も用意されているらしい。兄さんと姉さんのお腹からググ~っていう音も聞こえてきたから、僕達はサッと移動して広場で食事を始める。食事をしながら僕が兄さんと姉さんの異常を治す過程を話したり、他のところの報告を聞いていると、二人が異常の原因について何かを思い出したみたい。
「そういや青の村の広場から初めて大霊湖を見た時に、何かチカチカ光るものを見た気がするな。マイネはどうだ?」
「……ああ、言われて思い出したわ。記憶はぼやけてるけど、湖底の方で光ってたはずよ」
「そうだそうだ。あの光はなんだったんだろうな?」
兄さんと姉さんの言葉を聞いてラカムタさんとリンリーが怪訝な顔をした。
「俺はそんなもの見てないぞ」
「私もです」
「……青の方で二人の言っているものを見た奴はいるか?」
ラカムタさんの問いかけに、青のみんなはお互いに顔を見合ったり聞いたりして心当たりを探ってるようだけど、この様子だといないみたいだな。……それにしてもチカチカする光か。
「用心しておこう……」
「ヤート、何か言ったか?」
僕のつぶやきにラカムタさんが反応してきたけど、今のところ僕の予想でしかないから伝えない方が混乱させない気がする。それにあとで僕が異常の原因を倒せば済む話だからごまかそう。
「やっと少しは手がかりが出てきたなって」
「そうだな。……ところでヤート、一つ聞いておきたい事があるんだが」
「何? ラカムタさん」
「お前、まさかとは思うが、異常の原因を自分一人で見つけて倒そうとか思ってないよな?」
僕が考えていた事をラカムタさんに当てられた。基本無表情な僕の考えが何でわかったんだろ? ……って、しまった。直球で当てられて思わず黙ったら肯定してるのと変わらない。何とか話を変えようとしたら、ラカムタさんにガシッと肩をつかまれる。
「ヤート、抜けがけは無しだ。俺も連れて行け。今まであった異常を引き起こした奴には、かなりイラついてるからぶっ飛ばしたい。わかったな?」
僕はラカムタさんのギラギラしてる目を見て、これはごまかせないって判断した。
「……わかった。もう少し兄さんと姉さんの調子を見てから、青の村を抜け出そう」
「了解だ。周りにバレないようにな」
「もちろん」
僕とラカムタさんは周りから不自然にならないように食事に戻る。当初の予定だと僕一人で行くのが、ラカムタさんとになった。まあ、経験豊富なラカムタさんなら、どんな相手でも大丈夫か。
「ラカムタ殿、それこそ抜けがけというものですな」
僕達の会話は、話し合いと食事に集中しているみんなのざわめきに紛れて聞かれてないはずだったけど甘かったな。僕とラカムタさんの後ろにはタキタさんが立っていた。
「わしらも行くので」
「……わしら?」
「あれを」
タキタさんが指差す方を見たら、ハインネルフさんとイーリリスさんが僕達の方を見ていた。……うん、これも誤魔化すのも断るのも無理だね。実力者がそろったって前向きに考えよう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
26
あなたにおすすめの小説
《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!
犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。
そして夢をみた。
日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。
その顔を見て目が覚めた。
なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。
数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。
幼少期、最初はツラい状況が続きます。
作者都合のゆるふわご都合設定です。
日曜日以外、1日1話更新目指してます。
エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。
お楽しみ頂けたら幸いです。
***************
2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます!
100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!!
2024年9月9日 お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます!
200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!!
2025年1月6日 お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております!
ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします!
2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております!
こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!!
2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?!
なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!!
こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。
どうしよう、欲が出て来た?
…ショートショートとか書いてみようかな?
2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?!
欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい…
2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?!
どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
転生したので好きに生きよう!
ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。
不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。
奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。
※見切り発車感が凄い。
※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト)
前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した
生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ
魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する
ということで努力していくことにしました
【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。
大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。
そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。
しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。
戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。
「面白いじゃん?」
アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
天才魔導医の弟子~転生ナースの戦場カルテ~
けろ
ファンタジー
【完結済み】
仕事に生きたベテランナース、異世界で10歳の少女に!?
過労で倒れた先に待っていたのは、魔法と剣、そして規格外の医療が交差する世界だった――。
救急救命の現場で十数年。ベテラン看護師の天木弓束(あまき ゆづか)は、人手不足と激務に心身をすり減らす毎日を送っていた。仕事に全てを捧げるあまり、プライベートは二の次。周囲からの期待もプレッシャーに感じながら、それでも人の命を救うことだけを使命としていた。
しかし、ある日、謎の少女を救えなかったショックで意識を失い、目覚めた場所は……中世ヨーロッパのような異世界の路地裏!? しかも、姿は10歳の少女に若返っていた。
記憶も曖昧なまま、絶望の淵に立たされた弓束。しかし、彼女が唯一失っていなかったもの――それは、現代日本で培った高度な医療知識と技術だった。
偶然出会った獣人冒険者の重度の骨折を、その知識で的確に応急処置したことで、弓束の運命は大きく動き出す。
彼女の異質な才能を見抜いたのは、誰もがその実力を認めながらも距離を置く、孤高の天才魔導医ギルベルトだった。
「お前、弟子になれ。俺の研究の、良い材料になりそうだ」
強引な天才に拾われた弓束は、魔法が存在するこの世界の「医療」が、自分の知るものとは全く違うことに驚愕する。
「菌?感染症?何の話だ?」
滅菌の概念すらない遅れた世界で、弓束の現代知識はまさにチート級!
しかし、そんな彼女の常識をさらに覆すのが、師ギルベルトの存在だった。彼が操る、生命の根幹『魔力回路』に干渉する神業のような治療魔法。その理論は、弓束が知る医学の歴史を遥かに超越していた。
規格外の弟子と、人外の師匠。
二人の出会いは、やがて異世界の医療を根底から覆し、多くの命を救う奇跡の始まりとなる。
これは、神のいない手術室で命と向き合い続けた一人の看護師が、新たな世界で自らの知識と魔法を武器に、再び「救う」ことの意味を見つけていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる