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黒の村にて 匂い袋と安全
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「ヨナさん」
「あ、ヤート殿、お疲れ様です」
ヨナさんの二度目の気絶をしてから二日が過ぎた。今日はヨナさんがディグリに慣れる方法を渡すために仕事終わりのヨナさんのもとへとやってきた。
「ヨナさん、これを受け取って」
僕が手に持っていた指でつまめるくらいの小袋をヨナさんに渡すと、ヨナさんは小袋を観察し始める。
「これは……匂い袋ですか?」
「うん」
「…………とても良い匂いですね」
「それなら良かった」
フー、匂いに関して敏感な人もいるし、ほとんどの人が好きな匂いでもダメな人もいる。同調で確認したヨナさんの体質とか好みに合わせて作ったけど、気に入ってくれて良かった。これで少しでも効果が出れば良いな。
「あの、この袋の中身は何ですか? 私も薬師として様々な匂いを嗅いできましたが、この匂いは初めてです」
「初めてなのはしょうがないよ。大神林でも特別な材料で作ったものだからね」
「え⁉︎ そんな高価なものは受け取れませんよ‼︎」
「特別な材料と言っても、タダみたいものだから気にしないで」
「気になります‼︎ いったい中身は何なんですか⁉︎」
ちょっと涙目になっているヨナさんに、僕は指を折りながら材料を教えた。
「材料は三種類で、ディグリが魔力を込めて自分の身体に咲かせた魔花に、鬼熊と破壊猪の血を数滴ずつだよ」
「「「「「「は⁉︎」」」」」」
ヨナさんと周りで僕達の会話を聞いていたみんなが唖然とした表情になったけど、そのまま説明を続ける。
「作り方はかなり簡単で、まずディグリの魔花を細かくすり潰して、そこに鬼熊と破壊猪の血を数滴ずつ加えてよく混ぜる。あとは混ぜたものを一刻(前世でいう二時間)くらい寝かせて僕の魔法で仕上げたんだ」
「う……」
「う?」
「受け取れません‼︎ 怖すぎます‼︎」
ものすごく意外な事を言われた。この匂い袋が怖い?
「どうして怖いの?」
「どうしても何もお三方の一部が使われていて、しかもヤート殿の魔法が使われているからです‼︎ これは王様に献上するべきもので、ただの薬師でしかない私には分不相応なものです‼︎」
「僕がヨナさんに作ったものだから気にしなくて良いよ。もし、誰かに献上しろとか言われたら、すぐ作れるから」
「気にします‼︎」
僕とヨナさんの間で意見が平行線を辿っていると、ラカムタさんがヨナさんに落ち着くよう声をかけた後、僕を見た。
「ヤート、きちんと理由を説明しろ。突然、高価なものを渡されても困惑するだけだ」
「ラカムタさん、さっき説明したよね? この匂い袋には元手がかかってないからタダだよ?」
「……お前、忘れてるだろ?」
「何を?」
「大神林産というだけで森の外だと価値は跳ね上がるんだぞ」
「あ」
普段、外の商人との取引に関わらないから忘れてた。
「という事は、ヨナさんが言ってる僕が作った匂い袋が献上品だっていうのは……」
「至極まっとうな意見だな」
「そうか……、でも、その匂い袋はヨナさんに必要なものだから受け取ってもらいたいんだ」
「だから、その理由を説明しろ」
「理由は二つ。一つ目はヨナさんが三体に慣れるためで、二つ目はヨナさんの安全のためだね」
「……詳しく頼む」
「ヨナさんはディグリと話したいけど精神力とか強さを考えたら対面できるほどじゃない。それならどうするかをディグリと話し合った結果、少しずつ段階を踏めませようってなった」
「それで、まずは匂いという事か」
「うん。三体の匂いを常に感じてたら、擬似的に三体といっしょにいる感覚になるでしょ?」
「なるほどな……」
僕の説明を聞いてヨナさんやラカムタさん達は納得してくれた。でも、すぐにラカムタさんは首をかしげ出す。
「……ちょっと待て。ヨナ殿はディグリと話したいんだよな。それならどうして鬼熊と破壊猪の血も使ったんだ?」
「僕とディグリがいるところには絶対に鬼熊と破壊猪もいるからだよ。あとヨナさんはいつまでも村にいるわけじゃないって考えると三体同時に慣れた方が効率が良い」
「そういう事なら一つ目の理由はわかった。次は二つ目の理由を説明してくれ」
「二つ目は単純な理由だよ。ヨナさんが大神林でも特に強者の三体の匂いをまとってれば、他の魔獣からお襲われる心配はほとんど無くなるから」
「……それも納得できるな」
ラカムタさんがうなると、ヨナさんと周りのみんなもうなずいてくれた。
「それじゃあヨナさん、その匂い袋を使ってね」
「はい、わかりました。……あの」
「何? ヨナさん」
「参考までに聞きたいのですが、他にはどんな方法があったのですか?」
僕はヨナさんの疑問に思い出しながら答えた。
「他の方法? えーと、匂い袋と最後まで悩んだのが、三体の毛や蔓を編んだ腕輪だね。でも、匂いの広がる方が有効範囲が広いって事で腕輪は選ばなかった」
「……腕輪だったとしても、匂い袋と同じ反応をしたはずです」
「あと匂い袋の材料に世界樹の枝の欠片も加えようとしたんだけど、それは三体に全力で止められたんだ」
「ひっ……」
僕が言うとヨナさんはおびえだした。
「それは絶対に俺でも止めるぞ」
「でも、ヨナさんの安全を考えたら効果が高い方が良いでしょ?」
「だからといってやり過ぎだ……」
「ラカムタ殿‼︎」
僕とラカムタさんが話してると、ヨナさんがラカムタさんに急接近した。
「ヨ、ヨナ殿?」
「ラカムタ殿‼︎ 私を鍛えてください‼︎ 私が強くなれば解決ですよね⁉︎」
「…………そうとも言えるな」
「お願いします‼︎」
「わかった。だが……厳しくなるぞ」
「やり遂げてみせます‼︎」
「よし、まずはどれくらい動けるのか見せてもらおう」
「はい‼︎」
ラカムタさんとヨナさんが盛り上がり模擬戦を始めたのは良いとして、なんか話の流れが納得できない。……まあ、結果的にヨナさんの安全面を再確認できたと思っておこう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
「あ、ヤート殿、お疲れ様です」
ヨナさんの二度目の気絶をしてから二日が過ぎた。今日はヨナさんがディグリに慣れる方法を渡すために仕事終わりのヨナさんのもとへとやってきた。
「ヨナさん、これを受け取って」
僕が手に持っていた指でつまめるくらいの小袋をヨナさんに渡すと、ヨナさんは小袋を観察し始める。
「これは……匂い袋ですか?」
「うん」
「…………とても良い匂いですね」
「それなら良かった」
フー、匂いに関して敏感な人もいるし、ほとんどの人が好きな匂いでもダメな人もいる。同調で確認したヨナさんの体質とか好みに合わせて作ったけど、気に入ってくれて良かった。これで少しでも効果が出れば良いな。
「あの、この袋の中身は何ですか? 私も薬師として様々な匂いを嗅いできましたが、この匂いは初めてです」
「初めてなのはしょうがないよ。大神林でも特別な材料で作ったものだからね」
「え⁉︎ そんな高価なものは受け取れませんよ‼︎」
「特別な材料と言っても、タダみたいものだから気にしないで」
「気になります‼︎ いったい中身は何なんですか⁉︎」
ちょっと涙目になっているヨナさんに、僕は指を折りながら材料を教えた。
「材料は三種類で、ディグリが魔力を込めて自分の身体に咲かせた魔花に、鬼熊と破壊猪の血を数滴ずつだよ」
「「「「「「は⁉︎」」」」」」
ヨナさんと周りで僕達の会話を聞いていたみんなが唖然とした表情になったけど、そのまま説明を続ける。
「作り方はかなり簡単で、まずディグリの魔花を細かくすり潰して、そこに鬼熊と破壊猪の血を数滴ずつ加えてよく混ぜる。あとは混ぜたものを一刻(前世でいう二時間)くらい寝かせて僕の魔法で仕上げたんだ」
「う……」
「う?」
「受け取れません‼︎ 怖すぎます‼︎」
ものすごく意外な事を言われた。この匂い袋が怖い?
「どうして怖いの?」
「どうしても何もお三方の一部が使われていて、しかもヤート殿の魔法が使われているからです‼︎ これは王様に献上するべきもので、ただの薬師でしかない私には分不相応なものです‼︎」
「僕がヨナさんに作ったものだから気にしなくて良いよ。もし、誰かに献上しろとか言われたら、すぐ作れるから」
「気にします‼︎」
僕とヨナさんの間で意見が平行線を辿っていると、ラカムタさんがヨナさんに落ち着くよう声をかけた後、僕を見た。
「ヤート、きちんと理由を説明しろ。突然、高価なものを渡されても困惑するだけだ」
「ラカムタさん、さっき説明したよね? この匂い袋には元手がかかってないからタダだよ?」
「……お前、忘れてるだろ?」
「何を?」
「大神林産というだけで森の外だと価値は跳ね上がるんだぞ」
「あ」
普段、外の商人との取引に関わらないから忘れてた。
「という事は、ヨナさんが言ってる僕が作った匂い袋が献上品だっていうのは……」
「至極まっとうな意見だな」
「そうか……、でも、その匂い袋はヨナさんに必要なものだから受け取ってもらいたいんだ」
「だから、その理由を説明しろ」
「理由は二つ。一つ目はヨナさんが三体に慣れるためで、二つ目はヨナさんの安全のためだね」
「……詳しく頼む」
「ヨナさんはディグリと話したいけど精神力とか強さを考えたら対面できるほどじゃない。それならどうするかをディグリと話し合った結果、少しずつ段階を踏めませようってなった」
「それで、まずは匂いという事か」
「うん。三体の匂いを常に感じてたら、擬似的に三体といっしょにいる感覚になるでしょ?」
「なるほどな……」
僕の説明を聞いてヨナさんやラカムタさん達は納得してくれた。でも、すぐにラカムタさんは首をかしげ出す。
「……ちょっと待て。ヨナ殿はディグリと話したいんだよな。それならどうして鬼熊と破壊猪の血も使ったんだ?」
「僕とディグリがいるところには絶対に鬼熊と破壊猪もいるからだよ。あとヨナさんはいつまでも村にいるわけじゃないって考えると三体同時に慣れた方が効率が良い」
「そういう事なら一つ目の理由はわかった。次は二つ目の理由を説明してくれ」
「二つ目は単純な理由だよ。ヨナさんが大神林でも特に強者の三体の匂いをまとってれば、他の魔獣からお襲われる心配はほとんど無くなるから」
「……それも納得できるな」
ラカムタさんがうなると、ヨナさんと周りのみんなもうなずいてくれた。
「それじゃあヨナさん、その匂い袋を使ってね」
「はい、わかりました。……あの」
「何? ヨナさん」
「参考までに聞きたいのですが、他にはどんな方法があったのですか?」
僕はヨナさんの疑問に思い出しながら答えた。
「他の方法? えーと、匂い袋と最後まで悩んだのが、三体の毛や蔓を編んだ腕輪だね。でも、匂いの広がる方が有効範囲が広いって事で腕輪は選ばなかった」
「……腕輪だったとしても、匂い袋と同じ反応をしたはずです」
「あと匂い袋の材料に世界樹の枝の欠片も加えようとしたんだけど、それは三体に全力で止められたんだ」
「ひっ……」
僕が言うとヨナさんはおびえだした。
「それは絶対に俺でも止めるぞ」
「でも、ヨナさんの安全を考えたら効果が高い方が良いでしょ?」
「だからといってやり過ぎだ……」
「ラカムタ殿‼︎」
僕とラカムタさんが話してると、ヨナさんがラカムタさんに急接近した。
「ヨ、ヨナ殿?」
「ラカムタ殿‼︎ 私を鍛えてください‼︎ 私が強くなれば解決ですよね⁉︎」
「…………そうとも言えるな」
「お願いします‼︎」
「わかった。だが……厳しくなるぞ」
「やり遂げてみせます‼︎」
「よし、まずはどれくらい動けるのか見せてもらおう」
「はい‼︎」
ラカムタさんとヨナさんが盛り上がり模擬戦を始めたのは良いとして、なんか話の流れが納得できない。……まあ、結果的にヨナさんの安全面を再確認できたと思っておこう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
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