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決戦にて 感謝と復活
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『…………ろ』
『…………きろ』
『起きろ』
「痛……」
僕へ呼びかける声が聞こえて目を覚ますと身体中に痛みを感じた。状況を確認するため周りを見たら、僕はあの芋虫が眠っていた跡地の大きな凹みに落ちているみたいだ。何があったんだっけ? …………そうだ。小さな声の上っていう単語が気になり頭上を見たら光線が発射されそうになっていて、その光線からみんなを守る魔法を発動した。それで光線の進路を歪めてみんなの逃げる時間は稼げたけど、代わりに光線と僕の魔法がぶつかった余波で僕は吹き飛ばされたんだったね。
ああ……、意識がはっきりすると戦闘音が聞こえてきた。界気化した魔力を放って確認したら、みんながあの芋虫…………、うん、芋虫じゃなくなってる? それは良いか。とりあえず、みんな無事であいつと戦ってるのがわかった。探知役なんだから僕も参戦しないとね。僕はそばに落ちていた世界樹の杖をつかみ魔法を発動させようとした。
「緑盛魔法……」
『待て』
僕の周りには誰もいないのに呼び止められる。界気化した魔力でも目で確認しても間違いなく誰もいない。でも、この声に聞き覚えがあるぞ……?
『ヤートよ、ようやく会えたな』
「えっと?」
『ふむ、今までの二度の会話は夢の中だったな。実際に声を交わすのは、これが初めてゆえわからないのも無理はない』
夢……? 二度の会話……? あ、もしかして?
「大神林の奥と大霊湖で魔石を倒した後の夢の中で会話した声?」
『その通りだ。こうして会えた事を嬉しく思うぞ』
「うん。でも、今はみんなが、あいつと戦ってるから時間がないんだ」
『わかっている。思い出話をするために呼び止めたわけではない。我が封じていたものについてだ』
「封じていた?」
『我にも時間はないため重要な事だけを話す。あれと戦う際に役立てよ』
「……待って」
『どうした? 時間がないのだろう?』
「記憶を読ませてほしい」
『何?』
「僕は界気化した魔力を流す事で対象の記憶を読み取れる。実際に話を聞くより質も量も受け取れるからお願い」
『ああ……それは好都合だ。その界気化とやらは触れる必要はあるのか?』
「対象が近ければ近いほど僕はやりやすい」
『良いだろう。フンッ』
僕の答えを聞いた声の主が力むと僕の足もとに一本の根が生えてきた。これに触れて界気化をしろって事だね。僕はみんななら大丈夫だと信じて世界樹の杖を地面に置いてから目を閉じ、両手で根に触れて界気化した魔力を流す。…………これはかなりの質と量の記憶だね。
この声の主の記憶を全部読み取り思った事を口にする。
「本当に、本当に気の遠くなるような時間、この世界の外から来たあいつを一人で封じてくれてたんだね。ありがとう。それと待たせてごめん」
『適材適所というものだ。ヤートが気にする必要はない。それに情けない話だが、ここ数十年の間は封じていたはずのあのものに我は喰われていた』
「だから、根しか残ってなくて時間がないって言ったんだ」
『…………あのものと接敵した時に封じるという選択をとった事に後悔はない。だが、あのものをこの世界から滅せない事は心残りだ……』
「それならあいつを倒すために僕に力を貸してほしい」
『我の記憶を読み取ったなら、あのものにほとんどを喰われた我に何の力も残されていないとわかっているだろう?』
「大神林の世界樹に渡されたものがあるから大丈夫」
僕は根から手を離し、右上腕にある腕輪を外して根に通した。
『これは…………』
「大神林の世界樹から渡された樹液が固まって腕輪になったものだよ。ずっと大神林の世界樹の一部だったものだから莫大な力を秘めてる」
『しかし……我には、この力を受け取る器が……』
「僕がきっかけになった後、シールといっしょに安定させるから任せて。ねえ? シール」
問いかけるとシールが世界樹の杖の上に現れる。
『はい、全力を尽くします』
「身体と力を取り戻して、あいつをいっしょに倒そう」
『何もできずに消え去る事しかできなかったというのに、今ここで新たな選択肢がもたらされるとは……』
「どう?」
『あのものをこれまで封じていたのは我だ。ならば、あのものが滅びる時まで見届けてこそだな。我に身体と力を取り戻させてくれるか?』
「もちろん。シール」
『いつでも大丈夫です』
僕は地面に置いていた世界樹の杖を持ち、杖の先端を固まった樹液の腕輪に触れさせた。そしてシールを見ると準備はできていると意味を込めてうなずいてくる。よし、やろう。
「『力をここに。循環をここに。加速をここに。励起をここに。臨界をここに』」
詠唱を始めると固まっていた樹液の腕輪が黄金色に輝き始め、見た目も腕輪から僕の両掌分くらいの液体となり僕の足元に伸びている根の先に浮かぶ。
「『在りし日の姿をここに』」
浮かんでいる樹液が滴の形になり、さらに黄金の輝きが強くなった。これできっと僕が無事だってみんなに伝わるね。
「『緑盛魔法・超育成・黄金樹液の一滴』」
僕とシールの詠唱が終わると黄金樹液の一滴は根に落ち全て吸収されていった。…………うん、地中にある根が活性化していってるから、あとは誘導するだけで良い。僕は僕の足もとに伸びている根に世界樹の杖を当て、界気化で読み取った膨大な記憶の中で一番枝葉や幹が隆盛だった頃へ戻るように再生を促していった。
メキ……、メキメキ……。
地中から響く軋む音とともに、僕のいる大きな凹みの底が地中からの圧力で盛り上がっていく。これは限界点を超えたら一気に突き破ってきそうだなと思ってたら、ほとんど時間を空けずにその時がきた。
バキン……、バキバキッ‼︎
僕がいる凹みの底の盛り上がっている部分にいくつもの芽が出て、その芽が急速に伸びて若木となり、その若木達は絡み合って太い一本としてさらに高く高く伸びていく。うん、この勢いならすぐに一番隆盛だった頃へ戻れるね。
『まっすぐな、とても良い成長の仕方です』
「そうだね」
嬉しそうなシールと見ていたら、見上げても先端が霞んで見えない高さになるのに数分かからず、伸びた枝葉で空が見えなくなるのもあっという間だった。…………記憶を読み取った時に、ものすごく大きな樹だとはわかってたけど大神林の世界樹に匹敵するかも。
『ああ……、久方ぶりの日の光だ』
日光を葉に受けると、より成長の勢いが加速し今度は太さも増していく。これは大きな凹みを埋め尽くすかもしれないから、凹みから脱出するかって考えていると僕の足もとに生えていた根が僕に優しく巻きつき、僕を凹みの外へと運んでくれた。お、降りた近くにちょうど母さんがいたね。
「ヤ、ヤート……?」
「あ、母さん、心配かけてごめん」
「ヤートなら大丈夫だって思ってたわ。だけど……あれは?」
「あいつを倒すのに味方は多い方が良いから復活してもらったんだ」
「復活……?」
「そう、大神林の奥にいる世界樹に並ぶ、もう一本の世界樹の復活だよ」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
『…………きろ』
『起きろ』
「痛……」
僕へ呼びかける声が聞こえて目を覚ますと身体中に痛みを感じた。状況を確認するため周りを見たら、僕はあの芋虫が眠っていた跡地の大きな凹みに落ちているみたいだ。何があったんだっけ? …………そうだ。小さな声の上っていう単語が気になり頭上を見たら光線が発射されそうになっていて、その光線からみんなを守る魔法を発動した。それで光線の進路を歪めてみんなの逃げる時間は稼げたけど、代わりに光線と僕の魔法がぶつかった余波で僕は吹き飛ばされたんだったね。
ああ……、意識がはっきりすると戦闘音が聞こえてきた。界気化した魔力を放って確認したら、みんながあの芋虫…………、うん、芋虫じゃなくなってる? それは良いか。とりあえず、みんな無事であいつと戦ってるのがわかった。探知役なんだから僕も参戦しないとね。僕はそばに落ちていた世界樹の杖をつかみ魔法を発動させようとした。
「緑盛魔法……」
『待て』
僕の周りには誰もいないのに呼び止められる。界気化した魔力でも目で確認しても間違いなく誰もいない。でも、この声に聞き覚えがあるぞ……?
『ヤートよ、ようやく会えたな』
「えっと?」
『ふむ、今までの二度の会話は夢の中だったな。実際に声を交わすのは、これが初めてゆえわからないのも無理はない』
夢……? 二度の会話……? あ、もしかして?
「大神林の奥と大霊湖で魔石を倒した後の夢の中で会話した声?」
『その通りだ。こうして会えた事を嬉しく思うぞ』
「うん。でも、今はみんなが、あいつと戦ってるから時間がないんだ」
『わかっている。思い出話をするために呼び止めたわけではない。我が封じていたものについてだ』
「封じていた?」
『我にも時間はないため重要な事だけを話す。あれと戦う際に役立てよ』
「……待って」
『どうした? 時間がないのだろう?』
「記憶を読ませてほしい」
『何?』
「僕は界気化した魔力を流す事で対象の記憶を読み取れる。実際に話を聞くより質も量も受け取れるからお願い」
『ああ……それは好都合だ。その界気化とやらは触れる必要はあるのか?』
「対象が近ければ近いほど僕はやりやすい」
『良いだろう。フンッ』
僕の答えを聞いた声の主が力むと僕の足もとに一本の根が生えてきた。これに触れて界気化をしろって事だね。僕はみんななら大丈夫だと信じて世界樹の杖を地面に置いてから目を閉じ、両手で根に触れて界気化した魔力を流す。…………これはかなりの質と量の記憶だね。
この声の主の記憶を全部読み取り思った事を口にする。
「本当に、本当に気の遠くなるような時間、この世界の外から来たあいつを一人で封じてくれてたんだね。ありがとう。それと待たせてごめん」
『適材適所というものだ。ヤートが気にする必要はない。それに情けない話だが、ここ数十年の間は封じていたはずのあのものに我は喰われていた』
「だから、根しか残ってなくて時間がないって言ったんだ」
『…………あのものと接敵した時に封じるという選択をとった事に後悔はない。だが、あのものをこの世界から滅せない事は心残りだ……』
「それならあいつを倒すために僕に力を貸してほしい」
『我の記憶を読み取ったなら、あのものにほとんどを喰われた我に何の力も残されていないとわかっているだろう?』
「大神林の世界樹に渡されたものがあるから大丈夫」
僕は根から手を離し、右上腕にある腕輪を外して根に通した。
『これは…………』
「大神林の世界樹から渡された樹液が固まって腕輪になったものだよ。ずっと大神林の世界樹の一部だったものだから莫大な力を秘めてる」
『しかし……我には、この力を受け取る器が……』
「僕がきっかけになった後、シールといっしょに安定させるから任せて。ねえ? シール」
問いかけるとシールが世界樹の杖の上に現れる。
『はい、全力を尽くします』
「身体と力を取り戻して、あいつをいっしょに倒そう」
『何もできずに消え去る事しかできなかったというのに、今ここで新たな選択肢がもたらされるとは……』
「どう?」
『あのものをこれまで封じていたのは我だ。ならば、あのものが滅びる時まで見届けてこそだな。我に身体と力を取り戻させてくれるか?』
「もちろん。シール」
『いつでも大丈夫です』
僕は地面に置いていた世界樹の杖を持ち、杖の先端を固まった樹液の腕輪に触れさせた。そしてシールを見ると準備はできていると意味を込めてうなずいてくる。よし、やろう。
「『力をここに。循環をここに。加速をここに。励起をここに。臨界をここに』」
詠唱を始めると固まっていた樹液の腕輪が黄金色に輝き始め、見た目も腕輪から僕の両掌分くらいの液体となり僕の足元に伸びている根の先に浮かぶ。
「『在りし日の姿をここに』」
浮かんでいる樹液が滴の形になり、さらに黄金の輝きが強くなった。これできっと僕が無事だってみんなに伝わるね。
「『緑盛魔法・超育成・黄金樹液の一滴』」
僕とシールの詠唱が終わると黄金樹液の一滴は根に落ち全て吸収されていった。…………うん、地中にある根が活性化していってるから、あとは誘導するだけで良い。僕は僕の足もとに伸びている根に世界樹の杖を当て、界気化で読み取った膨大な記憶の中で一番枝葉や幹が隆盛だった頃へ戻るように再生を促していった。
メキ……、メキメキ……。
地中から響く軋む音とともに、僕のいる大きな凹みの底が地中からの圧力で盛り上がっていく。これは限界点を超えたら一気に突き破ってきそうだなと思ってたら、ほとんど時間を空けずにその時がきた。
バキン……、バキバキッ‼︎
僕がいる凹みの底の盛り上がっている部分にいくつもの芽が出て、その芽が急速に伸びて若木となり、その若木達は絡み合って太い一本としてさらに高く高く伸びていく。うん、この勢いならすぐに一番隆盛だった頃へ戻れるね。
『まっすぐな、とても良い成長の仕方です』
「そうだね」
嬉しそうなシールと見ていたら、見上げても先端が霞んで見えない高さになるのに数分かからず、伸びた枝葉で空が見えなくなるのもあっという間だった。…………記憶を読み取った時に、ものすごく大きな樹だとはわかってたけど大神林の世界樹に匹敵するかも。
『ああ……、久方ぶりの日の光だ』
日光を葉に受けると、より成長の勢いが加速し今度は太さも増していく。これは大きな凹みを埋め尽くすかもしれないから、凹みから脱出するかって考えていると僕の足もとに生えていた根が僕に優しく巻きつき、僕を凹みの外へと運んでくれた。お、降りた近くにちょうど母さんがいたね。
「ヤ、ヤート……?」
「あ、母さん、心配かけてごめん」
「ヤートなら大丈夫だって思ってたわ。だけど……あれは?」
「あいつを倒すのに味方は多い方が良いから復活してもらったんだ」
「復活……?」
「そう、大神林の奥にいる世界樹に並ぶ、もう一本の世界樹の復活だよ」
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◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
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