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第五章
第七話
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ラーラはカリバール内の牢獄の中、一日中静かに座っていた。
時折差し出されるパンや水にもあまり手を付けず、看守にはただ「おいておいてください」とだけ答えた。
賢い彼女がずっと自暴自棄になっている訳がなかった。
ただ、「半魔」特有のエネルギー効率の高い肉体を有効に活用しながら、考え事に集中していたのである。
(もういっそのこと、グレア様のことは忘れてしまおうか。それで幸せになれるかもしれない。…いや、それで真に「私」は満足なんでしょうか…?)
彼女は数日に渡って内なる自分自身と問答を繰り返しながら、自らの欲望と理性の深淵へと入っていった。
ラーラは失踪後、気付かれないところからグレアを見ていた。
彼女が必死になって自分を探しているところも、見ず知らずの少年に無邪気な笑顔を見せているところも、思い出の馬車に乗り、その少年と一緒にどこかへ出掛けるところも。
感情の整理が道半ばのラーラだが、一つ確信していたことがあった。
彼女の「恋」は砕け散ったのだ。
修復不可能な程に。思わず冷静になってしまう程に。
自分とグレアとはまるで「ねじれの関係」で、どこまで近付こうがぴったり重なる時というのは本質的に訪れないのだと。
だが、事実を受け止めようとする度に脳裏にちらつくのだ。
あの太陽のような笑顔、朝露のような涙、寝起きの掌に残るぬくもり、尻尾を撫でる感覚、そして自分が昏睡状態になろうが、獣に成り果てようが、全てをーー「ラーラ」という存在自体を肯定し、信頼するあの優しさが。
(そうか、私はあの人に甘えていたんだ)
冬の冷ややかな牢の壁に背中を預けて座りながら彼女は考えた。
(私は…「子供」なんですね)
これには色々な意味があった。
自らの幼さを認めたというだけではない。
同時に、今は亡き愛しの母の「代わり」を求めていることを自覚したのである。
(まだ「子供」なんですね。…いや、これからもずっと「子供」なのかもしれません。このちんちくりんな身体も、もう会えない過去の人の愛に依存し続ける、こんな心も)
そんな中、ふとグレアの何気ない言葉が想起された。
「成長がもっとゆっくりなんです。でも着実に成長している」
「この3年弱で背も伸びたし、間違いなくスタイルも良くなってきましたよ。ただ速度がゆっくりなだけです。」
(成長…。私は少しずつでも前に進んでいるのでしょうか。 速度が遅すぎて、時間の流れに取り残されていないでしょうか。…このまま「貴女」にいつまでも追いつけないのでしょうか)
その時、彼女の目が大きく見開かれる。
「そうだ」
(今まで、私はあの人からもらってばかりなのです)
「一つくらい返さないと、ですね」
決意を胸に「魔王の卵」はゆっくりと立ち上がった。
「死のうが生きようが」
時折差し出されるパンや水にもあまり手を付けず、看守にはただ「おいておいてください」とだけ答えた。
賢い彼女がずっと自暴自棄になっている訳がなかった。
ただ、「半魔」特有のエネルギー効率の高い肉体を有効に活用しながら、考え事に集中していたのである。
(もういっそのこと、グレア様のことは忘れてしまおうか。それで幸せになれるかもしれない。…いや、それで真に「私」は満足なんでしょうか…?)
彼女は数日に渡って内なる自分自身と問答を繰り返しながら、自らの欲望と理性の深淵へと入っていった。
ラーラは失踪後、気付かれないところからグレアを見ていた。
彼女が必死になって自分を探しているところも、見ず知らずの少年に無邪気な笑顔を見せているところも、思い出の馬車に乗り、その少年と一緒にどこかへ出掛けるところも。
感情の整理が道半ばのラーラだが、一つ確信していたことがあった。
彼女の「恋」は砕け散ったのだ。
修復不可能な程に。思わず冷静になってしまう程に。
自分とグレアとはまるで「ねじれの関係」で、どこまで近付こうがぴったり重なる時というのは本質的に訪れないのだと。
だが、事実を受け止めようとする度に脳裏にちらつくのだ。
あの太陽のような笑顔、朝露のような涙、寝起きの掌に残るぬくもり、尻尾を撫でる感覚、そして自分が昏睡状態になろうが、獣に成り果てようが、全てをーー「ラーラ」という存在自体を肯定し、信頼するあの優しさが。
(そうか、私はあの人に甘えていたんだ)
冬の冷ややかな牢の壁に背中を預けて座りながら彼女は考えた。
(私は…「子供」なんですね)
これには色々な意味があった。
自らの幼さを認めたというだけではない。
同時に、今は亡き愛しの母の「代わり」を求めていることを自覚したのである。
(まだ「子供」なんですね。…いや、これからもずっと「子供」なのかもしれません。このちんちくりんな身体も、もう会えない過去の人の愛に依存し続ける、こんな心も)
そんな中、ふとグレアの何気ない言葉が想起された。
「成長がもっとゆっくりなんです。でも着実に成長している」
「この3年弱で背も伸びたし、間違いなくスタイルも良くなってきましたよ。ただ速度がゆっくりなだけです。」
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その時、彼女の目が大きく見開かれる。
「そうだ」
(今まで、私はあの人からもらってばかりなのです)
「一つくらい返さないと、ですね」
決意を胸に「魔王の卵」はゆっくりと立ち上がった。
「死のうが生きようが」
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