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第二章 前編
第三話
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馬は心地よく風を切って走った。
山から離れるにつれ、道は舗装されていき、見られる建造物の数も増えていった。
私はその変容を楽しんでいた。
道中、「ジャサー辺境伯」の権威を思い知る契機となった出来事が二つあった。
私達は何度か馬車とすれ違ったが、例外なく一時停車し、私達が通り過ぎるのを静かに待機していたのだ。
それが一つ。
もう一つは、出発約三時間後に勃発した、「事件」という呼び名が相応しいと思われるある出来事だ。
橋を渡っている時だった。
橋の脇の、少し低くなった所に隠れていたのだろう、斧や剣を手にしたならず者たちが、ぞろぞろと現れて私達の進退路を塞いだのだ。
連中の人数がこちらよりも遥かに多く、遥かに恐ろしげなのを見て、私は震えだした。
「ジャサーの主よ。配下が愛おしければ、無駄なことはするな」
頭領とみられる、眼帯に長髪の男が出てきて、剣を向けながら言った。
閣下は全く動じない。
どころか、涼しい顔をしたまま、沈黙し、まるで交渉の意向を見せなかった。
「わかった」
男が言う。
「やれ」
刹那、前後の黒褐色の群衆が喚声とともにどっと溢れ出した。
私は一瞬パニックになりかけたが、閣下の泰然自若な様子を見て留まった。
計八名中七人の近衛兵たちが下馬し、武器を携えて歩み出た。
私達のちょうど前には、金髪のポニーテールと碧眼が特徴的な女性が佇んでいた。
「彼女の動きを特によく見ていろ」
シーゾ伯爵が沈着な声色で語りかけた。
「彼女…『疾風のバセリア』は、君の師になるかもしれない」
バセリアは地面を蹴って飛び出した。
凄まじい突風が吹き抜けると同時に、最前線の敵三人が力なく倒れる。
さらに、奥から現れた一人に力いっぱい振り下ろされた大斧を、最小限度に上半身を反らして避け、流れるように鳩尾、喉、眉間を突き刺す。
そして意識を失って倒れゆく敵を蹴り押し、奥の敵二人にぶつけて怯ませ、出来た一瞬の隙を逃さず脳天に一撃ずつ。
肉の防護壁がバタバタと倒壊し、首班の姿が露わになった。
「『刃』は使わんのか、怪物め」
その時、初めて、バセリアの得物は「鞘を被ったまま」だと気付いた。
鞘は銀色をしていたし、何より剣技が素早すぎて、その形状を捕捉できなかったのだ。
バセリアは無言で剣(鞘)を再度構えた。
敵も槍を持つ手を引き、鋭い眼光を飛ばした。
三秒ほどの間を置いて、両者は、同時に、武技を繰り出した。
一方が倒れた。
立っていたのはバセリアの方だった。
「他も片付いたな」
見ると、確かに敵で立っている者は一人も居なかった。
山から離れるにつれ、道は舗装されていき、見られる建造物の数も増えていった。
私はその変容を楽しんでいた。
道中、「ジャサー辺境伯」の権威を思い知る契機となった出来事が二つあった。
私達は何度か馬車とすれ違ったが、例外なく一時停車し、私達が通り過ぎるのを静かに待機していたのだ。
それが一つ。
もう一つは、出発約三時間後に勃発した、「事件」という呼び名が相応しいと思われるある出来事だ。
橋を渡っている時だった。
橋の脇の、少し低くなった所に隠れていたのだろう、斧や剣を手にしたならず者たちが、ぞろぞろと現れて私達の進退路を塞いだのだ。
連中の人数がこちらよりも遥かに多く、遥かに恐ろしげなのを見て、私は震えだした。
「ジャサーの主よ。配下が愛おしければ、無駄なことはするな」
頭領とみられる、眼帯に長髪の男が出てきて、剣を向けながら言った。
閣下は全く動じない。
どころか、涼しい顔をしたまま、沈黙し、まるで交渉の意向を見せなかった。
「わかった」
男が言う。
「やれ」
刹那、前後の黒褐色の群衆が喚声とともにどっと溢れ出した。
私は一瞬パニックになりかけたが、閣下の泰然自若な様子を見て留まった。
計八名中七人の近衛兵たちが下馬し、武器を携えて歩み出た。
私達のちょうど前には、金髪のポニーテールと碧眼が特徴的な女性が佇んでいた。
「彼女の動きを特によく見ていろ」
シーゾ伯爵が沈着な声色で語りかけた。
「彼女…『疾風のバセリア』は、君の師になるかもしれない」
バセリアは地面を蹴って飛び出した。
凄まじい突風が吹き抜けると同時に、最前線の敵三人が力なく倒れる。
さらに、奥から現れた一人に力いっぱい振り下ろされた大斧を、最小限度に上半身を反らして避け、流れるように鳩尾、喉、眉間を突き刺す。
そして意識を失って倒れゆく敵を蹴り押し、奥の敵二人にぶつけて怯ませ、出来た一瞬の隙を逃さず脳天に一撃ずつ。
肉の防護壁がバタバタと倒壊し、首班の姿が露わになった。
「『刃』は使わんのか、怪物め」
その時、初めて、バセリアの得物は「鞘を被ったまま」だと気付いた。
鞘は銀色をしていたし、何より剣技が素早すぎて、その形状を捕捉できなかったのだ。
バセリアは無言で剣(鞘)を再度構えた。
敵も槍を持つ手を引き、鋭い眼光を飛ばした。
三秒ほどの間を置いて、両者は、同時に、武技を繰り出した。
一方が倒れた。
立っていたのはバセリアの方だった。
「他も片付いたな」
見ると、確かに敵で立っている者は一人も居なかった。
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