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第二章 後編
第十四話
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久しぶりに馬に乗って、例の丘に到着した。
ラーラは以前と同様に馬と木を丁寧に結んだ。
「さて、久しぶりの共同訓練ですね。…しばらく魔法は使っていませんし、身体が訛っていませんか?」
「多分そうだと思うので、基礎練習からお願いします」
私は覚えている魔法を一通り、ラーラの「影織」に放った。
その内に「魔法近衛兵グレア」としての感覚を取り戻し、新たな技法の習得の為の下地は整った。
「今日は、貴女はこれとこれを試してみてください。私はこれとこれの習得を頑張ってみますから」
「分かりました」
以前のように「闇」「地」「雷」属性と非元素属性の中でそれに近い性質の物はラーラ、「火」「水」「風」「光」属性とそれに近いのは私、というふうに分担し、雑談したり、流れゆく雲を眺めたりしながら、のんびりと習得に挑戦する。
これが最適解であり、現に二人ともその手法で今日のノルマは達成できた。
「今日は早めに習得出来ましたね」
まだ高い位置にある太陽を眺めながらラーラは言い、
「帰りましょうか」
と歩き出した。
「ちょっと待ってください」
私はそんな彼女を引き止めた。
まだ私が補助兵で、ラーラが近衛兵であった頃のある夜、私は「秘密のラーラ」がそうである必要性について、本人に質問してみた。
曰く、彼女は立派な角も含めて魔物の象徴である身体的特徴を多く備えている為、目撃した民たちに恐怖と不信感を与える可能性が高い。
また、彼女は何事も” 無かったことに出来る”「無」の魔法の専門家であるが故、衛兵のそれとは異なる特殊な仕事を任されることも多く、素性を知られてはいけない、という。
「洗脳済み」の仲間にさえも。
「だから、一人だけ自室で身体を洗い、体格と年齢を誤魔化すブーツを無理矢理履いて、暖かいのに手袋も付けて、フードに顔を隠しているのですね」
「それだけじゃないですよ」
彼女がフードを被り、指を鳴らすと、布の奥により濃い闇が広がった。
「『闇』魔法で光の強さを調整して、顔を見えにくくしているのです」
魔法の常時発動とは、常に意識の一部を裂き、絶えず精神力を失っているということを意味する。
「闇」魔法の奥深さとともに、彼女の平常の苦労にも気付かされた瞬間だった。
思えば、彼女は戦闘時、ほとんど歩いていない。走る事はあるが、その度に転ぶ。
試験の時度肝を抜かれたのだが、馬を巧みに調教し、騎乗する時は乗られる方から姿勢を低くするようになっている。
昨日も転んで服を破いたのだろう。代わりが無いらしく、今日も破れたものを着用している。
ラーラはあの忌々しいブーツの為にずっと苦労してきたのである。
ならば、「私だからこそ出来ること」をして差し上げようと思った。
「ラーラ様」
私は彼女のすぐ横に立ち、少し腰を落とした。
そして彼女の膝裏と背中に手をやる。
「こういうのはどうですか?」
「ひゃっ!」
そしてひょっと持ち上げた。
所謂「お姫様抱っこ」である。
私は彼女を抱え、そのまま彼女の馬の方へと歩いていった。
その間、フードが風で捲れ、赤くなった頬がのぞいた。
剣術を心得て、教団の秘宝を習得し、私達は確実に決戦の時へと近付いていっている。
だが、そこで何が起ころうとも、私がこの丈夫な身体を持ってこの人を絶対に守り抜くと…
そう決心した。
ラーラは以前と同様に馬と木を丁寧に結んだ。
「さて、久しぶりの共同訓練ですね。…しばらく魔法は使っていませんし、身体が訛っていませんか?」
「多分そうだと思うので、基礎練習からお願いします」
私は覚えている魔法を一通り、ラーラの「影織」に放った。
その内に「魔法近衛兵グレア」としての感覚を取り戻し、新たな技法の習得の為の下地は整った。
「今日は、貴女はこれとこれを試してみてください。私はこれとこれの習得を頑張ってみますから」
「分かりました」
以前のように「闇」「地」「雷」属性と非元素属性の中でそれに近い性質の物はラーラ、「火」「水」「風」「光」属性とそれに近いのは私、というふうに分担し、雑談したり、流れゆく雲を眺めたりしながら、のんびりと習得に挑戦する。
これが最適解であり、現に二人ともその手法で今日のノルマは達成できた。
「今日は早めに習得出来ましたね」
まだ高い位置にある太陽を眺めながらラーラは言い、
「帰りましょうか」
と歩き出した。
「ちょっと待ってください」
私はそんな彼女を引き止めた。
まだ私が補助兵で、ラーラが近衛兵であった頃のある夜、私は「秘密のラーラ」がそうである必要性について、本人に質問してみた。
曰く、彼女は立派な角も含めて魔物の象徴である身体的特徴を多く備えている為、目撃した民たちに恐怖と不信感を与える可能性が高い。
また、彼女は何事も” 無かったことに出来る”「無」の魔法の専門家であるが故、衛兵のそれとは異なる特殊な仕事を任されることも多く、素性を知られてはいけない、という。
「洗脳済み」の仲間にさえも。
「だから、一人だけ自室で身体を洗い、体格と年齢を誤魔化すブーツを無理矢理履いて、暖かいのに手袋も付けて、フードに顔を隠しているのですね」
「それだけじゃないですよ」
彼女がフードを被り、指を鳴らすと、布の奥により濃い闇が広がった。
「『闇』魔法で光の強さを調整して、顔を見えにくくしているのです」
魔法の常時発動とは、常に意識の一部を裂き、絶えず精神力を失っているということを意味する。
「闇」魔法の奥深さとともに、彼女の平常の苦労にも気付かされた瞬間だった。
思えば、彼女は戦闘時、ほとんど歩いていない。走る事はあるが、その度に転ぶ。
試験の時度肝を抜かれたのだが、馬を巧みに調教し、騎乗する時は乗られる方から姿勢を低くするようになっている。
昨日も転んで服を破いたのだろう。代わりが無いらしく、今日も破れたものを着用している。
ラーラはあの忌々しいブーツの為にずっと苦労してきたのである。
ならば、「私だからこそ出来ること」をして差し上げようと思った。
「ラーラ様」
私は彼女のすぐ横に立ち、少し腰を落とした。
そして彼女の膝裏と背中に手をやる。
「こういうのはどうですか?」
「ひゃっ!」
そしてひょっと持ち上げた。
所謂「お姫様抱っこ」である。
私は彼女を抱え、そのまま彼女の馬の方へと歩いていった。
その間、フードが風で捲れ、赤くなった頬がのぞいた。
剣術を心得て、教団の秘宝を習得し、私達は確実に決戦の時へと近付いていっている。
だが、そこで何が起ころうとも、私がこの丈夫な身体を持ってこの人を絶対に守り抜くと…
そう決心した。
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