魔王メーカー

壱元

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第二章 後編

第十六話

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    翌日も、クリロンの熱烈な歓待に驚かされた。

使用人たちが私を着替えさせ、朝食は最高品質の品々が食べ放題。おまけに城内の半分以上の部屋を自由に使っていいという。

ここまで機嫌取りに奔走する所を見ると、もはや何かに脅迫されているという線まで考えられてしまう。

この日も伯爵から了解を得て、午前中は城下に出掛けていた。

情報収集の時間が十二分にあるのは有り難い事だが、どうしても持て余してしまう。

やはりこの身の研磨に使おうか。

昼食後、一旦城に戻ると、バセリアからの呼び出しが掛かった。


「失礼します」

バセリアは庭の一角で個人鍛錬に励んでいる最中だった。

相変わらず魔力を周期的に放出しながら、素振りを繰り返している。

「おう、来たか」

彼女はやはり手を止めずに対応した。

「お前、ここに来てから暇だろ?」

…ご明察。

「はい。正直に申し上げると、自由時間の一部を訓練に費やそうと思っています」

「それでいい。でも、今回お前を呼んだのは別件だ。…この城には剣術家見習いが沢山いる。そいつらと練習試合をしてみたらどうかと思ったんだ」

「なるほど」

バセリア以外に同僚に剣術を学んでいる者はいなく、私に実戦経験が欠けているのは自覚している。これは貴重な機会だ。

「話は私の方から通してある。お前さえ良ければ、明日にでもやれるが」

「分かりました、やってみます。それでお願いします」

「分かった」

私は樹木に立て掛けてあった木剣を手に取り、素振りを始めた。

やるからには全力だ。その為に必要なことを怠る訳にはいかない。

    練習は夕方まで続いた。

夕日を背に受けながら、師と二人、誇りを胸に抱いて帰った。


    三日目。

雨降る朝、私は早急に準備を済ませ、バセリアと合流した。

階段を降り、少し廊下を歩くと、扉が開け放たれた大部屋があった。

バシッ、バシッと小気味よい打撃音を響かせながら、若き剣士達が一対一で木刀を打ち付け合っている。

それを師匠とみられる背の高い黒ひげの老人が、薮犬のような鋭い目付きで弟子の試合を監督している。

「そこまで」

やはり覇気のある声で、老剣士は試合を収めた。

そしてこちらに一瞬目をやった後弟子たちの方を見て、

「来い」とただ一言放つと、部屋の中の全員が瞬く間に集合した。

「お入りください」

一方、私達も道場に招き入れられ、皆の前に立つことになった。

「本日、練習試合に参加されるジャサー伯爵の近衛兵、バセリアさんとグレアさんだ」

紹介に預かった私達は身分や名前とともに流派を示し、挨拶とした。

「バセリアさんは師範代、グレアさんは見習いとの事だ。まずはレイがバセリアさんと、ヒンカがグレアさんと立ち合え」

「はい」

立ち上がったのは、背の高い青年と小柄な少女。

私が相手にするのはやはり後者だ。

    まずは私の番だ。

二人は部屋の中央に向かい合って立ち、木剣を構える。

こちらは少し腰を落として踵を浮かせて立ち、両手で剣をしっかり支えるスタイル。

対する相手は、半身に構えて片手で剣を持ち、先端をこちらに向け、もう一方の手は上半身の向こう側に隠れるようになっている。足を前後に開き、丈の長い装束と合わさって身体の輪郭と動作を捉えにくくする「乾坤流」の基本的なスタイル。

構えからも手慣れているのが分かる。相手にとって不足はないだろう。

まだ見ぬ異流派との化学反応に目を輝かせる多くの見物客に囲まれ、舞台も整った。

「すーっ…はーーっ…」

深呼吸をして緊張を緩和する。大丈夫。

「では…」

後はやるだけだ。

「始め!!」

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