魔王メーカー

壱元

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第四章

第三十四話

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 結局あの後ラーラはまた「眠り姫」に戻ってしまった。どうやらまだ体内の魔力が不安定で、定期的に昏睡状態になるらしい。
とはいえ、以前よりは高頻度で起きられるとのことだ。
「また遊びましょう」
夜、彼女はそう言って目を閉じた。
 翌日は早くに町を発って、昼頃にはクリロン地方に入った。
久しぶりのクリロン地方だが、怪鳥の爆撃に邪魔されて終わった先の戦争が頭をよぎり、辺境伯あたりがまた命を取りに来るのではないかと怯えていた。
そんな恐怖を紛らわすためにまた本を読み始めた。
『古代魔法と伝承』、ログラマト著。

 現行の魔術体系においては、「火」「水」「地」「雷」「風」「闇」「光」および「非元素」の八属性による分類が一般的であるが、こうした定型的な分類枠組みが人類魔術史の初源から普遍的に受容されていたわけではない。三千年を超える魔術的営為の歴史において、古代の魔術とはむしろ、複数の属性原理を横断的かつ統合的に操作することにより、自然界の現象を意図的に模倣・再現する行為であり、その理論的枠組みは著しく流動的であった。(中略)
 自然環境に対して広範な影響を及ぼす古代魔術の実践は、しばしば宗教的儀礼や信仰体系と密接に連関していた。たとえば、キミン王国レイメ郡オットの碑文資料には、毎年の如く魔獣を従えて来襲する邪神ジャイマと、民を加護する豊穣神スザノーンとの闘争譚が刻まれており、そこでは術者が地殻変動を誘発して土砂災害を引き起こすことで、邪神の進行を阻止したとする記録が確認できる。また、同様の儀式的魔術の実例として、神殿内部において局所的な雷雨現象を生成することで神格の降臨を試みるとされる儀式の断片も伝わっている。(中略) 古代魔術が引き起こし得た自然現象の多様性を鑑みれば、その魔力収支は必ずしも効率的とは言えず、むしろ現代的基準からすれば、著しく非実用的かつ浪費的な性格を帯びていた。今日においては信仰基盤も失われ、これらの術式はもはや形骸化した儀礼的模倣に過ぎず、過剰な魔力消費を伴う無為な実践と化している。
 既述の通り、古代魔術は魔力効率の観点において著しい不合理を孕んでおり、それに対抗する形で成立したのが、実用性、殊に戦闘的機能性を志向して体系化された現代魔術である。(中略)しかしながら、この過程において我々は、魔術が本来的に備えていた創造性と柔軟性ーー自然と対話し、境界を越えて編成する力ーーを多く喪失することとなったのである。(中略)
 ページをめくる手が止まらず、夜になる頃には800ページ超のこの本も読破してしまっていた。
「はぁー…」
とはいえ、文体が難解すぎて流石に少し疲れてしまった。
他のメンバーに心配されたが、宿に着いてからは夕飯も摂らず眠ってしまうことにした。
「あの本、難しいもんね」
部屋を出る間際、マギクがドアの隙間から顔を覗かせて言った。
そうだ、今度こそマギクを読書に誘ってみよう。
まだログラマトの本は何冊か残っている。彼は心強い味方になってくれるだろう。
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