【完結】完全無欠の悪女様~悪役ムーブでわがまま人生謳歌します~

藍上イオタ

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32・不撓不屈の悪女様-4

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「無駄ではありませんわ。原因となった証拠がありますので。私に遅れた時間を指示したメモです」

 私はそう言い、メモ用紙を見せた。

(フィロメラから言われたことを言えばいいのだろうけれど、口で言ったところでねつ造といわれたら意味がないもの)

 顔面が蒼白になるのはフィロメラである。

「この筆跡を見れば誰かわかるでしょう?」

 パハロスの眼鏡の奥が光る。不愉快そうに眉間に皺を寄せた。

「……数字だけで特定できるとでも? あなたが言い逃れをするために真似して書いた可能性も捨てられないでしょう」

 パハロスが答える。

 かたくなに否定するのはすでにフィロメラと結託しているからだろう。

「そうですか? 犯人はこの中にいるのでしょうから、私たちが食事をしているあいだに先生たちで、同じメモ帳を持っている方を今から探せばいいだけではありませんこと? 今であれば、証拠を隠すこともできませんし」

 私が微笑むと、周囲の生徒たちはザワつく。

「たしかにそうよね」

「なぜ、デステージョ様の提案を聞かないのかしら?」

 パハロスはカッと顔を赤らめた。

「そ、そもそも! あなたがメモ帳を誰かの部屋に仕込んだ可能性だってあるでしょう!!」

「そこまでして遅刻する理由があります?」

「誰かを嵌めようとしてるのでは? きっとそうよ、あなたは悪女で有名ですからね!」

 私は憤るパハロスの鼻先にメモ帳を突きつけた。

「特徴的な香りするのがわかりますよね?」

 そう言いながら、フィロメラを流し見る。フィロメラの使っている香水は、彼女の領地で採れる希少な香料を使い、オリジナルの調香がされたものだ。フィロメラにとって自慢の一品で、ひけらかしていたから多くの人々がフィロメラの香りとして認識している。

 フィロメラとその取り巻きたちは顔を青くして、縋るような目でパハロスを見つめる。

「さすがに同じ香水を使っていたら、私にもその香りが残っているはずだと思いますけど……嗅ぎます?」

 私はひるむパパロスに畳みかけ、ズイと一歩前に出た。

「な。同じ学び舎に集う生徒に、は、犯人だなんて言い方、よろしくないですよ。きっと、この件で学び、自身で反省してくれるはずです。一度の過ちで断罪し、人生を棒に振らせるのでは教育の意味がありませんから、犯人捜しのような下品なことはいたしません!」

 そう言い切ると、私の前に立ち生徒たちに優しげに微笑んでみせる。

「私は生徒たちを信じていますから」

 私はその白々しい態度に笑えてしまう。

(私のことは散々悪役に仕立てておいてよく言うわ……)

 呆れて言葉も出ない。

「今回の件は、心当たりのある方が自省し、同じ間違いを繰り返さないようにすればよいことです。皆さんわかりましたか? それでは、食事を始めましょう!!」

 パパロスはパンパンと両手を打ち鳴らした。

 私には目もくれない。どうやら犯人捜しをうやむやにしたいようだ。

(まぁいいわ。寮内でイジメをさせないことが目的だし、これで釘を刺せたでしょう)

 私はこのあたりで追撃をやめることにした。そして、フィロメラに視線を投げる。

「このように誰かを嵌めようとするような悪意、私は許さなくってよ」

 ドスをきかせた声で宣言し、一息ついてから艶然と微笑む。

「では、皆様、食事をなさってくださいませ」

 私が柔らかな声で告げると、生徒たちのあいだから安堵のため息が漏れた。

 私はパハロスに後ろから近づいて、低い声で囁いた。

「先生……。犯人をかばうのがあからさますぎましてよ? 時流を読んだほうが身のためですわ」

 パハロスは、「ヒッ」と悲鳴をあげて顔を真っ青にした。

「……あ、悪女め」

 漏れるつぶやきを私は無視し、自分の席に着いた。

(これくらい牽制しておけば、彼女たちも軽率な行動はしないでしょ)

 私が食事に手をつけると、皆も続いてカトラリーを持つ。パワーバランスが私に傾いたのだろう。

 周囲に座る女生徒が小声で話しかけてくる。

「今日の件はスカッとしました」

「私もです。イジメがあると噂を聞いていたので学園生活が不安だったのですけれど、デステージョ様がいらっしゃれば安心です」

 私は思いもしない言葉に面食らった。

「はぁ? 私がいて安心? 怖いのではなくて?」

 先輩にも教師にも従わず、食事の場を荒らすようなものは苦手意識を持たれてもしかたがないと思っていた。

「はい! 頼もしかったです!!」

 キラキラした目を向けられて私は決まりが悪い。

(ムカついたから言い返しただけなのに……)

 私は照れを隠すように、フォークで肉を突き刺した。

「そ、勝手になさって」

 そう冷たく答え、食事を始めた。

 そんな私のことをシエロは離れたところからニコニコと見守っている。

 目が合ったと思ったら軽く手を振ってくる始末だ。

 私は苦笑いしながら、小さく手を振り返した。



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