お嬢様と執事は、その箱に夢を見る。

雪桜 あやめ

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第17章 恋人たちの末路

構想

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「お久しぶりでーす! レオの恋人役やってたルイでーす!」

 黒髪のカツラをとり、いつもの金髪姿に戻ったルイは、使用人たちが集まる食堂の中で、にっこり笑って挨拶をした。

 だが、そんなルイを見て、恵美と愛理と、そして、結月は驚いていた。

 先日、ここに招かれた、麗しのフランス人女性!

 だが、その女性と顔立ちはそっくりなのに、三つ編みにした長い髪は、すっぱり短くなり、豊満な胸もぺったんこになっていた。

 つまりは、体型が──男!!

「うえええぇぇぇ!! 本当に男の人なんですか!?」

「そうだよー。ごめんね、嘘ついて。ついでにいうと、18歳でもないんだー、22歳!」

「22歳!? 五十嵐さんより、年上じゃないですか!?」

「あはは」

 もう完全に開き直ったらしい。
 皆を前で、てへっと可愛らしく笑いルイ。

 だが、あの日、恵美と結月は、一瞬だがルイのことを『男性かも?』と思ったことがあった。

 結月は、ルイに抱き寄せられた時に。そして、恵美は、ルイがレオと一緒に執務室にいる時に。

 だが、実際に男だと言われると、やはり、困惑してしまう。

「ちょ、ちょっとまってください! じゃぁ、あの時、執務室で聞こえてきた淫らな声は!?」

「え? 淫らな?」

 なにやら意味不明な返答をした恵美に、ルイが首を傾げれば、恵美は顔を赤くしながら答えた。

「し、しらばっくれないでください!! 私聞いたんです! 執務室の中で、ルイさんと五十嵐さんが……その、あの……っ」

 口をパクパクさせながら話す恵美は、明らかに変な想像をしていた。
 すると、レオがすぐさま察したらしい。呆れたように息をついたレオは

「もしかして、を巻いていた時のことですか?」

「え? サラシ?」

「はい。あの時ルイは、胸にタオルを詰めて、サラシを巻いていたんです。でも、巻が甘く崩れたらしく、俺が、執務室で巻き直しました。でも、その時ルイが、変な声を」

「え!? ちょっと、僕のせいにしないでよ!? あれは、レオの巻き方が酷すぎたからでしょ!?」

「バカ言うな。俺は執事だ。サラシの巻き方くらい熟知してる」

「どこが!? ほぼ息できなかったよ!」

「あ、あの!」

 すると、そんなルイとレオをみて、今度は結月が口を挟んだ。

「もしかして、ルイさんのサラシが崩れたのって、私のせいですか? あの時、私を

「!?」

 だが、思わぬ所から、予想外の言葉が飛び出してきて、レオが眉をひそめた。

 無理もない。今、結月は、ルイに抱き寄せられたといったのだから!

「ルイ、どういうことだ」
「ぅ……っ」

 すると、じっと睨みつけてきたレオに、ルイは軽く冷や汗をかいた。はっきりいって、こうなったレオは、ちょっとめんどくさい。

「えーと、違うよレオ。抱き寄せたんじゃなくて、だけ。カップが割れて怪我をしそうだったから、ちょっとだけね。うん、本当にちょっとだけ!」

「…………」

 あくまでも、逆鱗に触れないよう、的確に状況を説明するルイ。だが、レオはそれでも、視線を緩めることがなかった。

 長い仲だ。ルイに限ってやましいことはないのは、わかってる。だが、内緒にされていたのが、ちょっとだけしゃくに障る。

「本当よ、レオ……!」

 すると、そこに、また結月が口をはさんだ。

「ルイさんは、怪我をしないように守ってくれただけなの! だから、ケンカしないでね?」

「………」

 そう言って、上目遣いで見げる結月。
 だが、そうな風に見つめられると、レオは途端に弱くなる。

「ケンカなんてしないよ」

「本当に? 怒っちゃダメよ。元はと言えば、私が悪いんだから」

「(助かった……)」

 まさに、鶴の一声!
 結月のおかげで助かったルイは、ほっと胸をなでおろした。

 だが、その後、改めてルイみた結月は、少し落ち込んだ表情した。

「結月、どうした?」 

「ぁ、いえ……実は、ルイさんが男性だと分かって、ちょっとショック言うか」

「ショック?」

「だって、私、ルイさんのこと、女性としてだと思っていたの。って……それなのに、そのルイさんが、女性どころか男性だったなんて……っ」

 どうやら、女として敵わないと思っいた相手が、男だったことに、打ちひしがれているらしい。

 確かに、男相手に、女として劣っているとなれば、ショックなのは確かだ。

「結月ちゃん、そんなに落ち込まないでよ。あの時は、僕もレオの顔を立てて、あえてイイ女を演じてたのもあるし」

「そうだ、結月が落ち込む必要はない。なにより、

「え? それは、ちょっといいすぎじゃ……っ」

「言い過ぎなものか。結月は、とても素敵な女性だよ。この先、どんな相手が現れても、俺にとっては、

「っ……レオ」

 結月の手を取ったレオざ、甘く囁く。

 見つめあえば、レオのことを思い出した結月が、かわいらしく頬を染めていた。

 だが、手を取り、うっとりと甘い雰囲気をかもし出したその恋人たちを、残りの者たちは、じーーーーっと、食入るように見つめていた。

 お嬢様と執事が、愛を確かめあっている。こんな光景、これまで一度も見たことがない!

 だが、それからややあって、我にかえったらしい。結月の手を離したレオは

「おほん、失礼。……話を戻しましょう」

(照れてる……! 五十嵐くんが、照れてる!?)

(ちょっと、五十嵐さん! あなた、恋人の前ではあんな顔するんですか!?)

(どうやら、お嬢様を愛しているというのは、本当みたいですね)

(あはは。いいなー、若いって……)

 愛理、恵美、矢野、斎藤と、各々感想をめぐらせる中、皆の前で、恥ずかしいことを口走ってしまったレオは、結月と共に再び席につくと、その空気を消し去ろうとばかりに、また話し始めた。

「それで、いかがですか、ソレを読んだ感想は?」
 
 すると、そのたった一言で、まさに流れが一変する。

 ソレ──と言われ、皆は静まり、再び机に並んだを見つめた。

 夕日が傾き出した頃、ルイを交えた屋敷の中では、二人を駆け落ちさせるため、その構想をねっていた。

 レオが取り出したジュラルミンケースの中には、阿須加家が、これまで従業員たちに行った悪行の数々が記された書類。

 それは、使用人を全て追い出したあと、阿須加家を脅すつもりで、これまでレオが集めてきた証拠品。

 そして、その書類には、まさに目を疑うようことばかりが書かれていて、使用人達は、苦渋の表情でレオを見つめる。

「人使いの荒い方々だとは思ってましたが、まさか、ここまで酷いなんて……」

「まぁ、納得もしたけどね。実際、斉藤さんにも酷いことしてたし」

「しかし、これだけの証拠を集めましたね。ですが、これをマスコミにリークすると脅したところで、本当にお嬢様を諦めるでしょうかか?」 

 レオがあつめた証拠や被害者たちの署名は、阿須加家を脅す道具としては申し分ない。
 だが、その脅しに、あの二人が屈するのかが、甚だ疑問だった。

「確かに、これは証拠品としてはなかなかなものです。でも、どれも労働基準法に違反している程度。犯罪までいかないグレーゾーンです。マスコミ側が、これを大々的に取り上げるかどうかは」

「そうですね。それだけでは、かと」

「それだけ?」

「はい。マスコミへのリークだけでは、阿須加家に揉み消される可能性がありますし、仮に、とりあげられても週刊誌の片隅に載る程度ですよ。だから、こちらは、もっと──直接的なを取ります」

「人質?」

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