聖女の証

とーふ(代理カナタ)

文字の大きさ
62 / 198

第20話『私たちは悲しいすれ違いがありましたが、その事で誰か恨んだり、憎んだりする事は無いですよ』①

しおりを挟む
占い師さんの言葉で酷く懐かしい事を思い出していた私は、小さく息を吐いて精神を落ち着かせた。

「それで、それを私に話して、貴方は何を求めているんですか?」

「……ふぅん。意外とすぐに持ち直したね。なるほど。長く生きているのは伊達じゃないって事か」

「さぁ。どうなんでしょうね」

「……」

「……」

互いに何も話さず、私たちは視線をぶつけ合ったまま無言になった。

このまま無言で居続けても私は問題ないのだけれど、向こうはそれほど気が長くないらしい。

大きく溜息を吐いて私から離れた。

そして、かつての王たちの様に私の心を覗こうとしているのか、目を細める。

「君の目的を知りたい」

「この世界の全てを記した書があるのでしょう? それを見れば私の目的も書いてあるのでは?」

「……分かった。分かった。降参だ。僕の負けだよ。とは言っても初めから勝負なんてする気は無かったけどさ」

「そうですか」

「正直に話そう。僕は君の事を恐れているんだ」

「恐れている?」

「そうさ。君は怒っているだろう? 世界の果てに僕達人類が魔王を封じた事を。恨んでいるハズだ」

私はかつて幼い頃に聞いていた魔王様の声と言葉を思い出しながら、笑う。

「残念ですが、私は誰も恨んではいませんよ。それは魔王様も同じです」

「バカな! あり得ない」

「何もあり得ない事はありませんよ。魔王様は人を愛していた。そしてそれは私も同じです。私たちは悲しいすれ違いがありましたが、その事で誰か恨んだり、憎んだりする事は無いですよ」

占い師さんは私の言葉は信じられないと言うように首を横に振っていた。

人は言葉で意思疎通をするけれど、その言葉の奥にある心は見えないのが欠点だと思う。

「今、ここでどれだけ言葉を尽くしても意味は無いでしょう。それほど不安でしたら、私の命を貴方に預けます」

「……は?」

私は自分の胸に手を当てて、光を放つガラスの花を占い師さんの手に乗せた。

「これは、私の命です。これを砕けば私の命はその瞬間に終わります。これで占い師さんも安心出来るでしょう」

「何故! 何故、貴女はこんな事が出来るんだ」

「何故と言われましても。ただの罪滅ぼしですよ」

「罪……? 貴女の人生に罪など」

「数えきれない程にありました。私の中には後悔しかありません。もし、私が間違えなければ多くの命は悲しみの中で失われる事は無かったでしょう。だからこそ、これから先に来る未来には悲しみが起こらない様に、闇の魔力は完全に封印しなくてはいけません。私の目的はただ、それだけです」

「それは王としての言葉だ。僕はずっと、貴女の心に聞いているんだ。人を救いたいという気持ちは、本当に貴女の心から出てきた物なのか!?」

「心……? 私の心は」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

追放された聖女は旅をする

織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。 その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。 国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました

小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。 しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!? 助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、 「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。 幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。 ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく! ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー

【完結】追放された転生聖女は、無手ですべてを粉砕する

ゆきむらちひろ
ファンタジー
「祈るより、殴る方が早いので」 ひとりの脳筋聖女が、本人にまったくその気がないまま、緻密に練られたシリアスな陰謀を片っ端から台無しにしていく痛快無比なアクションコメディ。 ■あらすじ 聖女セレスティアは、その類稀なる聖なる力(物理)ゆえに王都から追放された。 実は彼女には前世の記憶があって、平和な日本で暮らしていたしがないOLだった。 そして今世にて、神に祈りを捧げる乙女として王国に奉仕する聖女に転生。 だがなぜかその身に宿ったのは治癒の奇跡ではなく、岩をも砕く超人的な筋力だった。 儀式はすっぽかす。祈りの言葉は覚えられない。挙句の果てには、神殿に押し入った魔物を祈祷ではなくラリアットで撃退する始末。 そんな彼女に愛想を尽かした王国は、新たに現れた完璧な治癒能力を持つ聖女リリアナを迎え入れ、セレスティアを「偽りの聖女」として追放する。 「まあ、田舎でスローライフも悪くないか」 追放された本人はいたって能天気。行く先も分からぬまま彼女は新天地を求めて旅に出る。 しかし、彼女の行く手には、王国転覆を狙う宰相が仕組んだシリアスな陰謀の影が渦巻いていた。 「お嬢さん、命が惜しければこの密書を……」 「話が長い! 要点は!? ……もういい、面倒だから全員まとめてかかってこい!」 刺客の脅しも、古代遺跡の難解な謎も、国家を揺るがす秘密の会合も、セレスティアはすべてを「考えるのが面倒くさい」の一言で片付け、その剛腕で粉砕していく。 果たしてセレスティアはスローライフを手にすることができるのか……。 ※「小説家になろう」、「カクヨム」、「アルファポリス」に同内容のものを投稿しています。 ※この作品以外にもいろいろと小説を投稿しています。よろしければそちらもご覧ください。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

リーマンショックで社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ

のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
 リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。  目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。

没落領地の転生令嬢ですが、領地を立て直していたら序列一位の騎士に婿入りされました

藤原遊
ファンタジー
魔力不足、財政難、人手不足。 逃げ場のない没落領地を託された転生令嬢は、 “立て直す”以外の選択肢を持たなかった。 領地経営、改革、そして予想外の縁。 没落から始まる再建の先で、彼女が選ぶ未来とは──。 ※完結まで予約投稿しました。安心してお読みください。

処理中です...