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第54話『お姉ちゃんに近づく事が私の夢なんです』
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隣村を出てからゆっくりと整備された道を歩き、それほどしないで私たちは大きな壁の前にたどり着いた。
「……大きい」
「あぁ。そうだな。この辺りじゃあ一番大きな町だろう」
「この壁は、魔物対策でしょうか」
「そうなるな。魔物はどこから現れるか分からないし、現れた時にいきなり町の住人が襲われない様に作ったんだ」
「なるほど」
上手くやっているものだなと私は壁を見ながら感心し、頷いた。
そして、町へ入る為の列へと並ぼうとしたのだが、周囲の人や壁の近くに立っていた騎士さんにジロジロと見られ、緊張してしまう。
なんだ……?
何が起きてるんだ?
「……失礼。旅の御方。以前にもこちらの町へ立ち寄られましたかな?」
そして彼らは視線を向けるだけじゃなく、列に並んでいた私たちの所へ複数人の騎士さんが来るのだった。
でも、私の前にリアムさんがスッと自然な動きで移動し、腰に付けている剣に手を掛ける。
「確かに以前も立ち寄ったが……それが「やはり!! そうでしたか!」っ!?」
騎士さんは嬉しそうな声でヘルムを取ると、泣き出しそうな笑顔でリアムさんと私に深々と頭を下げた。
「以前はお礼を言う事も出来ず、大変申し訳ございません。部下の傷を癒していただき、更には町の住人達の傷や病気も癒していただいたとか。お二人が聖人様だという事が町で噂になる頃には、お二人の姿はなく、いつかまたこの町へ寄られた際には是非お礼をと考えていたのです」
「……礼を言われる様な事じゃない」
「謙虚な方ですな。では、大仰な礼は逆に失礼となりますか」
騎士さんは軽くフッと息を吐くと私たちをジッと見つめた。
その真剣な眼差しに私は息を止めて、リアムさんの影から静かに視線を返す。
「総員!! 礼!!」
そして、騎士さんは皆さん綺麗に揃って姿勢を正した後、私たちに向かって頭を下げ、再び城壁の方へ戻っていった。
その背中を見て、私は胸の奥がムカムカする様な気持ちを感じていたが、決して表に出さず飲み込むのだった。
騎士さん達が居なくなってから、私たちはゆっくりと進む列の中で立っていたのだが、不意にリアムさんが口を開いた。
「すまなかったな」
「何がですか?」
「多分、言えばすぐにでも中に入る事が出来たんだが」
「別に良いですよ。私たちだけが急ぐ旅をしている訳じゃないんですから。平等に待ちましょう」
「そうか」
私はフッと息を吐きながら空を見上げた。
こうして空を見上げて思い出すのはお姉ちゃんの事だ。
お姉ちゃんは、この世界の何もかもが好きだった。
青い空も、空に流れる気ままな雲も。
木漏れ日も、その辺に咲く花も。
そして……。
「あっ、あの」
「ゴホッ、ゴホッ……は、はい。なんでしょうか?」
「私、癒しの力を持っているんですが、その、使っても良いでしょうか?」
「え? えと、いえ、その、私、お金は持ってなくて」
「要らないです! 要らないです! ただ、私がやりたいだけなので!」
「それなら……えと、お願い、します?」
私はすぐ近くで苦しそうにしていたお姉さんの背中に手を当てて、私の中にいるお姉ちゃんにお願いをする。
そのお願いはすぐに結果と繋がって、お姉さんは苦しそうに胸に置いていた手をおろし、驚いた様な顔をしていた。
「苦しくない……。苦しくない! あの! ありがとうございます!!」
「いえ」
お姉ちゃんは、好きだったんだ。
誰かの笑顔を見るのが、どうしようもなく好きだった。
だから私も、人を癒そう。きっと旅の途中にお姉ちゃんも同じ事をやっただろうから。
『リリィ。アメリア様の足跡を追いなさい』
お婆ちゃんの言っていた言葉の通り、私もお姉ちゃんと同じ様に、お姉ちゃんの歩いた道の上を歩く。
「あの! 申し訳ございません! 聖女様ですよね? 噂は聞いておりました。旅をしながら病や怪我で苦しむ人を癒して下さる方が居ると」
「えと、はい。多分そうです」
「不躾なお願いを申し訳ございません! どうかそのお力をこの子にも分けて下さいませんか? お金は持っていないのですが、私に出来る事でしたら、なんでも」
「大丈夫です」
私は笑う。
鏡の前で散々練習した完璧なお姉ちゃんの笑顔を浮かべながら、赤い顔をした赤ちゃんを抱えるお母さんに言葉を向ける。
もう何も怖い事は無いのだと。
「っ! アメ、リア」
リアムさんの苦しそうな声を聞きながら、集中して赤ちゃんに手を差し伸べた。
そして、力を使い赤ちゃんの顔色が良くなるまで癒しの力を使うのだった。
「っ! あぁ! あぁ! ありがとうございます!! ありがとうございます!! なんとお礼を言ったら良いか」
「いえ。何も要りませんよ。私は何も」
私は少しふらつく頭で、微笑みかけた。
「聖女様!」
「聖女様だ。聖女アメリア様だ!」
慣れない力は少しばかり負担だが、期待の目を向けられてはそれに応えない訳にはいかない。
怪我人も病人も多く居るのだ。
お姉ちゃんなら、きっと自分よりも周囲を優先しただろう!!
「……おい」
「大丈夫です。リアムさん。私は大丈夫。お姉ちゃんならこんな所で諦めなかった。そうでしょう?」
「……お前」
「私はお姉ちゃんに憧れた。お姉ちゃんに近づく事が私の夢なんです。だから、大丈夫」
ふらついた体を支えてくれたリアムさんが、心配そうに声を掛けてくれたが、私はそれを制して笑う。
お姉ちゃんなら、見捨てない。
意識を失うまでは。
「大丈夫です」
「……分かった」
そしてリアムさんは私の言葉に目を閉じた後、静かに頷いた。
「ありがとうございます」
それから。結局その場にいた人を全員癒し、私は限界を超えてリアムさんの腕の中に倒れてしまった。
周りの人たちはこの世の終わりかとでも言うような心配そうな声を出すが、私は何とか意識を保って笑う。
「少し疲れただけなので、心配しないで下さい。リアムさん。少しだけ、眠っても、大丈夫でしょうか?」
「あぁ。ゆっくり休め」
「あり、がとう……ございます」
私は大きな満足感と共に、意識を失いそのままリアムさんに運ばれてゆくのだった。
そんなこんなで町の中へ入り、夜もすっかり遅くなった時間に私はふと何かの音で目を覚ました。
窓に何かが当たる様な音だ。
「……んん? なんだろう」
眠い目を擦りながら目を覚まし、多分宿屋のベッドだと思われる場所から立ち上がり、僅かに揺れている窓へと向かう。
どうやら外から小石の様な物が当たっているようだ。
嫌がらせだろうか。
お姉ちゃんに嫌がらせをするとはとんでもない奴だ。
捕まえて説教してやる。
そんな風に思いながら私は窓を開けて、直後飛んできた石が額に当たり、声を上げた。
「あいたっ!?」
「っ!? しまった! 聖女様!」
「いたたたたた」
思っていたよりも額に強い痛みを感じていた私は、額を抑えながら床に膝を付き、痛みを散らそうと癒しの力を使おうとしたが、上手くいかない。
しょうがないので、水の魔術を使って額を冷やすのだった。
「聖女様! 大丈夫ですか!?」
そして涙目になりながら額を癒していた私は、窓の外から部屋の中に突っ込んでくる少年に目を向ける。
いかにも町のヤンチャ小僧という様な風貌だ。
イラっとした気持ちがムクムクと湧き上がるが、私は何とかそれを抑え、大きく息を吐いてからお姉ちゃんの笑顔を浮かべる。
「私は大丈夫ですよ」
「よ、良かった。ごめんなさい! 聖女様。俺、どうしても妹の事でお礼が言いたくて……」
「あぁ、それで私を呼んでいたのですね」
窓に当たっていた小石は私を呼び出す為だったようだ。
まったくしょうがない小僧である。
呼ぶなら扉から来いという話だ。
「聖女様……」
「そんな顔をしないで下さい。私は怒ってませんよ。妹さんはあれからどうですか?」
「はい! すっかり元気になりました!」
「それは良かった。その事が聞けただけで私は嬉しいです。ありがとうございます」
「っ! 聖女様! 俺、俺も、ありがとうございました!! 俺、聖女様に言われた通りに、困っている人が居たら、手伝ってます!」
「それは素晴らしいですね。ありがとうございます」
「はい!」
それから私は夜遅くまで少年……いや、ルカと話をするのだった。
「いつか、いつか……俺もリーシャと一緒に旅に出ます。世界を救うための旅に。だから、また会えたらよろしくお願いします! 聖女様!」
「……大きい」
「あぁ。そうだな。この辺りじゃあ一番大きな町だろう」
「この壁は、魔物対策でしょうか」
「そうなるな。魔物はどこから現れるか分からないし、現れた時にいきなり町の住人が襲われない様に作ったんだ」
「なるほど」
上手くやっているものだなと私は壁を見ながら感心し、頷いた。
そして、町へ入る為の列へと並ぼうとしたのだが、周囲の人や壁の近くに立っていた騎士さんにジロジロと見られ、緊張してしまう。
なんだ……?
何が起きてるんだ?
「……失礼。旅の御方。以前にもこちらの町へ立ち寄られましたかな?」
そして彼らは視線を向けるだけじゃなく、列に並んでいた私たちの所へ複数人の騎士さんが来るのだった。
でも、私の前にリアムさんがスッと自然な動きで移動し、腰に付けている剣に手を掛ける。
「確かに以前も立ち寄ったが……それが「やはり!! そうでしたか!」っ!?」
騎士さんは嬉しそうな声でヘルムを取ると、泣き出しそうな笑顔でリアムさんと私に深々と頭を下げた。
「以前はお礼を言う事も出来ず、大変申し訳ございません。部下の傷を癒していただき、更には町の住人達の傷や病気も癒していただいたとか。お二人が聖人様だという事が町で噂になる頃には、お二人の姿はなく、いつかまたこの町へ寄られた際には是非お礼をと考えていたのです」
「……礼を言われる様な事じゃない」
「謙虚な方ですな。では、大仰な礼は逆に失礼となりますか」
騎士さんは軽くフッと息を吐くと私たちをジッと見つめた。
その真剣な眼差しに私は息を止めて、リアムさんの影から静かに視線を返す。
「総員!! 礼!!」
そして、騎士さんは皆さん綺麗に揃って姿勢を正した後、私たちに向かって頭を下げ、再び城壁の方へ戻っていった。
その背中を見て、私は胸の奥がムカムカする様な気持ちを感じていたが、決して表に出さず飲み込むのだった。
騎士さん達が居なくなってから、私たちはゆっくりと進む列の中で立っていたのだが、不意にリアムさんが口を開いた。
「すまなかったな」
「何がですか?」
「多分、言えばすぐにでも中に入る事が出来たんだが」
「別に良いですよ。私たちだけが急ぐ旅をしている訳じゃないんですから。平等に待ちましょう」
「そうか」
私はフッと息を吐きながら空を見上げた。
こうして空を見上げて思い出すのはお姉ちゃんの事だ。
お姉ちゃんは、この世界の何もかもが好きだった。
青い空も、空に流れる気ままな雲も。
木漏れ日も、その辺に咲く花も。
そして……。
「あっ、あの」
「ゴホッ、ゴホッ……は、はい。なんでしょうか?」
「私、癒しの力を持っているんですが、その、使っても良いでしょうか?」
「え? えと、いえ、その、私、お金は持ってなくて」
「要らないです! 要らないです! ただ、私がやりたいだけなので!」
「それなら……えと、お願い、します?」
私はすぐ近くで苦しそうにしていたお姉さんの背中に手を当てて、私の中にいるお姉ちゃんにお願いをする。
そのお願いはすぐに結果と繋がって、お姉さんは苦しそうに胸に置いていた手をおろし、驚いた様な顔をしていた。
「苦しくない……。苦しくない! あの! ありがとうございます!!」
「いえ」
お姉ちゃんは、好きだったんだ。
誰かの笑顔を見るのが、どうしようもなく好きだった。
だから私も、人を癒そう。きっと旅の途中にお姉ちゃんも同じ事をやっただろうから。
『リリィ。アメリア様の足跡を追いなさい』
お婆ちゃんの言っていた言葉の通り、私もお姉ちゃんと同じ様に、お姉ちゃんの歩いた道の上を歩く。
「あの! 申し訳ございません! 聖女様ですよね? 噂は聞いておりました。旅をしながら病や怪我で苦しむ人を癒して下さる方が居ると」
「えと、はい。多分そうです」
「不躾なお願いを申し訳ございません! どうかそのお力をこの子にも分けて下さいませんか? お金は持っていないのですが、私に出来る事でしたら、なんでも」
「大丈夫です」
私は笑う。
鏡の前で散々練習した完璧なお姉ちゃんの笑顔を浮かべながら、赤い顔をした赤ちゃんを抱えるお母さんに言葉を向ける。
もう何も怖い事は無いのだと。
「っ! アメ、リア」
リアムさんの苦しそうな声を聞きながら、集中して赤ちゃんに手を差し伸べた。
そして、力を使い赤ちゃんの顔色が良くなるまで癒しの力を使うのだった。
「っ! あぁ! あぁ! ありがとうございます!! ありがとうございます!! なんとお礼を言ったら良いか」
「いえ。何も要りませんよ。私は何も」
私は少しふらつく頭で、微笑みかけた。
「聖女様!」
「聖女様だ。聖女アメリア様だ!」
慣れない力は少しばかり負担だが、期待の目を向けられてはそれに応えない訳にはいかない。
怪我人も病人も多く居るのだ。
お姉ちゃんなら、きっと自分よりも周囲を優先しただろう!!
「……おい」
「大丈夫です。リアムさん。私は大丈夫。お姉ちゃんならこんな所で諦めなかった。そうでしょう?」
「……お前」
「私はお姉ちゃんに憧れた。お姉ちゃんに近づく事が私の夢なんです。だから、大丈夫」
ふらついた体を支えてくれたリアムさんが、心配そうに声を掛けてくれたが、私はそれを制して笑う。
お姉ちゃんなら、見捨てない。
意識を失うまでは。
「大丈夫です」
「……分かった」
そしてリアムさんは私の言葉に目を閉じた後、静かに頷いた。
「ありがとうございます」
それから。結局その場にいた人を全員癒し、私は限界を超えてリアムさんの腕の中に倒れてしまった。
周りの人たちはこの世の終わりかとでも言うような心配そうな声を出すが、私は何とか意識を保って笑う。
「少し疲れただけなので、心配しないで下さい。リアムさん。少しだけ、眠っても、大丈夫でしょうか?」
「あぁ。ゆっくり休め」
「あり、がとう……ございます」
私は大きな満足感と共に、意識を失いそのままリアムさんに運ばれてゆくのだった。
そんなこんなで町の中へ入り、夜もすっかり遅くなった時間に私はふと何かの音で目を覚ました。
窓に何かが当たる様な音だ。
「……んん? なんだろう」
眠い目を擦りながら目を覚まし、多分宿屋のベッドだと思われる場所から立ち上がり、僅かに揺れている窓へと向かう。
どうやら外から小石の様な物が当たっているようだ。
嫌がらせだろうか。
お姉ちゃんに嫌がらせをするとはとんでもない奴だ。
捕まえて説教してやる。
そんな風に思いながら私は窓を開けて、直後飛んできた石が額に当たり、声を上げた。
「あいたっ!?」
「っ!? しまった! 聖女様!」
「いたたたたた」
思っていたよりも額に強い痛みを感じていた私は、額を抑えながら床に膝を付き、痛みを散らそうと癒しの力を使おうとしたが、上手くいかない。
しょうがないので、水の魔術を使って額を冷やすのだった。
「聖女様! 大丈夫ですか!?」
そして涙目になりながら額を癒していた私は、窓の外から部屋の中に突っ込んでくる少年に目を向ける。
いかにも町のヤンチャ小僧という様な風貌だ。
イラっとした気持ちがムクムクと湧き上がるが、私は何とかそれを抑え、大きく息を吐いてからお姉ちゃんの笑顔を浮かべる。
「私は大丈夫ですよ」
「よ、良かった。ごめんなさい! 聖女様。俺、どうしても妹の事でお礼が言いたくて……」
「あぁ、それで私を呼んでいたのですね」
窓に当たっていた小石は私を呼び出す為だったようだ。
まったくしょうがない小僧である。
呼ぶなら扉から来いという話だ。
「聖女様……」
「そんな顔をしないで下さい。私は怒ってませんよ。妹さんはあれからどうですか?」
「はい! すっかり元気になりました!」
「それは良かった。その事が聞けただけで私は嬉しいです。ありがとうございます」
「っ! 聖女様! 俺、俺も、ありがとうございました!! 俺、聖女様に言われた通りに、困っている人が居たら、手伝ってます!」
「それは素晴らしいですね。ありがとうございます」
「はい!」
それから私は夜遅くまで少年……いや、ルカと話をするのだった。
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私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
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