私の心臓をつかむあなたの手が冷たくも温かい~収穫祭~

秦江湖

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千尋からの相談・一華

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昼食を終えると千尋は紅茶をいれてくれた。

「そういえばどうだった?村重君と美術館に行って」

「そのことでちょっと相談があるんだけど」

千尋は改まった風に言った。

「なにかしら?」

「村重先生のことなんだけど」

「ああ、村重君ね。彼がどうかした?」


千尋が言うには、この前美術館に二人で行った帰りに告白されデートに誘われたそうだ。

「いい話しじゃない」

「でもなんだか悪い気がして」

「どっち?明さん?村重君?」


「両方。村重先生の好意は嬉しいけど、私は結婚しているし、今の生活に不満はないから……だから村重先生とはお付き合いできるわけないの」

「そう?良いじゃない。良いとこ取りすれば」

「もう。簡単に言わないでよ」


千尋は困った風に眉根を寄せながら笑った。

「仮に付き合っても村重先生にとっては時間の無駄でしかないもの」

「無駄かどうかなんてわからないわ。それは村重君が決めることよ。もういい大人なんだし」

「それが繁殖の機会を逃すことがわからないなんて、ちょっと思慮が足りないと思うの」

「繁殖?」


「人間の性的欲求や興奮の根源は繁殖でしょ。私と一緒にいても無理なんだから」

千尋はセックスをこんなふうに考えていたのか。

これは進化心理学のような考え方だ。

聞いたことはあるが、私としてはにわかに首肯しかねる考え方だ。


「そんな。前にも言ったけど、恋も性も楽しむもの。娯楽よ。娯楽はたしかに無駄だけど、でも人生には無駄じゃないの」

「それはそうかもしれないけど」

「それとも歳下は好みじゃない?」

「そういう問題じゃあ」

「彼といてときめかなかった? 」

「新鮮な気分にはなったかな……」

「なら、このまま楽しんじゃえばいいのよ。明さんに悪いって言うのも背徳感がスパイスになって盛り上がるんじゃない?」

「なんか慣れた言い方は嫌だな」

「千尋も慣れちゃえばいいの。これから」


どうにも千尋は煮え切らない感じだ。

村重の方から強引にいかせるようにしようか考えた。


「もったいないよ。若い方から寄ってくるなんて、これからどんどんなくなるんだから」

「そうだけどさあ……でもねえ……」


大人になった千尋はこんなにもモラルに縛られる人間になったのか?

それとも昔から恋愛にはそういう価値観なのか?

なにしろ、千尋とこういう話をするのは初めてだった。

最初からこうなのか?今までの過程でそうなったのか?


まあいい。

多少強引にやられた方が吹っ切れるだろう。

村重には強引でもいいからさっさと関係を結ぶように言おう。


「そういえば一華はルイ君とどうやって出会ったの?」

ふいに千尋が聞いてきた。

「どうしたの?急に」

「純粋に興味があるの。どうやって出会ったのかなって」



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