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滝川再訪・千尋
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盗聴器と白紙の手紙の件。一華はああ言ったけど、明さんには相談しにくいものがあった。
余計な心配はかけたくないという気持ちがある。
一華が帰った後にしばらく考えてから、ある人物に相談することにした。
財布の中から以前もらった名刺を取り出して見る。
「警視庁捜査一課 警部補 滝川隆一」名刺にある名前を声に出して読んでみた。
あの刑事をもう一度見て見たい――
翌日の午前中に裏にある手書きの電話番号に電話してみるとも留守電につながった。
私は名前と、相談したいことがあるので、できれば夕方くらいまでに時間があれば連絡が欲しいと吹き込んだ。
我ながら図々しいとは思ったが、明さんには聞かれたくないという思いが強かった。
昼になろうかというときにスマホに着信が来た。滝川さんからだ。
「滝川です。メッセージを聞きました」
「滝川さん。良かった……今は大丈夫ですか?」
「はい。どうかされましたか?」
「あのう……以前、智花が行方不明になったときに茉莉や紅音が行方不明になる前に、どちらかがストーカー被害にあっていると言っていたことを思い出しまして……」
私は盗聴器と白紙の手紙について話した。
滝川はそれを聞くと、一二時間でこちらに来ると言ってくれた。
滝川が家に来てくれたのは三時くらいだった。
以前一緒にいた佐山という刑事も一緒だ。
二人をリビングに通すと、盗聴器と白紙の手紙と封筒をテーブルに置いた。
「これは?」
「盗聴器は知らない間にバッグの中に入っていました……手紙の方はこの封筒の中に入っていて、最近になってまたポストに入っていたのです」
「最近?いぜんにもあったのですか?」
「はい。初めてお会いしたときに相談したいことがあると言ったのはこのことです。以前からこうした手紙が投函されていたので」
「前のものもありますか?」
「その頃は質の悪い悪戯だろうと思って捨ててしまって……すみません」
「いえ。そんな謝ることではありません」
「なんとなく気持ち悪いなと思っていたんですが、また投函されるようになって、盗聴器まで…… しかも連続失踪事件が起きてから智花があんなことになり、怖くなってきて」
「お察しします。ちょっと拝見してよろしいでしょうか?」
「お願いします」
私が頭を下げると、滝川さんと佐山刑事は両手に白い手袋をはめて手紙と封筒を交互に手に取った。
「消印がありませんね」
「直接投函されたんだろうな」
「手紙にはなにも書かれていない。これはどういうことなんでしょう?」
佐山刑事が天井の明かりに手紙をすかしながら言う。
「わからん。もしかしたら特殊な方法で見れるように書いてあるのかもしれないな」
「炙り出しのような?」
「まあそういうことだ」
二人が手紙と封筒を見ながら話しているのを黙って聞いていた。
次に二人は盗聴器を手に取り見る。
「こんな薄型の盗聴器があるんですね」
「ああ。これは入手するのは容易なのかな?」
滝川さんがスマホで検索すると何件も画像が出てきた。
「これですよ」
佐山刑事が画面を指さす。
「通販で買えるのか」
滝川さんが呆れたように言った。
この盗聴器はどうやら通販で買えるもの。
つまり誰にでも簡単に手に入るもののようだ。
盗聴器をテーブルに置くと、滝川さんは私に向き直って聞いてきた。
「橋本さん。最近……もっと前でもいいですが、なにか心当たりがあるようなことはありますか?もっと前で言うなら、この手紙が来るようになった少し前に交流するようになった人物とか」
どうもこの前に感じた、鋭さのようなものを今日は感じない。
隠しているのか?
「さあ…… そういう出会いは記憶にありません…… 私みたいな専業主婦の人間関係はたかが知れていますから」
「なんでもいいんですけど」
佐山刑事が申し訳なさそうに聞いてくる。
私は再度思い出してみたが、心当たりのあるようなことは思い出せなかった。
「では、この盗聴器に気がついたころはどうです?盗聴器はバッグから見つかったとおっしゃいましたよね。そのバッグは頻繁に持ち歩いているものですか?」
「ええ。お気に入りでたいていは持ち歩いています」
「そういうバッグなら中身を見ることも多いでしょうから、盗聴器の方は気がつかれたとき、あおの少し前にバッグに入れられたと見るのが妥当でしょう。最近新しく交流するようになった人物、あるいは生活サイクルが変わったということはありますか?」
「それでしたら、最近はアートスクールに通うようになりました。そこで友達も新しくできたり」
「アートスクール?」
「はい。彫刻を習ったり。そうそう!そこのスクールは一華が開いているんです」
「一華というと、小川一華さんですか?」
「そうです」
私はそこでできた友人、下島さんと斉藤さんのことも話した。
そして浩平君のことも。
もちろんデートに誘われたとかそういうことは言っていない。
一華の勧めで二人で美術館に勉強しに行ったことや、スクール内ではわりと話すということを言った。
そして一華のこと。一華も最近交流するようになったといえばその通りだからだ。
滝川は私が話すことをメモしていた。
「あと、最近になって知り合ったといえば滝川さんと佐山さんもそうですね」
私が笑顔で言うと「なるほど。言われてみれば」と納得するような素振りを見せた。
「それから小野寺さんという刑事さんも」
「小野寺さんが?」
「滝川さんご存知でしたの?小野寺さんは所轄の刑事さんで、滝川さんとは接点がないと思いますけど」
私が首をかしげて言うと佐山刑事が「今回の事件で、捜査本部が目白署に立ったんですよ。小野寺さんはそこの一員ですから」と、言った。
「おい!」
「あっ……すみません」
滝川さんに鋭く言われ、佐山刑事が謝る。
「あのう……なにか?私が知ってはいけないことでしたか?」
「いえ。橋本さんが困るようなことはありませんよ。ただ、事件捜査にどういう刑事がかかわっているか、それを部外者に漏らすのは良いことではありませんので」
「そうですよね。でも私、知ってしまいましたし」
「ここだけの話にしておいてください」
「はい。滝川さんがそうおっしゃるのなら」
そうだ。良い機会だから話しておこう。小野寺のことを。
余計な心配はかけたくないという気持ちがある。
一華が帰った後にしばらく考えてから、ある人物に相談することにした。
財布の中から以前もらった名刺を取り出して見る。
「警視庁捜査一課 警部補 滝川隆一」名刺にある名前を声に出して読んでみた。
あの刑事をもう一度見て見たい――
翌日の午前中に裏にある手書きの電話番号に電話してみるとも留守電につながった。
私は名前と、相談したいことがあるので、できれば夕方くらいまでに時間があれば連絡が欲しいと吹き込んだ。
我ながら図々しいとは思ったが、明さんには聞かれたくないという思いが強かった。
昼になろうかというときにスマホに着信が来た。滝川さんからだ。
「滝川です。メッセージを聞きました」
「滝川さん。良かった……今は大丈夫ですか?」
「はい。どうかされましたか?」
「あのう……以前、智花が行方不明になったときに茉莉や紅音が行方不明になる前に、どちらかがストーカー被害にあっていると言っていたことを思い出しまして……」
私は盗聴器と白紙の手紙について話した。
滝川はそれを聞くと、一二時間でこちらに来ると言ってくれた。
滝川が家に来てくれたのは三時くらいだった。
以前一緒にいた佐山という刑事も一緒だ。
二人をリビングに通すと、盗聴器と白紙の手紙と封筒をテーブルに置いた。
「これは?」
「盗聴器は知らない間にバッグの中に入っていました……手紙の方はこの封筒の中に入っていて、最近になってまたポストに入っていたのです」
「最近?いぜんにもあったのですか?」
「はい。初めてお会いしたときに相談したいことがあると言ったのはこのことです。以前からこうした手紙が投函されていたので」
「前のものもありますか?」
「その頃は質の悪い悪戯だろうと思って捨ててしまって……すみません」
「いえ。そんな謝ることではありません」
「なんとなく気持ち悪いなと思っていたんですが、また投函されるようになって、盗聴器まで…… しかも連続失踪事件が起きてから智花があんなことになり、怖くなってきて」
「お察しします。ちょっと拝見してよろしいでしょうか?」
「お願いします」
私が頭を下げると、滝川さんと佐山刑事は両手に白い手袋をはめて手紙と封筒を交互に手に取った。
「消印がありませんね」
「直接投函されたんだろうな」
「手紙にはなにも書かれていない。これはどういうことなんでしょう?」
佐山刑事が天井の明かりに手紙をすかしながら言う。
「わからん。もしかしたら特殊な方法で見れるように書いてあるのかもしれないな」
「炙り出しのような?」
「まあそういうことだ」
二人が手紙と封筒を見ながら話しているのを黙って聞いていた。
次に二人は盗聴器を手に取り見る。
「こんな薄型の盗聴器があるんですね」
「ああ。これは入手するのは容易なのかな?」
滝川さんがスマホで検索すると何件も画像が出てきた。
「これですよ」
佐山刑事が画面を指さす。
「通販で買えるのか」
滝川さんが呆れたように言った。
この盗聴器はどうやら通販で買えるもの。
つまり誰にでも簡単に手に入るもののようだ。
盗聴器をテーブルに置くと、滝川さんは私に向き直って聞いてきた。
「橋本さん。最近……もっと前でもいいですが、なにか心当たりがあるようなことはありますか?もっと前で言うなら、この手紙が来るようになった少し前に交流するようになった人物とか」
どうもこの前に感じた、鋭さのようなものを今日は感じない。
隠しているのか?
「さあ…… そういう出会いは記憶にありません…… 私みたいな専業主婦の人間関係はたかが知れていますから」
「なんでもいいんですけど」
佐山刑事が申し訳なさそうに聞いてくる。
私は再度思い出してみたが、心当たりのあるようなことは思い出せなかった。
「では、この盗聴器に気がついたころはどうです?盗聴器はバッグから見つかったとおっしゃいましたよね。そのバッグは頻繁に持ち歩いているものですか?」
「ええ。お気に入りでたいていは持ち歩いています」
「そういうバッグなら中身を見ることも多いでしょうから、盗聴器の方は気がつかれたとき、あおの少し前にバッグに入れられたと見るのが妥当でしょう。最近新しく交流するようになった人物、あるいは生活サイクルが変わったということはありますか?」
「それでしたら、最近はアートスクールに通うようになりました。そこで友達も新しくできたり」
「アートスクール?」
「はい。彫刻を習ったり。そうそう!そこのスクールは一華が開いているんです」
「一華というと、小川一華さんですか?」
「そうです」
私はそこでできた友人、下島さんと斉藤さんのことも話した。
そして浩平君のことも。
もちろんデートに誘われたとかそういうことは言っていない。
一華の勧めで二人で美術館に勉強しに行ったことや、スクール内ではわりと話すということを言った。
そして一華のこと。一華も最近交流するようになったといえばその通りだからだ。
滝川は私が話すことをメモしていた。
「あと、最近になって知り合ったといえば滝川さんと佐山さんもそうですね」
私が笑顔で言うと「なるほど。言われてみれば」と納得するような素振りを見せた。
「それから小野寺さんという刑事さんも」
「小野寺さんが?」
「滝川さんご存知でしたの?小野寺さんは所轄の刑事さんで、滝川さんとは接点がないと思いますけど」
私が首をかしげて言うと佐山刑事が「今回の事件で、捜査本部が目白署に立ったんですよ。小野寺さんはそこの一員ですから」と、言った。
「おい!」
「あっ……すみません」
滝川さんに鋭く言われ、佐山刑事が謝る。
「あのう……なにか?私が知ってはいけないことでしたか?」
「いえ。橋本さんが困るようなことはありませんよ。ただ、事件捜査にどういう刑事がかかわっているか、それを部外者に漏らすのは良いことではありませんので」
「そうですよね。でも私、知ってしまいましたし」
「ここだけの話にしておいてください」
「はい。滝川さんがそうおっしゃるのなら」
そうだ。良い機会だから話しておこう。小野寺のことを。
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