私の心臓をつかむあなたの手が冷たくも温かい~収穫祭~

秦江湖

文字の大きさ
40 / 75

刑事に抱いた興味・千尋

しおりを挟む
「小野寺さんといえば……」

「小野寺さん、いえ、小野寺がどうかしましたか?」


小野寺の名前を口にした時の滝川さんの顔を見て、彼がなにか小野寺に対して良くないイメージを持っていることがわかった。


「あの方はどういう方なんでしょう?なんだか私の中学時代から高校の話までされて……私の昔のことをいろいろと気にされているみたいですが、それが何か今回の事件と関係あるんでしょうか?」

「いえ、それは」

滝川の表情が一瞬だが険しくなったのを私は見逃さなかった。


「小野寺さんはたしか、一華の母親が自殺したときに担当されていた刑事さんなんですが、そのときも私や一華に対して何度も質問してきました。まるで犯人扱いされてるみたいで怖かったし、非常に不快だったのを覚えています。それが今回のことで自殺の件が終わってからも……こんな言い方は悪いのですが、私や一華のことを嗅ぎまわっていたなんて。もしかして今回のことも私たちを犯人扱いしているんじゃあないですか?」


「いや、橋本さんそれは違います。現段階としてはそうした方向ではありません」

「現段階?じゃあ段階が進めば私のことを?」

「すみません現在捜査がどういう方向でとか、そうした話を第三者に話すことはできないのです」

「さっきの話ですけど、盗聴や変な手紙の心当たりがありました。小野寺さんですよ。私が最近関わった人で小野寺さん以外にこんなことする人はいません。これだって私を疑っているから盗聴しようとしたんじゃないかと思えてきます」


「橋本さん。小野寺が不愉快な思いをさせたことは私から謝罪します。本当に申し訳ございませんでした」

滝川さんが頭を下げると、隣にいた佐山も倣って「すみませんでした」と、頭を下げた。

「そんな。滝川さんたちが謝ることじゃありませんよ。顔を上げてください」


「橋本さん。我々の仕事というものはなんでも疑ってかかるものです。そんなことは橋本さんに関係ないのは承知しています。ですが小野寺も悪意があってのことではないと思います。少なくともこういう盗聴だとか手紙といったことは彼の仕業ではないと私は思っています」

「随分と信頼されているんですね」

「はい」

「なんでも疑ってみるのがお仕事なのだから、御同僚に対しても疑惑の目を向けた方が良いですよ」

私は意地の悪いことを言った。


「なるほど。仰る通りですね。ご忠告ありがとうございます」

滝川は真顔、私に礼を言った。


滝川たちは盗聴器と封筒、手紙を事件とかかわりがあるかはわからないが、とりあえず預かってよいかと聞いてきた。

私としては断る理由もないので了承した。


「事件でお忙しいところに今日はありがとうございました」

玄関まで見送った際に深々と頭を下げた。

「いえ。お気になさらないでください」

「ところで滝川さん。もしもまた小野寺さんが来たらどうしたら良いですか?」


それを聞くと、滝川は、一寸考えるような表情を見せてから「お気持ちは察しますが、質問には答えてやってください。その上でまたご不快な思いをされたら私に教えてください」と、言った。


「わかりました。どうかお仕事頑張ってくださいね。一日も早い事件の解決を願っていますから」

「ありがとうございます。精一杯励みます。それから最寄りの交番には巡回を強化するように伝えておきます」




滝川たちが帰った後、キッチンで夕食の準備をしながら、さっきまでのことを考える。

小野寺のことはあれでいい。

十分な牽制になっただろう。

それにしても滝川は、この前家に来たときとは随分違った。

そのことも興味が湧いた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

せんせいとおばさん

悠生ゆう
恋愛
創作百合 樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。 ※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。

妻への最後の手紙

中七七三
ライト文芸
生きることに疲れた夫が妻へ送った最後の手紙の話。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

処理中です...