67 / 75
騎士の暴走
しおりを挟む
個展も落ち着き、しばらくはゆっくり過ごせそうと思い、遅めの朝を迎えた。
千尋が家を出たことは彼女のSNSから知った。
当然場所も把握している。
千尋からのLINEにはあえて返信しなかった。
私は千尋からなにもかも奪うと宣言したが、果歩と愛を殺したのも私だと気がついているだろうか?あの事件と私を結びつけるものはなにもない。
そして気がついたところで証拠は皆無だ。
リビングに行くとテレビを点けて、ソファーに腰掛けた。
「おはよう一華」
キッチンからルイが顔を出す。
「おはよう。早いのね」
「早いって、もう昼前だよ」
「ちょっと寝すぎたみたいね。何かお願いしていい?」
「ああ。適当に作るよ」
髪をかき上げて眠気を追い払うように頭をふった。
ニュースでは連続殺人事件について報道していた。
「毎日これだな。そのくせ警察はまったく俺たちに迫れない」
ルイが楽しげに言う。
状況は完全に私の描いていた通りの展開になっていた。
それももうすぐ終わると思うと、大きな作品を作っているような感覚になる。
「もうすぐできるから」
そう言ってルイが水を持ってきた。
「ありがとう」と、グラスを受け取ろうとしたときにテレビ画面に目が釘付けになった。
連続殺人事件の新たな被害者と目される女性の名前と写真が映っている。
「由利……うそでしょう……」
体中から力が抜けた私は、グラスを手から滑り落した。
「一華!一華!」
ルイが私の肩を抱く。
その手には力がこもり、わなわなと震えていた。
「ふざけるな。俺たちの犯罪じゃないぞ。誰が由利を」
無理もない。私のために何度か日本に先行していたルイをサポートしていたのは由利だった。
由利はルイにとって私以外に唯一心が許せる相手になった。
「まさかあの女が?」
「千尋は私たちと由利のことに気がついていないはずよ」
中学時代から今まで由利との交際は誰にも話していない。由利も話していないと言っていた。
あの小野寺ですら私たちの関係には気がつかなかった。
そんなことより由利。由利が死んでしまうなんて。
由利のことを思ったとき、悲しみが一瞬で私の中から溢れ出た。
悲鳴を上げた私は崩れ落ち、取り乱し、泣き崩れた。
立つことのできない私を、寝室へ連れて行こうとするルイの手を振り払って泣き続けた。
いつの間にか寝ていたようで、目が覚めたときはベッドの中だった。
自分でここまで来たのか、ルイに運んでもらったのか記憶にない。
目を開けた私は体を起こす気力すらなかった。
由利とのことを思い出す。
由利は最後まで私の計画には反対だった。例え警察に捕まらなくても人を殺したという罪は自分が生きている限り自分の中にある。
そう言って私を説得し続けていたが、私の意思が固いと知ると協力を惜しまなかった。
それが少しでも罪の意識を私だけに背負わせまいとする気持ちからのことは痛いほど伝わった。
例えそれが、私をいじめたことへの贖罪から生まれたものでも、私にとっては世界で唯一つの、歪みなど一切ない純粋な友情であり愛情だった。
私の中は千尋しかないと思っていたけど、こんなにも由利の存在が大きかったとは。
砂漠の中にあるたった一つの泉の価値はかけがえのないものだった。
千尋が家を出たことは彼女のSNSから知った。
当然場所も把握している。
千尋からのLINEにはあえて返信しなかった。
私は千尋からなにもかも奪うと宣言したが、果歩と愛を殺したのも私だと気がついているだろうか?あの事件と私を結びつけるものはなにもない。
そして気がついたところで証拠は皆無だ。
リビングに行くとテレビを点けて、ソファーに腰掛けた。
「おはよう一華」
キッチンからルイが顔を出す。
「おはよう。早いのね」
「早いって、もう昼前だよ」
「ちょっと寝すぎたみたいね。何かお願いしていい?」
「ああ。適当に作るよ」
髪をかき上げて眠気を追い払うように頭をふった。
ニュースでは連続殺人事件について報道していた。
「毎日これだな。そのくせ警察はまったく俺たちに迫れない」
ルイが楽しげに言う。
状況は完全に私の描いていた通りの展開になっていた。
それももうすぐ終わると思うと、大きな作品を作っているような感覚になる。
「もうすぐできるから」
そう言ってルイが水を持ってきた。
「ありがとう」と、グラスを受け取ろうとしたときにテレビ画面に目が釘付けになった。
連続殺人事件の新たな被害者と目される女性の名前と写真が映っている。
「由利……うそでしょう……」
体中から力が抜けた私は、グラスを手から滑り落した。
「一華!一華!」
ルイが私の肩を抱く。
その手には力がこもり、わなわなと震えていた。
「ふざけるな。俺たちの犯罪じゃないぞ。誰が由利を」
無理もない。私のために何度か日本に先行していたルイをサポートしていたのは由利だった。
由利はルイにとって私以外に唯一心が許せる相手になった。
「まさかあの女が?」
「千尋は私たちと由利のことに気がついていないはずよ」
中学時代から今まで由利との交際は誰にも話していない。由利も話していないと言っていた。
あの小野寺ですら私たちの関係には気がつかなかった。
そんなことより由利。由利が死んでしまうなんて。
由利のことを思ったとき、悲しみが一瞬で私の中から溢れ出た。
悲鳴を上げた私は崩れ落ち、取り乱し、泣き崩れた。
立つことのできない私を、寝室へ連れて行こうとするルイの手を振り払って泣き続けた。
いつの間にか寝ていたようで、目が覚めたときはベッドの中だった。
自分でここまで来たのか、ルイに運んでもらったのか記憶にない。
目を開けた私は体を起こす気力すらなかった。
由利とのことを思い出す。
由利は最後まで私の計画には反対だった。例え警察に捕まらなくても人を殺したという罪は自分が生きている限り自分の中にある。
そう言って私を説得し続けていたが、私の意思が固いと知ると協力を惜しまなかった。
それが少しでも罪の意識を私だけに背負わせまいとする気持ちからのことは痛いほど伝わった。
例えそれが、私をいじめたことへの贖罪から生まれたものでも、私にとっては世界で唯一つの、歪みなど一切ない純粋な友情であり愛情だった。
私の中は千尋しかないと思っていたけど、こんなにも由利の存在が大きかったとは。
砂漠の中にあるたった一つの泉の価値はかけがえのないものだった。
0
あなたにおすすめの小説
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる