処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!

秦江湖

文字の大きさ
22 / 30

イザベラの暗躍

しおりを挟む
イザベラの焦り


皇宮の一室。イザベラは、アランが叩きつけた花瓶の破片を、震えながら見つめていた。

「あの女! あの女! 俺の計画を!」

アランは、塩の専売制の失敗により、貴族たちからの信用を失い、荒れ狂っていた。

「……アラン様、お気を鎮めて……」

イザベラが恐る恐るアランの背中に触れようとすると、アランはその手を荒々しく振り払った。

「触るな! エリアーナめ、あんな『知識』、どこで手に入れた……!」

アランの口から出た「エリアーナ」の名前に、イザベラの心臓が冷たく凍りつく。

(エリアーナ、エリアーナ、エリアーナ……!)

(アラン様は、まだ、あの女のことばかり!)

イザベラは、エリアーナに全てを奪われたと思っていた。

没落貴族の娘だった自分は、エリアーナの「親友」という名の「侍女」として、彼女の輝きの影で生きてきた。アラン様(皇太子)に見初められ、やっとあの日陰の生活から抜け出し、皇宮に入った。

夜会で、エリアーナに「権力に走った悪女」のレッテルを貼り、自分こそが「被害者」だとアピールした。

それなのに。

エリアーナは、アラン様の経済政策を打ち破り、民衆の一部からは「安価な塩を流した聖女」とまで呼ばれ始めている。

「……許せない」

イザベラは、小さく呟いた。

(私が、アラン様の隣にいるのに。私が、アラン様を支えているのに)

(あの女が、私からまた光を奪う)

イザベラのエリアーナに対する憎悪が、再び燃え上がった。


※※※※※※※※※※※※※※※※


イザベラの策略


イザベラは、アランが自分に振り向かない理由を考えた。

(そうだわ……アラン様は、エリアーナ様の『知識』……あの『情報力』を恐れているんだわ)

(なら、あの女の手足を奪ってしまえばいい)

イザベラは、エリアーナの側近、特にリステン家に残っている者たちに目をつけた。

(エリアーナ様は、北に行った。でも、情報の多くは、まだ帝都のリステン家から流れているはず)


(私が今まで見てきたエリアーナ様は、人を信じすぎる方だった…… 今は?今は?)

(そうだ!あの侍女……アンナ!)

イザベラは、エリアーナが幼い頃から信頼している、あの侍女のことを思い出した。

(アンナは、エリアーナ様が北に行かれた後も、リステン家の屋敷に残って、旦那様(リステン侯爵)の補佐をしているはず。きっとアンナから情報を仕入れているはず)

(あの女を、『エリアーナのスパイ』としてではなく、『北の公爵(ルシアン)のスパイ』として陥れれば……)

(リステン侯爵とエリアーナ様の信頼関係を、引き裂けるかもしれない)

イザベラの頭の中で、陰湿な策略が組み上がり始めた。


※※※※※※※※※※※※※※※※


アンナへの罠


イザベラは、アランには「アラン様、お可哀想ですわ。きっと、リステン侯爵様も、娘(エリアーナ)に騙されているのです。私が、侯爵様の目を覚まさせて差し上げます」と涙ながらに訴え、自由に行動する許可を得た。

イザベラは、アランの側近であるバートン伯爵(塩の件でエリアーナに大損させられた)に接触した。

「伯爵様。貴方も、エリアーナ様に煮え湯を飲まされましたわね」

「……イザベラ様。何が仰りたい」

「エリアーナ様の情報源は、リステン家の屋敷にいる、古参の侍女です。あの侍女、アンナが、リステン家の情報を北に流しているのです」

「……侍女、だと?」

「ええ。ですが、あの女、どうやら北の公爵とも直接繋がっているようで……リステン侯爵様を裏切り、リステン家の財産を北に横流ししている、という『証拠』が、もし見つかったら……」

バートン伯爵は、イザベラの意図を即座に理解した。

「……なるほど。エリアーナのスパイではなく、リステン侯爵への『裏切り者』としてアンナを処断すれば、リステン家とヴァレリウス家の間に、楔を打ち込める、と」

「ご明察ですわ」

イザベラは、「横領の偽の証拠」の作り方を、バートン伯爵にそっと教えた。

「アンナの部屋に、北の公爵の紋章が入った金貨と、リステン家の機密書類を隠し、それを『偶然』見つけるのです」


※※※※※※※※※※※※※※※※


迫る危機


バートン伯爵は、イザベラの陰湿な計画に感心しながらも、リステン家を混乱させる絶好の機会だと捉え、すぐに実行に移すことを決めた。

リステン侯爵は、まだアラン皇太子への臣下の礼を失ってはいない。 

アランの側近であるバートン伯爵が「リステン家内部に、北の公爵と通じた裏切り者がいる」という情報を掴み、「捜査」を申し出れば、リステン侯爵は拒否できない。

イザベラの策略は、リステン侯爵家と、エリアーナの忠実な侍女アンナを、同時に陥れる罠だった。



数日後、バートン伯爵率いる皇太子の近衛兵が、「リステン侯爵家内のスパイ捜査」という名目で、リステン家の屋敷の門を叩くことになる。

エリアーナの知らないところで、1周目と同じ「裏切り」の罠が、彼女の大切な人々に迫っていた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

《完結》金貨5000枚で売られた王太子妃

ぜらちん黒糖
恋愛
​「愛している。必ず迎えに行くから待っていてくれ」 ​甘い言葉を信じて、隣国へ「人質」となった王太子妃イザベラ。 旅立ちの前の晩、二人は愛し合い、イザベラのお腹には新しい命が宿った。すぐに夫に知らせた イザベラだったが、夫から届いた返信は、信じられない内容だった。 「それは本当に私の子供なのか?」

もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません~死に戻った嫌われ令嬢は幸せになりたい~

桜百合
恋愛
旧題:もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません〜死に戻りの人生は別の誰かと〜 ★第18回恋愛小説大賞で大賞を受賞しました。応援・投票してくださり、本当にありがとうございました! 10/24にレジーナブックス様より書籍が発売されました。 現在コミカライズも進行中です。 「もしも人生をやり直せるのなら……もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません」 コルドー公爵夫妻であるフローラとエドガーは、大恋愛の末に結ばれた相思相愛の二人であった。 しかしナターシャという子爵令嬢が現れた途端にエドガーは彼女を愛人として迎え、フローラの方には見向きもしなくなってしまう。 愛を失った人生を悲観したフローラは、ナターシャに毒を飲ませようとするが、逆に自分が毒を盛られて命を落とすことに。 だが死んだはずのフローラが目を覚ますとそこは実家の侯爵家。 どうやらエドガーと知り合う前に死に戻ったらしい。 もう二度とあのような辛い思いはしたくないフローラは、一度目の人生の失敗を生かしてエドガーとの結婚を避けようとする。 ※完結したので感想欄を開けてます(お返事はゆっくりになるかもです…!) 独自の世界観ですので、設定など大目に見ていただけると助かります。 ※誤字脱字報告もありがとうございます! こちらでまとめてのお礼とさせていただきます。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

婚約なんてするんじゃなかったが口癖の貴方なんて要りませんわ

神々廻
恋愛
「天使様...?」 初対面の時の婚約者様からは『天使様』などと言われた事もあった 「なんでお前はそんなに可愛げが無いんだろうな。昔のお前は可愛かったのに。そんなに細いから肉付きが悪く、頬も薄い。まぁ、お前が太ったらそれこそ醜すぎるがな。あーあ、婚約なんて結ぶんじゃなかった」 そうですか、なら婚約破棄しましょう。

私を婚約破棄した国王が処刑されたら、新しい国王の妃になれですって? 喜んで…と言うとでも?

あんど もあ
ファンタジー
幼い頃から王子の婚約者だったアイリスは、他の女性を好きになった王子によって冤罪をかけられて、田舎で平民として生きる事に。 面倒な貴族社会から解放されて、田舎暮らしを満喫しているアイリス。 一方、貴族たちの信頼を失った王子は、国王に即位すると隣国に戦争を仕掛けて敗北。処刑される。 隣国は、アイリスを新しい国王の妃にと言い出すが、それには思惑があって…。

婚約破棄を申し入れたのは、父です ― 王子様、あなたの企みはお見通しです!

みかぼう。
恋愛
公爵令嬢クラリッサ・エインズワースは、王太子ルーファスの婚約者。 幼い日に「共に国を守ろう」と誓い合ったはずの彼は、 いま、別の令嬢マリアンヌに微笑んでいた。 そして――年末の舞踏会の夜。 「――この婚約、我らエインズワース家の名において、破棄させていただきます!」 エインズワース公爵が力強く宣言した瞬間、 王国の均衡は揺らぎ始める。 誇りを捨てず、誠実を貫く娘。 政の闇に挑む父。 陰謀を暴かんと手を伸ばす宰相の子。 そして――再び立ち上がる若き王女。 ――沈黙は逃げではなく、力の証。 公爵令嬢の誇りが、王国の未来を変える。 ――荘厳で静謐な政略ロマンス。 (本作品は小説家になろうにも掲載中です)

壊れた心はそのままで ~騙したのは貴方?それとも私?~

志波 連
恋愛
バージル王国の公爵令嬢として、優しい両親と兄に慈しまれ美しい淑女に育ったリリア・サザーランドは、貴族女子学園を卒業してすぐに、ジェラルド・パーシモン侯爵令息と結婚した。 政略結婚ではあったものの、二人はお互いを信頼し愛を深めていった。 社交界でも仲睦まじい夫婦として有名だった二人は、マーガレットという娘も授かり、順風満帆な生活を送っていた。 ある日、学生時代の友人と旅行に行った先でリリアは夫が自分でない女性と、夫にそっくりな男の子、そして娘のマーガレットと仲よく食事をしている場面に遭遇する。 ショックを受けて立ち去るリリアと、追いすがるジェラルド。 一緒にいた子供は確かにジェラルドの子供だったが、これには深い事情があるようで……。 リリアの心をなんとか取り戻そうと友人に相談していた時、リリアがバルコニーから転落したという知らせが飛び込んだ。 ジェラルドとマーガレットは、リリアの心を取り戻す決心をする。 そして関係者が頭を寄せ合って、ある破天荒な計画を遂行するのだった。 王家までも巻き込んだその作戦とは……。 他サイトでも掲載中です。 コメントありがとうございます。 タグのコメディに反対意見が多かったので修正しました。 必ず完結させますので、よろしくお願いします。

復讐は、冷やして食すのが一番美味い

Yuito_Maru
ファンタジー
3度目の人生を生きるピオニー・レノドン。 1度目の人生は、愛した幼馴染と家族に裏切られ、無垢で無力のまま命を落とした。 2度目は、剣を磨き、王太子の婚約者となるも、1度目より惨めに死んでいった。 3度目は、微笑の裏で傭兵団を率い、冷たく復讐の刃を研ぐ。 狙うは、レノドン伯爵家、そして王家や腐った貴族たち。 「復讐とは、怒りを凍らせて成就する歪んだ喜びだ」――ピオニーは今、その意味を体現する。 ----- 外部サイトでも掲載を行っております

処理中です...