処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!

秦江湖

文字の大きさ
67 / 72

悪魔王の宣告

しおりを挟む
聖域の破壊と魔王の顕現

空が漆黒の瘴気に覆われた中、私はルシアンに抱きしめられていた。

「ルシアン。彼の狙いは私たちよ」 

「わかっている」

ルシアンは私を庇うように一歩前に出た。

彼の剣が漆黒の空に向かって静かに構えられた。

闇の中、僅かに漏れる日の光が、雲間から巨大な黒い翼をもった影を描き出した。


影は羽ばたきながら、大聖堂の真上へゆっくりと降下し始めた。

見ているだけで、絶望と恐怖が心の奥底から湧き上がってくる。

その威圧感だけで、兵士たちの膝は崩れ落ちた。


影が大聖堂の屋根に降り立った瞬間、轟音と共に神聖な大聖堂の巨大な石造りの構造が真っ二つに裂けた。

建物は悲鳴のような音を立てながら左右に崩れ落ち、巨大な瓦礫と砂埃を巻き上げた。

私たちは爆風に吹き飛ばされ、広場の石畳に叩きつけられた。
耳鳴りがする中、私はルシアンに抱えられたまま視線を向けた。


大聖堂の跡地、崩れ落ちた神像や聖人の像の破片が散乱するその中心に、黒い翼を持つ男が 悠然と立っていた。

悪魔王だ。


**************


悪魔王の宣告と契約不履行

 悪魔王の紅い瞳が私たち二人を見下ろしていた。

「つかの間の幸福は満喫したか?…… 契約の時間だ。エリアーナ」

悪魔王は冷酷に宣告した。

「なっ」

「貴様は私の与えた憎悪の力を使い、復讐を成就させた。にも関わらず、貴様は憎悪を捨て 、愛を選んだ」 

「私が選んだのは愛よ!悪魔王」 

私はルシアンの背中越しに悪魔王を睨んだ。

「愛? それは 契約不履行だ」

悪魔王は嘲笑した 

「代償をもらうぞ。貴様の魂と、貴様の愛する男の魂を代償として頂く」

「馬鹿なことを言うな!」

ルシアンが 怒りの咆哮を上げた。

彼の剣が悪魔王に向けて突き出される。

「貴様が憎悪の供給源を失い、力を失うのが 怖いだけだろう!」 

「鋭いな。北の公爵。だが、貴様ごときでは俺を斬れぬ」


*************


憎悪結界の展開と孤立

ルシアンは悪魔王が物理的な攻撃では倒せない、「概念」に近い存在だと悟った。

剣を振るうも、悪魔王の体躯は空気を切り裂くようにすり抜ける。


「これが 貴様たちの末路だ」 

悪魔王は両手を広げた。

大地から黒い瘴気が噴き出し、帝都全体を巨大な「憎悪の結界」で覆い始めた。

人々は結界の中で、過去の裏切りや個人的な恐怖の記憶を繰り返し見せつけられた。

悪魔王は、邪悪な笑みを見せると、煙のように掻き消えてしまった。


「いやあ!」

「あいつが 悪魔だ!」


民衆は幻影の中で暴れ始め、ルシアンとエリアーナの姿も民衆の目には悪魔王の側近や、契約を結んだ悪魔として歪んで見えた。

「あいつらが 悪魔だ! 聖女様を殺した!」

民衆は瓦礫を拾い、二人に投げつけ始めた。


*************


大神官の助言

やがて民衆は、互いを悪魔と認識し始め、争い始めた。

もはや、彼らの目には、エリア―ナもルシアンも見えない。

自分以外は、全てが恐ろしく禍々しい悪魔に見えている。

帝都中が、互いに殺し合う、殺戮地獄となっていた。


「くっ 。エリアーナ、立てるか」

ルシアンは、エリアーナを庇う。

「大丈夫よ」

エリアーナは 瓦礫の下に大神官が生きていることを確認した。

「大神官様!」

「ルシアン公爵 エリアーナ嬢!」

瓦礫の下から血まみれの大神官が、辛うじて顔を出した。

「奴の力は魂の結界。貴方たちの憎悪こそがその核だ。物理では無理だ」

大神官は苦悶の表情で続けた。

「奴の結界の核は、必ず貴女の最も忌まわしい記憶…… 憎悪の発端にある。魂を分けて奴の領域に潜り込むしかない」 

ルシアンは エリアーナと目を合わせた。

「行くぞエリアーナ。魂の深層へ。覚悟を決めろ」 

「ええ 最後の戦いよ」


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

《完結》初夜をすっぽかされた令嬢は夫を死亡扱いする

さんけい
恋愛
クズ夫の非常識を帳簿で粛々と清算!真実の愛?笑わせるわね! 全14話。

婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~

ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」 義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。 父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。 けれど―― 公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。 王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。 さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。 そして下されたのは――家ごとの褫奪。 一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。 欲しがったのは肩書。 継いだのは責任。 正統は叫びません。 ただ、残るだけ。 これは、婚約を奪われた公爵令嬢が “本当に継がれるべきもの”を証明する物語。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
【3月中ーー完結!!】 私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 二十年の裏切りの果て、その事実だけを抱え、離縁状を置いて家を出た。 そこで待っていたのは、凍てつく絶望――。 けれど同時に、それは残酷な運命の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と縋られても、 死の淵を彷徨った私には、裏切ったあなたを許す力など残っていない。 「でも、子供たちの心だけは、 必ず取り戻す」 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔い、歪な愛でもいいと手を伸ばした彼女が辿り着いた先。 それは、「歪で、完全な幸福」か、それとも――。 これは、"石"に翻弄された者たちの、狂おしい物語。

婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!

山田 バルス
ファンタジー
王宮大広間は春の祝宴で黄金色に輝き、各地の貴族たちの笑い声と音楽で満ちていた。しかしその中心で、空気を切り裂くように響いたのは、第1王子アルベルトの声だった。 「ローゼ・フォン・エルンスト! おまえとの婚約は、今日をもって破棄する!」 周囲の視線が一斉にローゼに注がれ、彼女は凍りついた。「……は?」唇からもれる言葉は震え、理解できないまま広間のざわめきが広がっていく。幼い頃から王子の隣で育ち、未来の王妃として教育を受けてきたローゼ――その誇り高き公爵令嬢が、今まさに公開の場で突き放されたのだ。 アルベルトは勝ち誇る笑みを浮かべ、隣に立つ淡いピンク髪の少女ミーアを差し置き、「おれはこの天使を選ぶ」と宣言した。ミーアは目を潤ませ、か細い声で応じる。取り巻きの貴族たちも次々にローゼの罪を指摘し、アーサーやマッスルといった証人が証言を加えることで、非難の声は広間を震わせた。 ローゼは必死に抗う。「わたしは何もしていない……」だが、王子の視線と群衆の圧力の前に言葉は届かない。アルベルトは公然と彼女を罪人扱いし、地下牢への収監を命じる。近衛兵に両腕を拘束され、引きずられるローゼ。広間には王子を讃える喝采と、哀れむ視線だけが残った。 その孤立無援の絶望の中で、ローゼの胸にかすかな光がともる。それは前世の記憶――ブラック企業で心身をすり減らし、引きこもりとなった過去の記憶だった。地下牢という絶望的な空間が、彼女の心に小さな希望を芽生えさせる。 そして――スキル《引きこもり》が発動する兆しを見せた。絶望の牢獄は、ローゼにとって新たな力を得る場となる。《マイルーム》が呼び出され、誰にも侵入されない自分だけの聖域が生まれる。泣き崩れる心に、未来への決意が灯る。ここから、ローゼの再起と逆転の物語が始まるのだった。

奪う人たちは放っておいて私はお菓子を焼きます

タマ マコト
ファンタジー
伯爵家の次女クラリス・フォン・ブランディエは、姉ヴィオレッタと常に比較され、「控えめでいなさい」と言われ続けて育った。やがて姉の縁談を機に、母ベアトリスの価値観の中では自分が永遠に“引き立て役”でしかないと悟ったクラリスは、父が遺した領都の家を頼りに自ら家を出る。 領都の端でひとり焼き菓子を焼き始めた彼女は、午後の光が差す小さな店『午後の窓』を開く。そこへ、紅茶の香りに異様に敏感な謎の青年が現れる。名も素性も明かさぬまま、ただ菓子の味を静かに言い当てる彼との出会いが、クラリスの新しい人生をゆっくりと動かし始める。 奪い合う世界から離れ、比較されない場所で生きると決めた少女の、静かな再出発の物語。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

『婚約破棄されたので王太子女となります。殿下より上位です』

鷹 綾
恋愛
「君は王太子妃に相応しくない」 その一言で、私は婚約を破棄されました。 理由は“真実の愛”。選ばれたのは、可憐な令嬢。 ……ええ、どうぞご自由に。 私は泣きません。縋りません。 なぜなら——王家は、私を手放せないから。 婚約は解消。 けれど家格、支持、実務能力、そして民の信頼。 失ったのは殿下の隣の席だけ。 代わりに私は、王太子女として王政補佐の任を命じられます。 最初は誰もが疑いました。 若い、女だ、感情的だ、と。 ならば証明しましょう。 怒らず、怯えず、排除せず。 反対も忠誠も受け止めながら、国を揺らさずに保つことを。 派手な革命は起こしません。 大逆転も叫びません。 ただ、静かに積み上げます。 そして気づけば—— “殿下の元婚約者”ではなく、 “揺れない王”と呼ばれるようになるのです。 これは、婚約破棄から始まる静かな逆転譚。 王冠の重みを受け入れた一人の女性が、 国を、そして自分の立場を塗り替えていく物語です。

処理中です...