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本編
3 一日目 昼
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度重なる戦闘と説得に消耗し、深く深く眠った僕は、村のざわめきに目を覚ます。なんだろう、村守役がなにか大きい獲物でも取ってきたのだろうか?
「ふぇ、ふえ、フェリス!あんた!なにしてるね!早く起きんさい!」
「え?お母様、何……」
「何でもいいから早よ!ほら!」
そんな、カンカン鍋を叩かなかったっていいじゃないか!起きたって!
大きい獲物を取れた場合、村中で解体して人数毎に振り分ける。その場に参加していないと、一人分少なくなってしまうのだ。
急いで生活魔法で顔を洗い、素早く教本へ祈りを捧げ、表へと出た。
そこに居たのは、巨大な肉塊――――ではなく、明らかに上等な装備を身につけた、麗しい三人組だった。
この村に外のお客さんが来るなんて、久しぶりだ。それも、とても強そうな冒険者様に見える。
黒髪でガタイの良い、大きな盾を持つ男の人。
赤い髪をくるくると巻き、身長より長い杖を持つ女の人。
それから、銀髪に宝石みたいな碧眼の、ものすごい美形。その背に携えた剣から、目が逸らせない。なんて美しく光り輝いているのだろう。神官様と同じ、神の祝福みたい……。
「君が、フェリスくんか?」
その銀髪の美形から声をかけられた。はっとして見上げると、……どう見ても知らない人だ。それなのに、その男の人はほっとしたようににっこりと微笑んだ。
「私はレオン。勇者パーティーの勇者をやっている。占いに導かれ、ここへやってきたのは……君を神官として、勧誘するためだ。フェリスくん」
「へっ……へっ?ぼ、僕が?」
な、なんで?僕、まだ神官ですらない!ただの村人なのに……?!
レオン様の言葉に、僕の親も村長も皆、困惑していた。なぜ、こんな16歳の子供がと思うだろう。
困惑する僕の視界に、アノンが映った。睨みつけている先が、レオン様なのか僕なのか、よく分からなかった。
目の前に、鮮やかな赤い髪が広がる。一緒にいたお姉さんだ!
「きゃああ~~っ!かわいい!かんわいい!何この子!天使?好き!レオン、絶対に勧誘するわよ!」
「おい、ヴァネッサ、落ち着け……気持ちは分かるが怯えさせるな。すまんな、フェリス。俺はガルフ。こいつはヴァネッサ」
「は、初めまして……」
「声まで超可愛いんだけど。どうしよう。あたくしこの子守る為に頑張っちゃうんだけど」
「だーかーらー落ち着けこの変態」
ガルフ様はヴァネッサ様の耳を引っ張って遠ざかっていった。うわぁ、痛そうだ。
レオン様がその様子を見て肩を竦める。わぁ、そんな仕草まで様になっている。都会の人、すごい。
「見た通り、剣士、盾士、魔術士しかいないんだ。私たちは第三勇者パーティーだから、南方の迷宮踏破を目指していて、ぜひ君にも着いてきて欲しいと思う。もちろんすぐには決められないだろうから、三日間はここに滞在させてもらうつもりだ」
「そうなんですね」
「ちょっと待て。勇者さん」
言われるがままに頷いていた僕の前に、村長が割り込む。つまり、アノンのお父様だ。
「それは困る。フェリスはうちの神官として、既にいないと困る存在なんだ。それも、危険な迷宮踏破に連れていくなんて……許可できない」
「そうだ。フェリスはこんなにか弱い子なんだ。すぐに死んでしまうだろう。そしたらどう責任をとってくれる?!」
村長に被せるようにして、アノンも激昂している。顔を真っ赤にして抗議しているけど……僕は、正直、揺れていた。
着いて行ったら、確実に僕は成長出来る。修道するのを保留していたけど、そんなのメじゃない。神官として『勇者パーティーの神官を務めていました』は、これ以上ない肩書きだ。
けれど……。
アノンは反対している。もしかしたら、いや、確実にまた森へ入ってしまう。
それに両親と、可愛い弟も。村長の反対を押し切って村を出てしまったら、残された家族が村八分になってしまうかもしれない。この村で疎外されれば、すなわち死。そんなことは、絶対に出来ない。
そんな僕の気持ちを察してか、レオン様はごく落ち着いた声色で言う。
「だから私は本人に聞いている。死ぬこともあるかもしれない。怪我をしてどこかが永遠に動かなくなるかもしれない。その覚悟を持って、私たちについてこれるかどうか。これは本人しか判断できない事で、他の誰であっても、親御さんであっても、フェリスくんの意思を妨げることは出来ない。……三日間、世話になるよ」
「……うちに余所者を泊める場所は無い。帰ることだな」
「ふっ、そうか。それなら、フェリスくん、君の家の……」
「まっ、待て!そうはさせるか!親父、うちに泊めよう!フェリスに近付けさせない方がいい」
「……くっ……仕方ない」
「ご厚意に感謝します」
レオン様は白い歯を輝かせて微笑んだ。結構ひどいことを言われているのに、どこ吹く風だ。
……眩しい。
「ふぇ、ふえ、フェリス!あんた!なにしてるね!早く起きんさい!」
「え?お母様、何……」
「何でもいいから早よ!ほら!」
そんな、カンカン鍋を叩かなかったっていいじゃないか!起きたって!
大きい獲物を取れた場合、村中で解体して人数毎に振り分ける。その場に参加していないと、一人分少なくなってしまうのだ。
急いで生活魔法で顔を洗い、素早く教本へ祈りを捧げ、表へと出た。
そこに居たのは、巨大な肉塊――――ではなく、明らかに上等な装備を身につけた、麗しい三人組だった。
この村に外のお客さんが来るなんて、久しぶりだ。それも、とても強そうな冒険者様に見える。
黒髪でガタイの良い、大きな盾を持つ男の人。
赤い髪をくるくると巻き、身長より長い杖を持つ女の人。
それから、銀髪に宝石みたいな碧眼の、ものすごい美形。その背に携えた剣から、目が逸らせない。なんて美しく光り輝いているのだろう。神官様と同じ、神の祝福みたい……。
「君が、フェリスくんか?」
その銀髪の美形から声をかけられた。はっとして見上げると、……どう見ても知らない人だ。それなのに、その男の人はほっとしたようににっこりと微笑んだ。
「私はレオン。勇者パーティーの勇者をやっている。占いに導かれ、ここへやってきたのは……君を神官として、勧誘するためだ。フェリスくん」
「へっ……へっ?ぼ、僕が?」
な、なんで?僕、まだ神官ですらない!ただの村人なのに……?!
レオン様の言葉に、僕の親も村長も皆、困惑していた。なぜ、こんな16歳の子供がと思うだろう。
困惑する僕の視界に、アノンが映った。睨みつけている先が、レオン様なのか僕なのか、よく分からなかった。
目の前に、鮮やかな赤い髪が広がる。一緒にいたお姉さんだ!
「きゃああ~~っ!かわいい!かんわいい!何この子!天使?好き!レオン、絶対に勧誘するわよ!」
「おい、ヴァネッサ、落ち着け……気持ちは分かるが怯えさせるな。すまんな、フェリス。俺はガルフ。こいつはヴァネッサ」
「は、初めまして……」
「声まで超可愛いんだけど。どうしよう。あたくしこの子守る為に頑張っちゃうんだけど」
「だーかーらー落ち着けこの変態」
ガルフ様はヴァネッサ様の耳を引っ張って遠ざかっていった。うわぁ、痛そうだ。
レオン様がその様子を見て肩を竦める。わぁ、そんな仕草まで様になっている。都会の人、すごい。
「見た通り、剣士、盾士、魔術士しかいないんだ。私たちは第三勇者パーティーだから、南方の迷宮踏破を目指していて、ぜひ君にも着いてきて欲しいと思う。もちろんすぐには決められないだろうから、三日間はここに滞在させてもらうつもりだ」
「そうなんですね」
「ちょっと待て。勇者さん」
言われるがままに頷いていた僕の前に、村長が割り込む。つまり、アノンのお父様だ。
「それは困る。フェリスはうちの神官として、既にいないと困る存在なんだ。それも、危険な迷宮踏破に連れていくなんて……許可できない」
「そうだ。フェリスはこんなにか弱い子なんだ。すぐに死んでしまうだろう。そしたらどう責任をとってくれる?!」
村長に被せるようにして、アノンも激昂している。顔を真っ赤にして抗議しているけど……僕は、正直、揺れていた。
着いて行ったら、確実に僕は成長出来る。修道するのを保留していたけど、そんなのメじゃない。神官として『勇者パーティーの神官を務めていました』は、これ以上ない肩書きだ。
けれど……。
アノンは反対している。もしかしたら、いや、確実にまた森へ入ってしまう。
それに両親と、可愛い弟も。村長の反対を押し切って村を出てしまったら、残された家族が村八分になってしまうかもしれない。この村で疎外されれば、すなわち死。そんなことは、絶対に出来ない。
そんな僕の気持ちを察してか、レオン様はごく落ち着いた声色で言う。
「だから私は本人に聞いている。死ぬこともあるかもしれない。怪我をしてどこかが永遠に動かなくなるかもしれない。その覚悟を持って、私たちについてこれるかどうか。これは本人しか判断できない事で、他の誰であっても、親御さんであっても、フェリスくんの意思を妨げることは出来ない。……三日間、世話になるよ」
「……うちに余所者を泊める場所は無い。帰ることだな」
「ふっ、そうか。それなら、フェリスくん、君の家の……」
「まっ、待て!そうはさせるか!親父、うちに泊めよう!フェリスに近付けさせない方がいい」
「……くっ……仕方ない」
「ご厚意に感謝します」
レオン様は白い歯を輝かせて微笑んだ。結構ひどいことを言われているのに、どこ吹く風だ。
……眩しい。
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