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本編
4 一日目 夜
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勇者様パーティーの目的が僕だと知った村人たちは、歓迎どころか煙たがる姿勢を見せていた。
確かに危険な旅路になるから、心配する気持ちになるだろうけど……穿った見方をするなら、余りにも栄誉過ぎてそのまま村へ帰ってこないことを心配しているんじゃないだろうか。生還したとして、高名な神官様は皆都会にいるもの。
村長からすれば、僕はこのままアノンと結婚した方が都合がいい。
悲しい。僕だっていきなりでびっくりしたし、正規の神官でもないから何かの間違えじゃないかと思うけど、心の奥底では喜ぶ気持ちが大きかった。
だって神官様に憧れてからずっと、勉強してきたから。神官になりたくて、その芽もあって、努力もしてきたから、更に高みを目指したいのは当たり前のことだ。だのに、皆んなが反対するなんて。
夕食を口に運ぶ手は、いつもよりさらに遅い。
「……フェリス。行きたいなら、行きな」
「お母様。でも……」
「ふっ、そりゃあ、あんたはあたしが産んだとは思えないくらい出来た子だ。こんな村じゃあんたの才能を生かしきれないって思ってたよ。いい機会じゃないか。あんたも行きたいんだろう?」
「で、でも!僕が行ったら、お母様たち、絶対みんなに責められるよ。生きていけないよ……」
ぽそぽそと齧っていたパンを、机に叩きつけたくなる。この閉鎖的な村で、そんなことは、到底出来ない。
隣に座っていた弟が、僕の震える腕をそっとさすってくれる。
「兄ちゃん、すごいんだよ?うちの兄ちゃん、勇者パーティーに選ばれたんだって自慢出来るんだよ?いいじゃん!」
「そうだぞ。『勇者パーティーの神官を出した村』として観光地になるかもしれないぞ!だから父さんたちを追い出すことも、いじめることも出来ないさ!はっはっはっ、フェリス、気にしないで行ってくるんだ」
「そんな……」
「お前の好きな母さんのレモンパイも、『あの神官も絶賛!』と看板を出せば売れるんじゃないか!?我ながらいい案だ。もしかしたら億万長者になれるかもしれん。な?」
涙が溢れそうになって、ぐっと堪えた。
こんなに僕のことを思ってくれている家族。それなのに、僕は自分のことばっかりで……。
やっぱり、申し訳ない。弟は、僕の分も親の手伝いをしてくれるいい子だ。親も、僕が勉強している間、そうっとして応援してくれる自慢の親。
僕ばかり、いいのだろうか……。
勇者様たちは村長の家に泊まっている。村長の家がこの村の家の中で最も広いからだ。
とはいえ、アノンたちは歓迎していなかったから、ちゃんとご飯は食べられただろうか。毛布や敷物が無くて寒い思いをしていないだろうか。
気になってなかなか眠れないでいると、コンコンコン、と窓にいつもの合図が来た。
「アノン……」
「フェリス」
深夜。肌寒い空気を切るように、アノンは僕の腕を引っ張って納屋の方へと向かった。まさか、こんな日にもあれを要求されるの……!?
「い、いやだよ、アノン……!勇者様たち、アノンを探しにきちゃうよ」
「それは無い。奴らは阿呆面晒して直ぐに寝た。特にレオンってやつのいびきはすごかった」
「それは……」
きっと嘘だ。アノンは嘘をつく時、僕の顔を絶対に見ないから。今も、納屋の方角しか向いていない。
納屋に着くと、直ぐに使用中なのが分かった。扉が閉められている。
少しホッとしたのを誤魔化すようにアノンを伺うと、イライラと地面を蹴り出した。
「クソッ、こんな日に盛りやがって……ジェームズの野郎」
「ジェム兄さんを悪く言わないでよ」
「……フェリス。なあ、お前、行かないよな?……あいつらと、なんか」
アノンはそのまま、防護柵のギリギリ、端の方まで僕を連れていく。
ここは安全の範囲内ではあるけれど、草の背も高いし木も生えて鬱蒼としている。
内緒話にはぴったり。でも、こんな怖い顔をしたアノンとは、正直、一緒にいたくない。
「……だめ、かな……やっぱり……」
「だめに決まってる!俺は、俺は……!フェリスが好きなんだ!絶対に離れないからな……!」
「う……うん……僕も、アノンが大事だよ……」
いつから、こんな惨めな思いを抱えながら、この言葉を言うようになったのだろう。
小さい頃。アノンが輝くような笑顔でお花を持ってきてくれた時は、毎日がきらきらしていたのに。
今では喉元に、小刀を突き付けられているようだ。
「フェリス……っ!」
「えっ、ちょ、なに……っ!?」
アノンが抱きついてきて、僕を木の幹へと押し付ける。ごそごそと腰の紐を解かれ、下衣がすとんと落ちてしまった。
まさか、こんなところで……!?
嫌な予感は的中していた。アノンはハァハァと荒い息を僕の耳へ吹きかけ、くるりと身体を回転させられる。
顔が、ざらざらする幹に当たって痛い。剥き出しになった尻に、ねとりとした熱いペニスが当てられた。
「ひっ、やめ、やめて、アノン……!ひうっ~~」
ぐっ、と体重をかけられて、なすすべもなく入り込んでくるそれ。
何の慣らしもしていない僕のお尻は、火傷したみたいに痛くてたまらない。
「俺が、好きなら、出来るだろっ……!証明、しろ……っ!」
「で、でも!いや、嫌だよ、やめてよっ……う、!」
どんっ!どんっ!と腰を叩きつけられるたび、接合しているところが切れて裂けるのが分かる。
痛いだけじゃなく、悲しかった。
前々から、外で求められることはあった。あったけど、断固として拒否していたのだ。
だってこんな、誰かに見られるかもしれない場所で。ただただ野生の獣のようにまぐわうなんて。
ねぇ、僕は、アノンにとって、大事な人じゃないの……?
泣いて嫌がっても、アノンは僕の腰を離そうとしなかった。
一回放つと滑りが良くなったのか、二回、三回とただただ突き入れられる。
全てが終わった頃、アノンは『ごめん』と一言謝って、家へ帰っていった。
惨めだった。白濁に塗れた下半身を浄化し、たたない足を励まして乱れた服を着直している間、僕はぼんやりしていた。
どうして、アノンはこんなふうになっちゃったのだろう。
僕のせい?僕が、アノンを大事だって、伝えるのが下手な人間だから?
……今日は森に入らなかった分、まだ、良いのかな。
確かに危険な旅路になるから、心配する気持ちになるだろうけど……穿った見方をするなら、余りにも栄誉過ぎてそのまま村へ帰ってこないことを心配しているんじゃないだろうか。生還したとして、高名な神官様は皆都会にいるもの。
村長からすれば、僕はこのままアノンと結婚した方が都合がいい。
悲しい。僕だっていきなりでびっくりしたし、正規の神官でもないから何かの間違えじゃないかと思うけど、心の奥底では喜ぶ気持ちが大きかった。
だって神官様に憧れてからずっと、勉強してきたから。神官になりたくて、その芽もあって、努力もしてきたから、更に高みを目指したいのは当たり前のことだ。だのに、皆んなが反対するなんて。
夕食を口に運ぶ手は、いつもよりさらに遅い。
「……フェリス。行きたいなら、行きな」
「お母様。でも……」
「ふっ、そりゃあ、あんたはあたしが産んだとは思えないくらい出来た子だ。こんな村じゃあんたの才能を生かしきれないって思ってたよ。いい機会じゃないか。あんたも行きたいんだろう?」
「で、でも!僕が行ったら、お母様たち、絶対みんなに責められるよ。生きていけないよ……」
ぽそぽそと齧っていたパンを、机に叩きつけたくなる。この閉鎖的な村で、そんなことは、到底出来ない。
隣に座っていた弟が、僕の震える腕をそっとさすってくれる。
「兄ちゃん、すごいんだよ?うちの兄ちゃん、勇者パーティーに選ばれたんだって自慢出来るんだよ?いいじゃん!」
「そうだぞ。『勇者パーティーの神官を出した村』として観光地になるかもしれないぞ!だから父さんたちを追い出すことも、いじめることも出来ないさ!はっはっはっ、フェリス、気にしないで行ってくるんだ」
「そんな……」
「お前の好きな母さんのレモンパイも、『あの神官も絶賛!』と看板を出せば売れるんじゃないか!?我ながらいい案だ。もしかしたら億万長者になれるかもしれん。な?」
涙が溢れそうになって、ぐっと堪えた。
こんなに僕のことを思ってくれている家族。それなのに、僕は自分のことばっかりで……。
やっぱり、申し訳ない。弟は、僕の分も親の手伝いをしてくれるいい子だ。親も、僕が勉強している間、そうっとして応援してくれる自慢の親。
僕ばかり、いいのだろうか……。
勇者様たちは村長の家に泊まっている。村長の家がこの村の家の中で最も広いからだ。
とはいえ、アノンたちは歓迎していなかったから、ちゃんとご飯は食べられただろうか。毛布や敷物が無くて寒い思いをしていないだろうか。
気になってなかなか眠れないでいると、コンコンコン、と窓にいつもの合図が来た。
「アノン……」
「フェリス」
深夜。肌寒い空気を切るように、アノンは僕の腕を引っ張って納屋の方へと向かった。まさか、こんな日にもあれを要求されるの……!?
「い、いやだよ、アノン……!勇者様たち、アノンを探しにきちゃうよ」
「それは無い。奴らは阿呆面晒して直ぐに寝た。特にレオンってやつのいびきはすごかった」
「それは……」
きっと嘘だ。アノンは嘘をつく時、僕の顔を絶対に見ないから。今も、納屋の方角しか向いていない。
納屋に着くと、直ぐに使用中なのが分かった。扉が閉められている。
少しホッとしたのを誤魔化すようにアノンを伺うと、イライラと地面を蹴り出した。
「クソッ、こんな日に盛りやがって……ジェームズの野郎」
「ジェム兄さんを悪く言わないでよ」
「……フェリス。なあ、お前、行かないよな?……あいつらと、なんか」
アノンはそのまま、防護柵のギリギリ、端の方まで僕を連れていく。
ここは安全の範囲内ではあるけれど、草の背も高いし木も生えて鬱蒼としている。
内緒話にはぴったり。でも、こんな怖い顔をしたアノンとは、正直、一緒にいたくない。
「……だめ、かな……やっぱり……」
「だめに決まってる!俺は、俺は……!フェリスが好きなんだ!絶対に離れないからな……!」
「う……うん……僕も、アノンが大事だよ……」
いつから、こんな惨めな思いを抱えながら、この言葉を言うようになったのだろう。
小さい頃。アノンが輝くような笑顔でお花を持ってきてくれた時は、毎日がきらきらしていたのに。
今では喉元に、小刀を突き付けられているようだ。
「フェリス……っ!」
「えっ、ちょ、なに……っ!?」
アノンが抱きついてきて、僕を木の幹へと押し付ける。ごそごそと腰の紐を解かれ、下衣がすとんと落ちてしまった。
まさか、こんなところで……!?
嫌な予感は的中していた。アノンはハァハァと荒い息を僕の耳へ吹きかけ、くるりと身体を回転させられる。
顔が、ざらざらする幹に当たって痛い。剥き出しになった尻に、ねとりとした熱いペニスが当てられた。
「ひっ、やめ、やめて、アノン……!ひうっ~~」
ぐっ、と体重をかけられて、なすすべもなく入り込んでくるそれ。
何の慣らしもしていない僕のお尻は、火傷したみたいに痛くてたまらない。
「俺が、好きなら、出来るだろっ……!証明、しろ……っ!」
「で、でも!いや、嫌だよ、やめてよっ……う、!」
どんっ!どんっ!と腰を叩きつけられるたび、接合しているところが切れて裂けるのが分かる。
痛いだけじゃなく、悲しかった。
前々から、外で求められることはあった。あったけど、断固として拒否していたのだ。
だってこんな、誰かに見られるかもしれない場所で。ただただ野生の獣のようにまぐわうなんて。
ねぇ、僕は、アノンにとって、大事な人じゃないの……?
泣いて嫌がっても、アノンは僕の腰を離そうとしなかった。
一回放つと滑りが良くなったのか、二回、三回とただただ突き入れられる。
全てが終わった頃、アノンは『ごめん』と一言謝って、家へ帰っていった。
惨めだった。白濁に塗れた下半身を浄化し、たたない足を励まして乱れた服を着直している間、僕はぼんやりしていた。
どうして、アノンはこんなふうになっちゃったのだろう。
僕のせい?僕が、アノンを大事だって、伝えるのが下手な人間だから?
……今日は森に入らなかった分、まだ、良いのかな。
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