姉の結婚式に姉が来ません。どうやら私を身代わりにする方向で話はまとまったみたいです。式の後はどうするんですか？親族の皆様・・・！？

12 〜グレイン視点3〜

 結婚式当日、カレンが駆け落ちした。

 この知らせをグレイス男爵から報告を受け、思わず男爵に背を向けニヤリと笑ってしまった。よくやった！よくぞ駆け落ちしてくれた！

 そして予想通り男爵は、妹のソフィアで結婚式を行うと言ってきた。俺はすぐに牧師に新婦の名前をソフィアに変更した。式の間、誰も気づく者はいなかった。皆、混乱しているからな。式の後他の誰でもなく本人に、

 『どっちでも変わらんから、お前が嫁でいいぞ。そのまま着いて来い』

 と言ったのも、ベンの言葉を信じソフィアなら従うと思ったからだ。逃がさない為に。

 ああ、ソフィアが俺の妻になったのだ。

 指輪の用意はどうしようか悩んだ。しかし罷り間違って本人が来ないとも限らない。来てしまったら完全にお手上げになってしまうのだ。既製品の指輪に内側に日付だけを入れた。石も安物だ。その指輪はソフィアの手から早めに回収した。サイズはカレンと同じようだったので、元々ソフィアに渡したいと考えてデザインで至急作らせようと思った。

 『屋敷では好きに過ごすがいい。俺は朝、騎士団に行き、夜の帰りになる。食事は気にせず自分が食べるタイミングで食べればいい。俺の事は同居人位に思え。ベッドは一応、個々の部屋にもあるから、そっちを使ってくれても構わない。何か必要なモノは家令のベンに相談しろ』

 冷たい言い方をしてしまったと思っている。しかし、ソフィアに『オジサンだからイヤ』と拒否されたら俺は立ち直れない。やっと俺の『妻』と言う位置に収まってもらう事が出来たのだ。最初から近づき過ぎてはいけない。じっくり・ゆっくり・嫌がられないようにしなければ。

 だから、夜も無理して一緒に寝る事は無いと言った。しかし、仕事から帰り夫婦の寝室のベッドを見ると、小さな膨らみがあり天使の様な顔でソフィアが眠っていた。

 「くうっ！何て可愛いいんだ。しかも律儀にコッチのベッドで寝てくれるなんてっ！ああっ！俺の理性、毎日耐えられるか？いや、明日になったらやっぱり一緒に寝るのはイヤと言われるかも知れない。嫌われ無いように触れない距離を取らなければ。うっ、こんなに近くなのに抱きしめて寝られないなんてっ！拷問なのか？」

 その夜、俺は浅い睡眠を繰り返しつつ、ソフィアの顔を眺め幸せに浸った。




 ソフィアから一緒に朝食の時間を合わせてきてくれた。あまりの嬉しさに悶え死ぬかと思った。何とか平静を装えたとは思うが。

 ああ、その場で抱きしめてしまいたいくらい可愛い！

 


 ハンカチをもらった時には、すぐに指輪を贈らなければと思った。朝食の場でロマンチックでも何でもないタイミングだったが待てなかった。妻の印をつけたかったのだ。

 フラワーフェスティバルも楽しかった。ソフィアはわかりやすい表情で、欲しいものを気にしていた。てっきりその場で買いたいと言うかと思ったが、結局何も言わなかった。それはかなり悲しい気がした。後から屋敷の者に買いに来させる事にしよう。

 翌朝、花の苗やアクセサリーを喜んでもらえ、俺は凄く幸せな気分になった。しかも、いつもの玄関での見送り。笑顔が可愛すぎて、思わずキスしそうになったが、頬をなでるだけに抑えた。

 今思えば、よく抑えられたものだ。
 
 ベッドでスヤスヤと気持ち良さげに眠るソフィアの頬を撫で、ソコにキスをする。柔らかい頬だ。

 「早くキスしたいな」

 呟いてソフィアを抱きしめて眠った。