弟が悪役令嬢に怪我をさせられたのに、こっちが罰金を払うだなんて、そんなおかしな話があるの? このまま泣き寝入りなんてしないから……!

冬吹せいら

文字の大きさ
14 / 16

あれから……。

しおりを挟む
あの日以来、私とネイトルは、仮面の館ではなく、私の家で会話するようになった。

「またお姉様が、意地の悪い作戦を思いついたみたいで……。とても、うんざりしています」
「あはは……。懲りない方ね」
「全くです!」

……とは言っても、話す内容は、そんなに変わらないけれど。

「ところで、キリアの姿が見えないですね。お仕事ですか?」
「いや……。その、ベオリーナのところに、行ってるらしくて」
「……まぁ。最近多いですね」

どうやら、私の知らないところで、二人は密かに、関係を育んでいたらしい。

「ベオリーナのことは、正直あまり好きではないの……。どう思う? キリアの結婚相手として」
「そうですか? 私は結構、ああいうはっきりした方は、好きなので……。……スバレスと、似ていますよ」
「なっ……。それだけはやめて。泣きそうになる」

まさか、同族嫌悪というやつだろうか。

いいや、私は人前では、基本的に引っ込み思案なタイプだ。
気を許した相手に対してしか、強気なことは言わない。

ベオリーナは、どこでもあんな感じである。

「心優しいキリアが、あの子に振り回されないか、心配で……」
「そのくらいが、ちょうどいいと思いますけどね」
「そんなもんなのかなぁ……」

息をかけて、少し冷ましてから、紅茶を口に含んだ。

その瞬間。
ドアが、勢いよく開け放たれた。

「よぉ~っす! キリアと結婚しま~す!」

せっかく口に含んだ紅茶を、吐き出してしまった。

ベオリーナが、キリアと手を繋ぎながら、家に入って来たのだ。

慌てて口元を拭い、私は立ち上がった。

「い、いきなりどういうつもりなの!?」
「結婚しま~す!」
「キリア! 説明しなさい!」
「あ、あはは……。ごめん姉さん」
「ごめんじゃなくて!」

思わず、頭を抱えてしまった。

なんてことだ。今の今、ああいう話をしていたばかりなのに。

「って、ネイリア様もいらっしゃったのですか。これはご無礼を……」
「なぁなぁ姫様! あたしとキリア、お似合いだと思うだろ!?」
「そうですね……。ぴったりだと思います」
「ネイトル!? 勝手なこと言わないでちょうだい! ベオリーナ! 弟はあげないわよ!」
「あちゃ~……。やっぱり怒っちゃったか~」
「当たり前!」

ベオリーナが、困ったように、頭を掻いた。

しかし、どうやら思い直したようで。

真剣な表情に変わり、私を真っすぐ見つめてくる。

「な、なによ……」
「……本気で好きなんだ。キリアのこと」
「っ……」
「結婚したい。絶対。誰よりも、あんたの弟のこと、幸せにしてみせるから。お願いします」

ベオリーナが、頭を下げてきた。

「や、やめなさい。頭を上げて?」
「……お願いします」
「なんだか、まるで男女逆みたいですね」

ネイトルが笑った。

私はキリアに目を向ける。

……とても、幸せそうな表情をしていた。

「……まだ、あなたの両親に、話を聞いてないわよ?」
「もうオッケーって言ってた」
「……はぁ」

話が早すぎる。

……色々、不安なことは思い浮かぶけど。


キリアの幸せが、一番だものね。

「キリア、あなたは……。ベオリーナが好きなの?」
「……うん」

とびっきりの笑顔だった。

……どうやら、決まってしまったみたいね。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に転生したようですが、前世の記憶が戻り意識がはっきりしたのでセオリー通りに行こうと思います

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢に転生したのでとりあえずセオリー通り悪役ルートは回避する方向で。あとはなるようになれ、なお話。 ご都合主義の書きたいところだけ書き殴ったやつ。 小説家になろう様にも投稿しています。

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

治癒魔法で恋人の傷を治したら、「化け物」と呼ばれ故郷から追放されてしまいました

山科ひさき
恋愛
ある日治癒魔法が使えるようになったジョアンは、化け物呼ばわりされて石を投げられ、町から追い出されてしまう。彼女はただ、いまにも息絶えそうな恋人を助けたかっただけなのに。 生きる希望を失った彼女は、恋人との思い出の場所で人生の終わりを迎えようと決める。

婚約者とその幼なじみがいい雰囲気すぎることに不安を覚えていましたが、誤解が解けたあとで、その立ち位置にいたのは私でした

珠宮さくら
恋愛
クレメンティアは、婚約者とその幼なじみの雰囲気が良すぎることに不安を覚えていた。 そんな時に幼なじみから、婚約破棄したがっていると聞かされてしまい……。 ※全4話。

悪役令嬢だけど、私としては推しが見れたら十分なんですが?

榎夜
恋愛
私は『花の王子様』という乙女ゲームに転生した しかも、悪役令嬢に。 いや、私の推しってさ、隠しキャラなのよね。 だから勝手にイチャついてて欲しいんだけど...... ※題名変えました。なんか話と合ってないよねってずっと思ってて

婚約者を友人に奪われて~婚約破棄後の公爵令嬢~

tartan321
恋愛
成績優秀な公爵令嬢ソフィアは、婚約相手である王子のカリエスの面倒を見ていた。 ある日、級友であるリリーがソフィアの元を訪れて……。

逆行令嬢は聖女を辞退します

仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。 死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって? 聖女なんてお断りです!

かわりに王妃になってくれる優しい妹を育てた戦略家の姉

菜っぱ
恋愛
貴族学校卒業の日に第一王子から婚約破棄を言い渡されたエンブレンは、何も言わずに会場を去った。 気品高い貴族の娘であるエンブレンが、なんの文句も言わずに去っていく姿はあまりにも清々しく、その姿に違和感を覚える第一王子だが、早く愛する人と婚姻を結ぼうと急いで王が婚姻時に使う契約の間へ向かう。 姉から婚約者の座を奪った妹のアンジュッテは、嫌な予感を覚えるが……。 全てが計画通り。賢い姉による、生贄仕立て上げ逃亡劇。

処理中です...