婚約破棄? 五年かかりますけど。

冬吹せいら

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令息 国外追放

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「ふざけるな!!!!」

父上に、思いっきり頬を叩かれた。

「フォーラン様! 大丈夫ですか!?」
「あ、あぁ……。心配いらないよ」
「お父様! なんて酷いことを!」
「貴様にお父様と呼ばれたくはない!」

リエスとの婚約を破棄し……。
今、横にいる、ケスラと新たに結婚する。

そう父上に報告したところ、酷く怒らせてしまった。

「令嬢との婚約を破棄し、娼婦と結婚するだと!? 到底受け入れられぬわ!」
「父上。ケスラはもう、娼婦はやめました」
「そうです! 私はもう、足を洗って……」
「その体で、我が息子を誘惑したのか……。汚らわしい女だ」
「父上! なぜそのようなことを申されるのですか!」

ケスラが、泣き始めてしまった。
その肩を、優しく抱いてやる。

ケスラを守ることができるのは……。
僕だけなんだから。

「考え直せ。フォーラン。今であればまだ、頭を下げれば、婚約破棄は無かったことにできるだろう。期限切れにならないうちに、早く!」
「……僕は、ケスラと結婚するんです」
「まだそのようなことを……。エンバートの規則を、まさか、知らないはずはないだろう?」
「エンバートの規則、ですか?」

そう言えば、リエスも、何か言っていたような……。
婚約する時、かなりたくさん、書類にサインをさせられたような気はしたが、ほとんど適当に済ませてしまったので、内容までは覚えていない。

「その様子では……。何も知らぬようだな」
「はい……」
「全く……。呆れて物も言えぬわ。よいか? フォーラン。もし、その汚らわしい娼婦と結婚するつもりなら……。お前はもう、我が家の息子ではない」
「えっ……。それは、どういう」
「すぐにでも、家を出て行ってもらうということだ。そうでなければ、隣国にも示しがつかない」
「そ、そんな。婚約を破棄しただけですよ?」
「婚約を破棄しただけ……? バカ息子が。そんな甘い考えで、よくここまで生きてこられたな……」

父上が、ため息をついた。

……もういい。
誰もわかってくれなくても。

僕には、ケスラがいてくれれば、それでいいんだ。

「……行こう。ケスラ」
「え、あ、えっと……。もう少し、歩み寄ってはいかがですか? 家の名前が無くては、今後も色々困るでしょう……」
「いいや。僕たちには、愛があるだろう? それだけで十分だ」
「フォーラン様……」

ケスラが、困ったように、顔を伏せてしまった。
きっと、照れているんだろう。

いいさ。僕が幸せにしてみせる。

これからは、二人きりの、自由な人生が始まるんだ!
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