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第1話 わがまま姫の横暴
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とある国に、わがままな姫がいた。
彼女の名前は、メーシャ・ニラカグヤ。
無茶な要求を繰り返したり、貴族の持ち物を奪ったり……。
国民は酷く迷惑していたが、親である国王は姫に甘く、いつまで経っても性格が改善されることはなかった。
「あら! あなたとっても素敵なネックレスをつけているのね! もらっていくわ!」
……このように、当たり前の如く人の私物を奪うので、誰もが彼女を嫌っていた。
◇
「この領地を私に譲りなさい!」
伯爵家当主、リルメス・エスメラルダは困惑していた。
「領地を譲れ、というのは……?」
「そのまんまの意味よ。ここは色々整備されていて、とっても住み心地が良さそうだから、私一人が住む、私だけの王国に作り替えるの!」
堂々と胸を張り、言い切ったメーシャに対し、返す言葉が見つからないリルメス。
「姫様。国王様はなんと?」
父の代わりに、娘のラリッサ・エスメラルダが尋ねる。
「ラリッサ。あなたは出しゃばらないで」
「私の家の話ですが……」
「うるさい馬鹿! 首をちょん切っちゃうわよ!」
「首……」
なんて幼稚な発想だろう。ラリッサは笑いそうになった。
ラリッサとメーシャは共に十五歳。教育を共に受ける機会もあったので、それなりに付き合いは長い。
メーシャはラリッサを酷く嫌っており、何かにつけてちょっかいをかけてくることは多かったのだが……。
それで領地まで奪われては、たまったもんじゃない。
「お父様には何も言ってないわ。今はとある国にお出かけなさっているの」
なるほどそういうことか。ラリッサは理解した。
さすがに伯爵家の領地を取り上げるなんてことを、自分の娘の要求とはいえ、国王が許すはずが無いと思っていたのだ。
やはりこのわがまま姫の勝手な行動だったらしい。
「国王様も、そればっかりはさすがに怒ると思いますけどねぇ……」
「う~る~さ~い! 明後日までに出て行くのよ! そうでなきゃ、火炎の魔法使いを呼んで、この領地を丸焼きにしてやるんだから!」
「それは困りますね……」
ラリッサはため息をついた。
その態度に、メーシャが顔を真っ赤にして抗議する。
「もっと慌てなさいよ! 本当に領地を奪われるのよ!? 嘘じゃないんだから!」
本気で自分の要求が通ると思っているようで、ラリッサからすればおかしくてたまらなかったのだが――。
実はエスメラルダ家は、この領地を自ら手放すつもりだった。
本当はもう少し先の話で、そろそろ国王にも報告をする予定があったのだ。
とはいえ、領民の避難はすでにほとんど終わっている。
……人がいない街を見て、このわがまま姫は何も思わなかったのだろうか。
観察眼が備わっていないメーシャに呆れるラリッサだったが……。
たまには自分のしでかしたことによって、痛い目を見るのもいいだろう。
そんな風に考えて、あえて領地を手放す予定だった件については語らなかった。
「じゃあわかったわね! 明後日よ! 明後日!」
「わかりましたから。さっさと出て行ってください」
「なにぃ……?」
「ひ、姫様! 落ち着いてください!」
侍女がメーシャを宥め、頭を下げながら、部屋を出て行った。
ふぅ。と、一息ついてから、ラリッサがリルメスに語り掛ける。
「ではお父様。あのわがまま姫も申しておることですから、さっさと出て行きましょうか」
「……言うべきだったのでは? 土地の汚染について」
「あの子は浄化の魔法を得意としています。……自分の住む土地の世話くらい、自分でさせてあげた方が良いと思いますよ」
リルメスは、何も言わなかった。
……自分の妻に似て、強い女性になってくれたのはいいが。
強すぎるのも悩みものだなぁと、ため息をついたのだった。
彼女の名前は、メーシャ・ニラカグヤ。
無茶な要求を繰り返したり、貴族の持ち物を奪ったり……。
国民は酷く迷惑していたが、親である国王は姫に甘く、いつまで経っても性格が改善されることはなかった。
「あら! あなたとっても素敵なネックレスをつけているのね! もらっていくわ!」
……このように、当たり前の如く人の私物を奪うので、誰もが彼女を嫌っていた。
◇
「この領地を私に譲りなさい!」
伯爵家当主、リルメス・エスメラルダは困惑していた。
「領地を譲れ、というのは……?」
「そのまんまの意味よ。ここは色々整備されていて、とっても住み心地が良さそうだから、私一人が住む、私だけの王国に作り替えるの!」
堂々と胸を張り、言い切ったメーシャに対し、返す言葉が見つからないリルメス。
「姫様。国王様はなんと?」
父の代わりに、娘のラリッサ・エスメラルダが尋ねる。
「ラリッサ。あなたは出しゃばらないで」
「私の家の話ですが……」
「うるさい馬鹿! 首をちょん切っちゃうわよ!」
「首……」
なんて幼稚な発想だろう。ラリッサは笑いそうになった。
ラリッサとメーシャは共に十五歳。教育を共に受ける機会もあったので、それなりに付き合いは長い。
メーシャはラリッサを酷く嫌っており、何かにつけてちょっかいをかけてくることは多かったのだが……。
それで領地まで奪われては、たまったもんじゃない。
「お父様には何も言ってないわ。今はとある国にお出かけなさっているの」
なるほどそういうことか。ラリッサは理解した。
さすがに伯爵家の領地を取り上げるなんてことを、自分の娘の要求とはいえ、国王が許すはずが無いと思っていたのだ。
やはりこのわがまま姫の勝手な行動だったらしい。
「国王様も、そればっかりはさすがに怒ると思いますけどねぇ……」
「う~る~さ~い! 明後日までに出て行くのよ! そうでなきゃ、火炎の魔法使いを呼んで、この領地を丸焼きにしてやるんだから!」
「それは困りますね……」
ラリッサはため息をついた。
その態度に、メーシャが顔を真っ赤にして抗議する。
「もっと慌てなさいよ! 本当に領地を奪われるのよ!? 嘘じゃないんだから!」
本気で自分の要求が通ると思っているようで、ラリッサからすればおかしくてたまらなかったのだが――。
実はエスメラルダ家は、この領地を自ら手放すつもりだった。
本当はもう少し先の話で、そろそろ国王にも報告をする予定があったのだ。
とはいえ、領民の避難はすでにほとんど終わっている。
……人がいない街を見て、このわがまま姫は何も思わなかったのだろうか。
観察眼が備わっていないメーシャに呆れるラリッサだったが……。
たまには自分のしでかしたことによって、痛い目を見るのもいいだろう。
そんな風に考えて、あえて領地を手放す予定だった件については語らなかった。
「じゃあわかったわね! 明後日よ! 明後日!」
「わかりましたから。さっさと出て行ってください」
「なにぃ……?」
「ひ、姫様! 落ち着いてください!」
侍女がメーシャを宥め、頭を下げながら、部屋を出て行った。
ふぅ。と、一息ついてから、ラリッサがリルメスに語り掛ける。
「ではお父様。あのわがまま姫も申しておることですから、さっさと出て行きましょうか」
「……言うべきだったのでは? 土地の汚染について」
「あの子は浄化の魔法を得意としています。……自分の住む土地の世話くらい、自分でさせてあげた方が良いと思いますよ」
リルメスは、何も言わなかった。
……自分の妻に似て、強い女性になってくれたのはいいが。
強すぎるのも悩みものだなぁと、ため息をついたのだった。
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