1 / 1
ほんぺん
しおりを挟む
「お前との婚約は破棄だ!」
お腹がすいた、早く帰りたい。そんなことを思っていると腹立たしい男がまた馬鹿なことを言い出した。
この男、ハンス・ド・ロイヤルはこの国唯一の王子様だ。国王夫妻の唯一の子供で、陛下は側室がおられるが彼の他に子宝には恵まれなかった。正妃の息子として初めから磐石な彼は恵まれた人生をあゆむと思われたが、残念なことに、一国民としてすら嘆きたくなるほどに、おつむが悪かった。
そんな彼の行く末を案じて、陛下は彼に王位を渡す頃には王家はただ君臨するものになるように動いている。そのために婚約者になったのがわたくしアイリーン。アイリーン・エトワール。エトワール公爵家の長女で美貌だけの女と揶揄される女だ。若干常識のない箱入り娘、現実と空想の区別が怪しいなんて言われているのには訳がある。私には前世の記憶がある。こらそこ、笑うな。厨二病じゃないから。
どうしてこうなったかはまあ今は右に置いておく。
「殿下、如何なさいました。」
「家庭教師が言っていた。お前は優秀で俺なんかに嫁ぐのは可哀想だと。俺は、否定できない。だからお前を離してやるのがいいと思った。」
頭を抱えた。アレもダメか。もはや数え切れないほどの家庭教師をクビにしてきたがまた、らしい。彼の愚かさにつけ込んで甘い汁を吸いに来るものは多いがその全てを、少なくとも把握している限りは、跳ね除けてきた私が彼らには邪魔なのだろう。最近はこういう妨害も増えた。
サラサラの金髪も緑の瞳も甘いマスクも王子様が持っているものはひとつもこれらに役に立たない。魔法の腕も剣の腕も同様だ。
彼らの行動の結果自分を優秀だと思っていた彼が自分が人間の中で最底辺に近い知能しか持たないことを理解して、こうして最初から私に話してくれるようになったのは不幸中の幸いだ。
単独行動が減ったのに比例して護るのも随分楽になった。
「殿下、破棄などと悲しいことは仰らないでください。」
ハンカチに目を当て泣き真似をする。呆れている口元も隠せて一石二鳥だ。
母は私を産んで死んだけど男を誑かすすべを私はよくこころえている。
「アイリーン、すまない。」
そう言って私の肩に触れる彼の胸に頭を押し付け、言葉を紡ごうとしたそのとき。
グルグル
思いっきりお腹がなった。いや、きっとバレてないバレてない。
「昼食にしよう。きっかけを作った私が言うのもなんだが君は休息が必要だ。」
思いっきり聞かれていた。こら、触れるんじゃない。無視しろ無視。若干気を利かせようとして微妙に成功してるか分からない発言するんじゃ。誤魔化せてるならいいか。いや、自分が腹減ったことにしろよ。でも、今はその前に確かめなくてはいけないことがある。
「婚約破棄はしませんか。」
恥ずかしさに耳まで赤く染めながら呟くように言った。でもどうせデモデモダッテなんだろうなと諦めていた。
「しない、もう二度とそんな話しない。解消もしない。」
だから、その一言に目を見開いて崩れ落ちたのは仕方の無いことなんだ。だってあのバカがこんなに物分りよく振る舞うなんて明日は槍でも降りそうだ。よく解消のことまで思い至ったなこの駄犬。
腰の抜けた私を抱き抱えた王子に私は思いっきり慌てた。
私は決して男にしなだれかかって誘惑するようなはしたない女でも、お姫様抱っこされてうふうふするような痴女でもないの。
だから、パンツが見えてるでしょうが馬鹿王子。
こら、喜んでるんじゃない!!!
ーーーーーーーーーーー
反応があると凄く嬉しい!!!
最後まで読んでくれてありがとう!
お腹がすいた、早く帰りたい。そんなことを思っていると腹立たしい男がまた馬鹿なことを言い出した。
この男、ハンス・ド・ロイヤルはこの国唯一の王子様だ。国王夫妻の唯一の子供で、陛下は側室がおられるが彼の他に子宝には恵まれなかった。正妃の息子として初めから磐石な彼は恵まれた人生をあゆむと思われたが、残念なことに、一国民としてすら嘆きたくなるほどに、おつむが悪かった。
そんな彼の行く末を案じて、陛下は彼に王位を渡す頃には王家はただ君臨するものになるように動いている。そのために婚約者になったのがわたくしアイリーン。アイリーン・エトワール。エトワール公爵家の長女で美貌だけの女と揶揄される女だ。若干常識のない箱入り娘、現実と空想の区別が怪しいなんて言われているのには訳がある。私には前世の記憶がある。こらそこ、笑うな。厨二病じゃないから。
どうしてこうなったかはまあ今は右に置いておく。
「殿下、如何なさいました。」
「家庭教師が言っていた。お前は優秀で俺なんかに嫁ぐのは可哀想だと。俺は、否定できない。だからお前を離してやるのがいいと思った。」
頭を抱えた。アレもダメか。もはや数え切れないほどの家庭教師をクビにしてきたがまた、らしい。彼の愚かさにつけ込んで甘い汁を吸いに来るものは多いがその全てを、少なくとも把握している限りは、跳ね除けてきた私が彼らには邪魔なのだろう。最近はこういう妨害も増えた。
サラサラの金髪も緑の瞳も甘いマスクも王子様が持っているものはひとつもこれらに役に立たない。魔法の腕も剣の腕も同様だ。
彼らの行動の結果自分を優秀だと思っていた彼が自分が人間の中で最底辺に近い知能しか持たないことを理解して、こうして最初から私に話してくれるようになったのは不幸中の幸いだ。
単独行動が減ったのに比例して護るのも随分楽になった。
「殿下、破棄などと悲しいことは仰らないでください。」
ハンカチに目を当て泣き真似をする。呆れている口元も隠せて一石二鳥だ。
母は私を産んで死んだけど男を誑かすすべを私はよくこころえている。
「アイリーン、すまない。」
そう言って私の肩に触れる彼の胸に頭を押し付け、言葉を紡ごうとしたそのとき。
グルグル
思いっきりお腹がなった。いや、きっとバレてないバレてない。
「昼食にしよう。きっかけを作った私が言うのもなんだが君は休息が必要だ。」
思いっきり聞かれていた。こら、触れるんじゃない。無視しろ無視。若干気を利かせようとして微妙に成功してるか分からない発言するんじゃ。誤魔化せてるならいいか。いや、自分が腹減ったことにしろよ。でも、今はその前に確かめなくてはいけないことがある。
「婚約破棄はしませんか。」
恥ずかしさに耳まで赤く染めながら呟くように言った。でもどうせデモデモダッテなんだろうなと諦めていた。
「しない、もう二度とそんな話しない。解消もしない。」
だから、その一言に目を見開いて崩れ落ちたのは仕方の無いことなんだ。だってあのバカがこんなに物分りよく振る舞うなんて明日は槍でも降りそうだ。よく解消のことまで思い至ったなこの駄犬。
腰の抜けた私を抱き抱えた王子に私は思いっきり慌てた。
私は決して男にしなだれかかって誘惑するようなはしたない女でも、お姫様抱っこされてうふうふするような痴女でもないの。
だから、パンツが見えてるでしょうが馬鹿王子。
こら、喜んでるんじゃない!!!
ーーーーーーーーーーー
反応があると凄く嬉しい!!!
最後まで読んでくれてありがとう!
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
色ぼけている暇なんてなかった
頭フェアリータイプ
恋愛
恋した騎士様を捕まえるため世にも恐ろしい手練手管を発揮しようとした公爵令嬢は国を滅ぼしかねない危機に勘づいてしまい泣く泣く対策に奔走する羽目になる。
お姫様は死に、魔女様は目覚めた
悠十
恋愛
とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。
しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。
そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして……
「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」
姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。
「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」
魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……
婚約破棄ブームに乗ってみた結果、婚約者様が本性を現しました
ラム猫
恋愛
『最新のトレンドは、婚約破棄!
フィアンセに婚約破棄を提示して、相手の反応で本心を知ってみましょう。これにより、仲が深まったと答えたカップルは大勢います!
※結果がどうなろうと、我々は責任を負いません』
……という特設ページを親友から見せられたエレアノールは、なかなか距離の縮まらない婚約者が自分のことをどう思っているのかを知るためにも、この流行に乗ってみることにした。
彼が他の女性と仲良くしているところを目撃した今、彼と婚約破棄して身を引くのが正しいのかもしれないと、そう思いながら。
しかし実際に婚約破棄を提示してみると、彼は豹変して……!?
※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも投稿しています
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
不機嫌な侯爵様に、その献身は届かない
翠月るるな
恋愛
サルコベリア侯爵夫人は、夫の言動に違和感を覚え始める。
始めは夜会での振る舞いからだった。
それがさらに明らかになっていく。
機嫌が悪ければ、それを周りに隠さず察して動いてもらおうとし、愚痴を言ったら同調してもらおうとするのは、まるで子どものよう。
おまけに自分より格下だと思えば強気に出る。
そんな夫から、とある仕事を押し付けられたところ──?
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる