腹ぺこ令嬢と脳筋王子

頭フェアリータイプ

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ほんぺん

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「お前との婚約は破棄だ!」



お腹がすいた、早く帰りたい。そんなことを思っていると腹立たしい男がまた馬鹿なことを言い出した。

この男、ハンス・ド・ロイヤルはこの国唯一の王子様だ。国王夫妻の唯一の子供で、陛下は側室がおられるが彼の他に子宝には恵まれなかった。正妃の息子として初めから磐石な彼は恵まれた人生をあゆむと思われたが、残念なことに、一国民としてすら嘆きたくなるほどに、おつむが悪かった。

そんな彼の行く末を案じて、陛下は彼に王位を渡す頃には王家はただ君臨するものになるように動いている。そのために婚約者になったのがわたくしアイリーン。アイリーン・エトワール。エトワール公爵家の長女で美貌だけの女と揶揄される女だ。若干常識のない箱入り娘、現実と空想の区別が怪しいなんて言われているのには訳がある。私には前世の記憶がある。こらそこ、笑うな。厨二病じゃないから。

どうしてこうなったかはまあ今は右に置いておく。

「殿下、如何なさいました。」

「家庭教師が言っていた。お前は優秀で俺なんかに嫁ぐのは可哀想だと。俺は、否定できない。だからお前を離してやるのがいいと思った。」

頭を抱えた。アレもダメか。もはや数え切れないほどの家庭教師をクビにしてきたがまた、らしい。彼の愚かさにつけ込んで甘い汁を吸いに来るものは多いがその全てを、少なくとも把握している限りは、跳ね除けてきた私が彼らには邪魔なのだろう。最近はこういう妨害も増えた。

サラサラの金髪も緑の瞳も甘いマスクも王子様が持っているものはひとつもこれらに役に立たない。魔法の腕も剣の腕も同様だ。

彼らの行動の結果自分を優秀だと思っていた彼が自分が人間の中で最底辺に近い知能しか持たないことを理解して、こうして最初から私に話してくれるようになったのは不幸中の幸いだ。

単独行動が減ったのに比例して護るのも随分楽になった。

「殿下、破棄などと悲しいことは仰らないでください。」

ハンカチに目を当て泣き真似をする。呆れている口元も隠せて一石二鳥だ。

母は私を産んで死んだけど男を誑かすすべを私はよくこころえている。

「アイリーン、すまない。」

そう言って私の肩に触れる彼の胸に頭を押し付け、言葉を紡ごうとしたそのとき。

グルグル

思いっきりお腹がなった。いや、きっとバレてないバレてない。

「昼食にしよう。きっかけを作った私が言うのもなんだが君は休息が必要だ。」

思いっきり聞かれていた。こら、触れるんじゃない。無視しろ無視。若干気を利かせようとして微妙に成功してるか分からない発言するんじゃ。誤魔化せてるならいいか。いや、自分が腹減ったことにしろよ。でも、今はその前に確かめなくてはいけないことがある。

「婚約破棄はしませんか。」

恥ずかしさに耳まで赤く染めながら呟くように言った。でもどうせデモデモダッテなんだろうなと諦めていた。

「しない、もう二度とそんな話しない。解消もしない。」

だから、その一言に目を見開いて崩れ落ちたのは仕方の無いことなんだ。だってあのバカがこんなに物分りよく振る舞うなんて明日は槍でも降りそうだ。よく解消のことまで思い至ったなこの駄犬。

腰の抜けた私を抱き抱えた王子に私は思いっきり慌てた。

私は決して男にしなだれかかって誘惑するようなはしたない女でも、お姫様抱っこされてうふうふするような痴女でもないの。

だから、パンツが見えてるでしょうが馬鹿王子。

こら、喜んでるんじゃない!!!


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最後まで読んでくれてありがとう!
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