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第六章:ドドス共和国
6-16ドドスの街
しおりを挟む国境を越えて数日、私たちはいよいよドドスの街に着いた。
ドドスの街は近くに岩山が沢山有った。
そしてそこかしこで煙が登っている。
更に街に近づくと鉄を打つ音が聞こえてくる。
カーンカーン……
「あれがドドスの街?」
「何か他の街と見ためはあまり変わらないね?」
荷馬車から見るそれは他の街や村と同じく高い城壁に守られた街だった。
このイージム大陸は人が暮らすには厳しい場所で、外敵である魔獣や魔物なんかが跋扈する場所だ。
だからどの街や村も外観的には似たり寄ったりになる。
唯一ジマの国だけは自然の防壁じゃないけど周りを山々に囲まれた天然の城塞で、黒龍事コクさんの縄張りと言う事もあり自然と魔獣や魔物は近寄りたがらない。
「よし、ドドスの街に着いた。同行者は関所で受け取った入国証明の札を門衛に渡してくれ。失くした者はここでまた銅貨十枚支払わなければならないからな」
キャラバンの人はそう言って城門の所で荷馬車を止める。そして同行者を降ろしてここで入場審査をしてもらう。
私もルラも荷馬車から降りて城門の入場する場所へ行こうとするとキャラバンの人に呼び止められる。
「リルさん、ちょっと待ってくれ。これ隊長からだ。いろいろとうまい飯食わせてもらって助かったよ。それじゃ」
そう言って皮袋を手渡される。
中にはここまで食事を作ってきたお礼だろう、結構な金額が詰まっていた。
私はお礼を言ってそれを受け取るとキャラバンの人たちは別の大門を開いてもらって中へ入ってゆく。
どうやらここでお別れのようだった。
私たちは手を振ってお別れをしてから個別の入場審査を受けるのだった。
* * *
「エルフとは珍しいな。ようこそドドスの街へ」
そう言って入国証明の札と引き換えに私たちをドドスの街に入れてくれる衛兵さん。
しかしエルフが珍しいとはどう言う事だろう?
「あの、エルフってこの街じゃ珍しいんですか?」
「ああ、あんたら初めてか? ここにはドワーフ族が多くてな、なんか知らんがあんたらエルフとあまり仲が良くないようでエルフたちはすぐにこの街を出て行ってしまうんだよ」
そう言ってその衛兵さんは次の人の審査を始める。
そう言えばカリナさんがドドスの街を嫌がっていたっけ。
確かあんなところにいたらドワーフ臭くなるとか……
そんな事は無いだろうと私とルラは街に足を踏み入れると途端に土の香りが強くなってきた。
「うわっ! なにこの匂い?」
「うっ、これって匂いって言うより土の精霊力が強いみたいよ? なんかノームの精霊たちが沢山あちらこちらにいる」
正確には匂いと言うよりはそんな感じがすると言った方が良いかな?
とにかく土の精霊の力が強く前世で言うと夏の夕立の後の地面のむせるような匂いと言えば分かってもらえるだろうか?
とにかくそんな雰囲気がそこら中からするのだ。
「ドドスの街かぁ……」
私はそう言ってもう一度街並みを眺める。
そこかしこで煙が登っていて鉄を打つ音がする。
なんかモノづくりの街って感じだ。
そう言えばネコルさん、無事にドドスに着いたのだろうか?
ドドスの街で防具を仕入れてまたレッドゲイルに戻るとか言っていたけどその後どうなったのだろう?
そんな事を思いながら私はルラと一緒に街並みを歩く。
まずは宿屋を見つけてそして冒険者ギルドにこの紹介状を持って行って、そしてサージム大陸に渡る為の手はずを整えなければ。
と、なんか好い匂いがしてくる。
「お姉ちゃん、なんか好い匂いがするね?」
「うん、そう言えばそろそろお昼の時間だし、宿屋を見つけながらお昼ご飯にしようか?」
「うん! じゃあ何食べようか!?」
途端に元気になってルラは先を急ぐ。
まるで匂いにつられるように。
* * *
「うーん、ここかなぁ、あの匂い」
「うーん、この匂いって……」
肉の焼ける香ばしい香りにたっぷりの香辛料。
なんか乳酸系の酸味の強い香りもする。
「これって何かあれに似ている匂いだなぁ……」
それは遠い記憶の中にある香り。
以前上野駅の近く、アメ横町と言う所で外国人がっていたファーストフード。
そう、この香りって間違いなくケバブそっくり。
私とルラはこの香りにつられてこの店にまで来ていた。
「『槌亭』? ここって宿屋でもあるのかな?」
「酒場で食事が出来て宿屋って普通に有るからそうなんじゃないかな? とりあえず入ってみましょうか?」
そう言って私たちは中に入る。
ちょっと薄暗いけどあのいい香りが奥の厨房からして来る。
「いらっしゃい。おや? 珍しいね、エルフのお客だなんて」
そう言って私たちを迎え入れてくれたウェイトレスのおばさ……いや、化粧の濃い目のお姉さんは持っているお酒らしきジョッキを近くのテーブルにどんっと置きながら私たちに話しかけて来る。
「うわっ! 服にかかる! 気をつけやがれ!!」
「うるさいね、どうせ浴びるように飲んでいるんだから少しくらいかかっても同じだよ!」
うわー、こんな接客してたらレナさんだったらすぐにお仕置きになっちゃう。
抱き着かれてキス攻めにされちゃうよ……
「おっと、ごめんよ。適当な席についておくれ、はいこれメニューね」
そう言ってメニューを手渡されて私たちは適当なテーブルに着く。
「お姉ちゃん、なんかすごい所来ちゃったね?」
「う、うん。でももう入っちゃったしご飯だけはここで食べようか?」
ルラとコソコソ言いながらメニューを見ると、よくわからない料理ばかりだった。
私とルラは首をかしげながらメニューを覗いているけどやっぱりよく分からない。
「あのぉ~、すみません」
「はいはい~、ご注文は?」
あのウェイトレスさんに来てもらい私は聞く。
「ドドスには始めて来たのでどんな食べ物があるかよくわからないんですよ。おすすめってあります? ああ、あとこのお肉焼いているようなのって何ですか? 凄く良い匂いなんですけど」
私がそう言うとそのウェイトレスさんは笑いながら言う。
「ドドスは初めてかい? だったらおすすめはドドス名物ロックキャタピラー料理だね。見た目は悪いけど味は保証するよ? それとこの焼いてる肉はナンに挟んで食べる焼肉だけど、ヨーグルトソースとチリソースがるよ。どっちがいい?」
ロックキャタピラーはエルフの村でも食べた事がある。
背中が岩そっくりなのだけどお腹が紫色が混じった気持ち悪い虫なんだけど、これをよく焼いて食べるとその身は甘めのエビのような味わいがする。
お父さんが好きな食べ物の一つなんだよね。
「ヨーグルトソースですか? それって甘いんですか??」
「そうさね、さっぱりとした甘さがあるかね。あたしはそっちの方が好きなんだけどね」
「じゃあ、ロックキャタピラーのお料理とその焼肉ナン挟みのヨーグルトでお願いします。飲み物果実のジュースをお願いします」
「あいよ」
ウェートレスさんはそう言って奥へ引っ込んで行った。
と、ここでなんか視線が集まっているのに気付く。
「姉ちゃん、エルフだな? 珍しいな」
「ふん、こんな所にエルフとは。迷子にでもなったかの?」
「エルフってのは肉も食うんだ?」
なんか周りの他のお客さんが一斉にこちらに興味を持つ。
その中にお酒をぐびぐびと飲んでいる樽のような髭のおっさんがいた。
「うわー、もしかしてドワーフ? あたし初めて見た!!」
「ふん、ここでは儂らドワーフは当たり前、むしろお前さんのようなエルフの方が珍しいわい」
ルラは目を輝かせそのドワーフを見る。
本当に背が低くくて樽のような体形をしている。
長いひげにビールだろうか、泡をたっぷりと付けながらジョッキをあおっている。
本当にドワーフって噂通りなんだ。
「でも、お酒ばかり飲んでると強そうには見えないね~。ゲームの中のドワーフは戦闘では強かったのに~」
「なに?」
ルラは私に向かってそんなたわいない事言っているとさっきのドワーフの人が反応する。
「そこのエルフの嬢ちゃん、今何か言ったかの?」
そう言ってドワーフの人はのそりと立ち上がるのだった。
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