腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~

さいとう みさき

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第八章:ドドスでのエルフ料理?

8-12女神信教

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「ほう、『女神の伴侶』の名を出すか。エルフがこのドドスにいると言うだけで珍しいと言うのにな」


 いきなりその声が聞こえて来た。
 さっきまで全くと言って良いほど人の気配なんて無かったのに!
 
「お姉ちゃん!!」

 すぐにルラが私と声のする方の間に入り身構える。

 「誰!?」

 私の誰何にその声の主は物陰からゆっくりと出てくる。
 そしてその姿は紛れもなく神官のそれだった。


「神官さん? はっ!? まさかジュメル!?」

「いやいやいや、俺は女神信教のモンだ。あんな邪教と一緒にしてもらっちゃ困る」


 そう言って姿は神官なのだけどやたらとガラの悪そうな喋り方をしている。
 しかし女神信教と言ったらエルハイミさんを祀り上げるあの女神信教のはず。
 今目の前にある神殿やその横で運営されている銭湯なんかのそれがそうだ。


「あの、女神信教の方がいったい何のご用なんですか?」

 メリーサさんはおずおずと聞いてみる。
 するとその神官はふっ苦笑して両手を上げて肩をすくませる。

「俺はバーグってモンだが、女神信教の色々な雑用係さ。エルフ料理とか言ってここで実際にエルフが食い物作って商売してるって小耳に挟んでな、確認に来たんだよ」

 そう言って疲れた表情でニヤッと笑う。
 何と言うか、神官姿だけど無精ひげは生えてるわ、目は死んだ魚のようになってるわで神官ぽくはない。


「それで、確認は出来たんですか?」


 私は一応言葉の通りに意味を捕らえ聞き返す。


「まあな、確かにエルフが喰いモン作ってた。しかも大盛況で雑魚とは言えこの辺を縄張りにしている盗賊ギルドの下っ端を追い返した。ただ、『女神の伴侶』の名を出すとはな。あんたシェル様の知り合いか?」

「シェルさんの妹さん、シャルさんと仲良くさせていただいてます。シェルさんとは面識ありますがお忙しい方のようですね?」


 言葉を選んでそう答えるとバーグと名乗った神官はニヤッと笑う。
 そして視線を以前あった豊胸の店の方へを運ぶ。


「エルフ族は胸が小さい傾向だが、あんたあの店について何か知らないかい?」

「あの店って、いきなり閉店したんですよね?」


 私がそう言うと彼はニヤッと笑う。
 そして私たちを見渡してから言う。


「そうらしいな、店主も何もいきなり消えたらしいが『鉄板亭』で騒ぎがあったらしいじゃないか。なんでも化け物が襲撃して来たとか…… で、あんたさっき『ジュメル』と言ったよな?」


 そう言ってこちらに寄って来る。
 その動きに何故かルラが髪の毛を逆立てる。


「お姉ちゃん、下がって! そこの人、それ以上こっちに来ないで!」


「ふむ、そっちのエルフのお嬢さんは分かるか。他は素人か。悪い悪い、試させてもらっただけだ」

 そう言ってその場で立ち止まりまたまた両の手を上げて肩をすくませる。
 一体何だと言うのだろう。


「……お姉ちゃん、こいつさっきあたしたちを攻撃しようとしてた。もの凄い殺気だったよ」

「へっ? そ、そうなの?? でもなんで?」

 ルラはまだ警戒を解いていない。
 しかしその神官は懐から煙草を取り出し、【着火】の魔法で火を付ける。


「ふぅ~、すまんね、これが俺の雑用の仕事さ。ドドスの街でジュメルの活動があったってんで調べてたらいつの間にやら壊滅。しかも全く関係のないはずの『鉄板亭』を魔怪人が襲撃となれば穏やかじゃない。そしてこのドドスにエルフがいるとなれば上層部も気にするって訳だ。ここじゃエルフはすぐに出て行っちまうからな」


 言いながら煙草を足元へ落とし火を踏み消す。
 そしてもう一本たばこを取り出し、びっ! と私たちに向ける。


「あんたら、ただのエルフじゃないな? そっちのエルフのお嬢さんは俺の殺気に気付いた。そしてこっちのエルフのお嬢さんはシェル様の妹君をよく知っている。もうそれだけで普通じゃないのは分かるってもんだ」


「……それで一体何の用なんですか?」

「なに、確認できれば今日の所はおいとまするさ。そうさな、出来れば教会に来てもらえると助かる。なに、悪いようにはしないさ。何せシェル様のお知り合いだ。丁重にお迎えするよ」

 そう言って踵を返して去って行ってしまった。
 私はその背中を見ながらふと思う。

 シェルさんがらみ……

 
「ルラ、逃げようか?」

「うーん、そうもいかないかも。ほら」


 ルラはそう言って小さな名刺くらいの紙を掲げる。
 ルラは私にそれを見せてくれるけど、何か書いてある。


―― ジュメルがエルフの姉妹を探っている、詳しくは神殿で話す ――


「なっ!?」

 その紙にはそんな事が書かれていた。

「い、いつの間に、それにこの文章何時書いたの!?」

「そこ? たばここっちに向けた時に投げつけられたんだよ。あたしもこの内容見て驚いてたけど」

 ルラはそう言ってバーグとか言う神官が去って行った方を見ている。
 そんな私たちにメリーサさんは寄って来て聞く。

「ねえぇ、リルちゃんルラちゃん。もしかして私たち教会に睨まれた? もしかしてここで商売するとまずかった??」

「それは無いみたいですね。あの人私たちがエルフなんで聞きたい事があるみたいです。すみませんメリーサさん、今日はちょっと神殿に行ってこなきゃならなくなったのでこの後お店の手伝いできなくなっちゃいそうなんですが……」

「分かった、リルちゃんが教会に睨まれたらここドドスではやっていけなくなっちゃう。お願い、誤解を解いて!!」

 なんかメリーサさんはここで出店やることが教会に睨まれたものと勘違いしている。
 本当はメリーサさんの問題じゃないんだけどね。


「ルラ、神殿に行こう」

「分かった、行こうお姉ちゃん!」



 こうして私たちは神殿に向かう事となるのだった。
 
 
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