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第九章:道に迷う
9-3森の中の村
しおりを挟むルラのその声に私は立ち上がりやって来たと言う人を探す。
その人は森の奥からやって来た。
見るからに木こり風の風体。
年の頃四十くらいのおじさん。
顔中にひげを蓄え、ドワーフかと思うような顔つきをしている。
「すみません!」
「うぉっ!? な、なんだこんな所に人がいるだと??」
コモン語で話しかけたのでちゃんと通じた。
もし地方の言葉で通じなければどうしようかと思ったけど、コモン語はこの世界の共通語なので問題は無かった。
「あの、私たち道に迷ってしまったんです、助けてもらえませんか?」
「道に迷ったのか? こんな森の奥深くで?? って、もしかしてあんたらエルフってやつか!?」
マントのフードは降ろしているので私たちの長い耳はすぐに目につく。
この耳、長くて感情が現れやすいみたいで結構動く。
人に会えてうれしくてさっきまでは耳がピンと立っていたのが自分でもわかる。
これってウサギの耳みたいで結構気にいってるんだけどね。
「驚いた、本当にエルフなんだ。初めて見たぞ。噂通りめんこいなぁ」
「めんこい?」
「あ-、可愛いって意味よ。それよりすみません、私はリル、こっちは双子の妹のルラです。街道を歩いていたらいつの間にか森に迷ってしまって困ってます。助けてもらえますか?」
私はその木こり風のおじさんにお願いをする。
「そりゃぁ、難儀だったな。こんな森の奥深くで迷子になるなんざ大変だったろう? しかしエルフってのは森の妖精って聞いたが迷うモノなのか?」
「う”っ! そ、それを言われるとお恥ずかしいですが、私たちこっちって初めてだったので全く勝手が分からないんですよ……」
耳がショボーンとなる。
ううぅ、言われてみればエルフって森の妖精とか言われて森に詳しい種族ってイメージがある。
確かにカリナさんからもレクチャー受けて動物の獣道や足跡の見分け方くらいは知ってるけど、知らない勝手のわからない森なんかは分かる訳がない。
……大人のエルフならそう言う事は無いのかもしれないけど。
「まあええわ、キノコ採ったら儂の村まで連れてってやるわな。村まで行けば道があって街道へ向かえるでな」
「ありがとうございます! 助かります」
そう言って木こりのおじさんはあの木に生えているキノコを採り始める。
見た事の無いその種類はなんかやたらとカラフルだった。
「こんなもんかの。さてと行くとしようかの。ついといで」
そう言って袋にキノコを入れて背負いながら歩き始める。
私もルラも慌ててその木こり風のおじさんについて行く。
「儂はバージ、デルバの村で木こりをやっておる」
歩きながら木こり風のおじさんは自己紹介をしてくれた。
「でも驚きました、この森って歩いても歩いてもどこかに辿り着く感じがしなくて」
「ああ、ここは山と山の間に挟まれた森でな、方向感覚が狂いやすいんだよ」
歩きながらそんな会話をする。
するとルラもひょこりと顔を出して聞いてくる。
「バージさんて木こりさんやってるのにキノコも作ってるの?」
「ん? ああ、このキノコは特別でな今の時期にしか生えんから木こりの仕事よりキノコの収穫の仕事が忙しいくらいだよ」
そう言って袋からキノコを一つ出す。
それをつまんで私たちに見せながら言う。
「エルフの嬢ちゃんだから知っているかもしれんが、これは毒キノコなんで食っちゃいかんぞ?」
「え? 毒キノコを栽培してるんですか!?」
「毒キノコでも薬の材料にはなるんだよ、ただ普通に食べると幻覚を見る羽目になるから気をつけるといい」
そう言ってまた袋の中にそのキノコを放り込む。
私とルラは顔を見合わせまたバージさんを見る。
毒も薬になるんだ。
そんな事を思いながら森の中を歩いてゆくと前に開けた場所が見え始めた。
「あそこがデルバの村だよ。ここまで来ればもう大丈夫だろ?」
「ありがとうございます。おかげで港まで向かえそうです」
私がそう言うとバージさんは驚いた風にこちらを見る。
そして大きな体をこちらに向けて聞いてくる。
「港に向かうだと? あんたらもしかしてサージム大陸に行くつもりなんじゃないだろうな?」
「え? そのつもりですけど……」
もともとサージム大陸の迷いの森のエルフの村に帰るつもりだったから素直にそう答える。
するとバージさんは苦虫をかみつぶしたような顔をする。
そして話始める。
「つい最近だがドドスの街と港町の間にサイクロプスが現れたと言う噂が流れとった。一つ目の食人鬼だぞ、キャラバンも何も命からがらドドスに逃げ帰ったと聞いている。悪い事は言わん、ドドスの『鋼鉄の鎧騎士』団が討伐するまで港に向かうのは待った方がええぞ?」
「サイクロプス?」
「お姉ちゃん、サイクロプスって何?」
バージさんの話から一つ目の食人鬼だと言う事は分かるけど、何かの神話か何かで読んだような気がする。
確か獰猛で人の肉を好んで食べる化け物。
巨人族の仲間らしいけど、とにかく危ない化け物ってイメージがある。
ルラにそんな事を説明しながら考える。
しかし困った。
そんな化け物が発生しているとは。
勿論ルラと私がいれば問題はないけど、ドドスの「鋼鉄の鎧騎士」の討伐隊が動いているなんて。
「うーん、そうなると港に行く他の道ってあるんですか?」
「この村はちょうど森の真ん中くらいにあるがの、山道は土地のモンでも危なくて通らんしのぉ。大人しくしてしばらく待つ方が良いだろう」
山間の道を進むのは確かに大変だ。
尾根を進んでいるといつの間にか別方向に向かっているとか有るもんね。
この四日間でよく分かったけど。
「とにかく村に来る事だな。長老の家に案内してやるよ」
「すみません、お手数かけます」
私たちはバージさんにお礼を言いながら長老さんの家に向かうのだった。
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