169 / 437
第九章:道に迷う
9-13巨人族
しおりを挟む結局あの後出発したのは翌日になってしまった。
「う~、まだ頭が少しずきずきするぅ~」
「いや、あれだけ飲んでその位で済んでいるってイリカさんドワーフの血でも混じっているんじゃないですか?」
隣を歩いているイリカさんはそう言ってこめかみを両の手で押さえている。
昨日は何だかんだ言って宴会騒ぎになってお酒が出始めるとジビ団子だけでなくお姉さんオーガ (中身はお婆さん)たちが他の料理まで持ち出すから大宴会に発展してしまった。
私たちはお酒が飲めないと断ったけど、イリカさんは差し出される杯をどんどんと飲み干して行き最後はオーガたちと飲み比べに発展していった。
女性らしいスタイルであるけど決して太っているわけでもないイリカさんの何処にあれだけのお酒が消えて行ったのかが不思議でならない。
『まんず、いつもそうだがイリカさ酒飲ますっと底無しだがや』
『前ん時も最後まで一人で飲んどったかんの』
『儂、こんな嫁さんだけは嫌じゃの』
『んだんだ』
イリカさん、以前なにやらかしたんだろう……
オーガたちがそろってイリカさんをジト目で見ている。
『見た目だけは美人なんだがのぉ』
長老さんもとても残念そうな顔をしている。
「わ、私は別にすぐ誰かと一緒になるつもりはありません! いいんです今はエルフの研究とかいろいろしたいし!!」
顔を少し赤くしてイリカさんはそう叫ぶ。
まあ、分からなくはないけどずっと独り身って寂しいよ?
そんな事を思いながら私は髪留めに手を添えてみる。
「うん、でも今はエルフの村に帰るから……」
小声でそう言った時だった。
『なんねあれは?』
先を歩いていたオーガの人が立ち止まり森の奥を見る。
するとバキバキと音を鳴らして木が倒れた。
驚きそちらを見ると灰色っぽい何かが見えた。
それは徐々にこちらに向かっているけど、この辺い生えている木々と同じかそれより大きい何か。
『あれが巨人だがね? イリカさ、どうだんべ?』
「はい、どうやらアレが噂のサイクロプスのようですね。サイクロプスの中でも大きい方ですよ、皆さん気をつけてください!」
『よっしゃ、いっちょやったるかぁ!』
『んだ、いくざます!』
『いくでがんす!!』
『ふんがぁー!』
そう言いながらオーガの皆さんは武器を握りしめこちらに向かってくるサイクロプスを迎え撃つ。
こちらに気付いたサイクロプスはこん棒の様なものを振り回し近くの木を倒したり木の枝を薙ぎ払ってこちらに向かってくる。
大きな体。
多分「鋼鉄の鎧騎士」より大きい。
「鋼鉄の鎧騎士」が六、七メートくらいあるって聞いたから、それより大きいってことは十メートルくらいありそうだ。
顔には大きな目が一つだけ、そして禿げた頭の上に一本の角が生えている。
灰色の肌に腰に申し訳程度の布をまとってこん棒を振っている。
そんな化け物にオーガの人たちは果敢にも向かって行く。
『こんくさっ!』
『なんくるなんさね!!』
『どりゃぁー!』
口々にそう叫びながら剣や槍を突き付けて行く。
しかしサイクロプスの肌にそれらが届いた時だった。
『ぐろぉおおおおおおおおおおぉぉぉっ!』
サイクロプスは叫び手に持つこん棒でオーガたちを薙ぎ払ってしまった!
オーガの皆さんはそのひと振りに一度に数人が吹き飛ばされ、そして返す一振りで残りのオーガの人たちも!!
「あたしは防御も『最強』! 行くぞ!!」
しかし隣にいたルラはそう言ってチートスキル「最強」を発動させそこへ飛び込む。
がんっ!
『ぐろぉ!?』
「へっへっへっへっ~、受け止めたよ、次はこっちの番だ! あたしは『最強』!!」
ルラの何倍もある棍棒を片手で受け止め、それをはねのけて飛び上がる。
そしてサイクロプスの顔の高さまで飛び上がり必殺の拳を叩き込む。
「必殺ぱーんち!」
ばきっ!
『ぐぼっぉ!?』
自分よりずっとしいさなルラに殴られサイクロプスは弾き飛ばされるかのように倒れる。
どガーンっ!!
『ほげぇ、エルフの嬢ちゃんすげーだがや!!』
『んだ、ちっこいくせにすげーだがや!!』
『ふんがーっ!』
とん
「どうだ!」
ルラは軽やかに地面に着地してサイクロプスを見る。
しかし流石にそれだけでは倒しきれずにサイクロプスはのっそりと起き上がる。
『ぐろろろろろ……』
流石にルラに警戒している様だ。
そしていきなり地面の土を掴みルラに投げつける。
「目つぶし!? 『消し去る』!!」
ただの暴れん坊と思ったら小技を使ってくるとは!
ルラが戦いを始めてからずっと注意をしていて助かった。
私のチートスキル、「消し去る」はサイクロプスが目くらましで投げつけた土をあっさりと消し去る。
そしてそこへルラの必殺技が決まる。
「必殺きーっく!!」
どぼごっ!
まるで矢のように飛び込んだルラの飛び蹴りはものの見事にサイクロプスに決まってサイクロプスの身体を変な角度で体を曲げる。
そしてそのまま倒れて白目をむき動かなくなった。
『『『おおおおおぉっ!!!!』』』
途端にオーガたちから歓声が上がる。
「リルさんルラさん、あなたたちって一体!?」
『凄いのエルフの嬢ちゃんたち!!』
『まんずおったまげた!』
『ほんげぇー!』
途端にオーガやイリカさんが私たちを囲む。
まあチートスキルがあるからこれくらいは出来るのだけど、流石に目立ちすぎたかな?
「リルさんルラさんってエルフですよね? はっ!? もしかしてあなたたちが有名な『女神の伴侶』なんですか!?」
「違います!!!!」
イリカさんにそう言われ思わず全否定してしまった。
私たちってシェルさんみたいのと違うもん!
普通のエルフだもん!!
いや、チートスキルは確かにエルハイミさんに通じる力って聞いたけど、それでもそれ以外は普通のエルフと同じだもん!!
「お姉ちゃん、喜んでいられないよ。あれ見て」
皆さんに囲まれていたけどルラだけは他の所を凝視している。
そして言われたそこを見ると灰色の動くモノがいくつか……
「まさか、また巨人族!?」
「だね、お姉ちゃんあたしが先頭に立つよ、あたしは『最強』!!」
私が何か言う前にそう言ってルラは走りだすのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
7番目のシャルル、狂った王国にうまれて【少年期編完結】
しんの(C.Clarté)
歴史・時代
15世紀、狂王と淫妃の間に生まれた10番目の子が王位を継ぐとは誰も予想しなかった。兄王子の連続死で、不遇な王子は14歳で王太子となり、没落する王国を背負って死と血にまみれた運命をたどる。「恩人ジャンヌ・ダルクを見捨てた暗愚」と貶される一方で、「建国以来、戦乱の絶えなかった王国にはじめて平和と正義と秩序をもたらした名君」と評価されるフランス王シャルル七世の少年時代の物語。
歴史に残された記述と、筆者が受け継いだ記憶をもとに脚色したフィクションです。
【カクヨムコン7中間選考通過】【アルファポリス第7回歴史・時代小説大賞、読者投票4位】【講談社レジェンド賞最終選考作】
※表紙絵は離雨RIU(@re_hirame)様からいただいたファンアートを使わせていただいてます。
※重複投稿しています。
カクヨム:https://kakuyomu.jp/works/16816927859447599614
小説家になろう:https://ncode.syosetu.com/n9199ey/
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う
yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。
これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。
物置小屋
黒蝶
大衆娯楽
言葉にはきっと色んな力があるのだと証明したい。
けれど、もうやりたかった仕事を目指せない…。
そもそも、もう自分じゃただ読みあげることすら叶わない。
どうせ眠ってしまうなら、誰かに使ってもらおう。
──ここは、そんな作者が希望や絶望をこめた台詞や台本の物置小屋。
1人向けから演劇向けまで、色々な種類のものを書いていきます。
時々、書くかどうか迷っている物語もあげるかもしれません。
使いたいものがあれば声をかけてください。
リクエスト、常時受け付けます。
お断りさせていただく場合もありますが、できるだけやってみますので読みたい話を教えていただけると嬉しいです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
完結 シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣
織部
ファンタジー
ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。
背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。
母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。
セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。
彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。
セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。
「セラ、ウミ」
「ええ、そうよ。海」
ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します!
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる