187 / 437
第九章:道に迷う
9-31お別れ
しおりを挟む『美味いだがに!!』
ジビのお団子をフライパンにオリーブ油引いて平たく焼き上げたものに甘い蜜をかけて食べていた。
蜂蜜も良いなぁ。
メープルシロップをかけながらわたしはそれを口に運ぶ。
「これって焼くとこんなに美味しくなるんですね!」
「お餅系は固くなったらこれですよ、このパリパリに甘いのが良いんですよね~」
私は表面が香ばしくパリパリになって、中はもちもちの柔らかなジビ団子にメープルシロップをかけながら食べる。
オリーブ油で香ばしさが増しているのがホットケーキとかと違っていい感じ。
本当はお砂糖にお醤油を垂らしたのも好きなんだけど、魚醤を使うとちょっと匂いがね。
なのでここはシンプルに甘さを追加したもので。
「はふはふ、おいひぃ~」
「ほらルラ、お茶も入れたからこれも飲んで。急いで食べると喉詰まらせるわよ?」
がっついているルラにそう言ってお茶を渡す。
『むぅ~っ!!』
『まんずだがに! 長老が餅のどに詰まらせたがに!!』
『早く背中叩くだに!!』
『まんず、年寄りは無茶するするからだに!!』
言ってるそばからコルネル長老が喉詰まらせた。
お年寄りにあるあるをするので、私はコルネル長老の喉に詰まっているジビ団子をチートスキル「消し去る」で消す。
『ぶっはぁーっ! 助かっただに。危うく死ぬところだっただに!』
『長老も歳なんだから細かくしてゆっくり食うだに!』
『まんず、そうだがや』
『危なかっただに』
オーガの皆さんにもそう言われながらお茶をすするコルネル長老。
まあ、お餅とこんにゃくを食べる時は要注意よね?
「しかし、リルさんのその力、スキル持ちとはですね……」
イリカさんはそう言って改めて私を見る。
「あはははは、えーと、その、内緒ですよ?」
「ええ、スキル持ちは通常異世界人なんかが召喚された時にギフトで持つと言われています。この世界でもまれにスキル持ちで生まれて来る者もいますが、ほとんどが英雄になる要素があるとか…… リルさんってもしかして」
イリカさんはそう言って私をじっと見る。
今までは何だかんだでドタバタしてスキルについてはあまり気にされていなかった。
どちらかと言うとエルフの生態について聞かれたり、匂いをくんかくんかされたりと恥ずかしい思いをして来た。
しかしそこはやはり魔術師、気になった事は聞かずにはいられないのだろう。
「リルさんたちのその力、一体どう言う事ですか?」
「うーん、黒龍のコクさんには何やら女神様と同じ力の元から来ているとか言われましたが、まあ生まれつきのものなので……」
あの駄女神やエルハイミさんを思い出しながらそう言ってみる。
するとイリカさんは眉にしわを寄せて聞いてくる。
「黒龍? まさか女神の僕と言われる『女神殺しの太古の竜』ですか?」
「ああぁ、そう言えばそんな呼び名もありましたっけ? そうですね、そのコクさんです」
大人バージョンのエルハイミさんを真っ黒な髪の毛と瞳にして角と尻尾を付けたあの姿を思い出す。
見た目は二十歳そこそこだけど、カリナさんからはもう何万年も生きていると聞かされている。
まあ神話の女神戦争の時代から生きてるんだからうちのメル長老と同じか……
そう言えばメル長老は相変わらず中学生くらいにしか見えないけど。
「まさかリルさんと、ルラさんって仲間から連絡のあった双子のエルフ?」
「仲間??」
首を傾げイリカさんにそう聞くと、イリカさんは胸元からペンダントを出しながら頷く。
「はい、私実はこう言った集団の一員だったんですよ」
私はそのペンダントの紋章を見てしばし……
えっと、何だっけ?
どこかで見たような気がするけど……
「あ、お姉ちゃんこれってあれだよ、悪の秘密結社の。バーグって人が教えてくれたやつ!」
「あ? あ”あ”あ”あ”あああぁぁぁっ!!!!」
ルラがそう言ってやっと思い出す。
これって秘密結社ジュメルの紋章じゃないの!!
「イ、イリカさんってジュメルだったんですか!?」
「はい、えーとジュメル七大使徒の一人です。いやぁ、ジュメルの事知ってるって間違いなく双子のエルフじゃないですか」
あははははとか笑いながら、そう言うイリカさんに私もルラも緊張をする。
そしてイリカさんを見据えて聞く。
「何が目的なの?」
「目的と言われましても…… 私、今はエルフの生態を研究して人間である私も長生きできる方法を探ってるんですよ。何せ教団も安定してきたし、好きな事やるだけの時間も出来ましたしね。魔王様の残したこの巨人の集団も使い方によっては世界を破滅させる道具になりそうですし。ああ、でもすぐに使いませんよ? 先に私が長生きする方法を探さなきゃですから」
そう言って、はむっ! とジビ団子焼きを食べる。
「私たちが目的ではないって事ですか……」
「ん~、おいしい。うーん、エルフの生態についてあれこれ教えてくれたので助かりました。まだ初潮が来ていないリルさんとルラさんじゃ『命の指輪』は産めませんものね。それはまた別の方法を考えますよ。それに今の私はただの魔術師として教団の活動は休止中ですからね~」
そう言ってお茶をすする。
なんか、今までのジュメルの七大使徒とは感じが違う。
それでも注意深く聞いてみる。
「ジュメルって悪い事ばかししてるのになんでイリカさんなんて人がそんな秘密結社に属してるんですか?」
「ん~、話せば長くなりますが、うちの実家って貧乏貴族だったじゃないですか。もともと先祖代々ジュメルの信者やってたんですが私が魔法の才能があるって事で教団から全面的にバックアップ貰って立派な魔術師になったんですよ。でも、世界を破滅とか教団をもっと立派にするとかってあまり乗り気にならなくて。で、最低限の事やってたらいつの間にか七大使徒に選抜されて、やる事やったら時間が出来たので今はお休み貰って好きな事研究してるんですよ~。はぁ~、このお茶合いますね、ジビ団子焼きに」
のほほ~んとそう言い放つ。
しかしその様子は地そのものに見える。
「私たちをどうこうするとかって無いんですね?」
「ああ、エルフの生態については聞かせてもらったし、リルさんの匂いは嗅がせてもらったので満足ですよ」
いや、私の匂いはいいからっ!
なに人の体臭嗅いで嬉々として記録してんのよ!!
恥ずかしいったらありゃしない!!
「まあ、でも他の七大使徒たちはリルさんたちのそのスキルについて興味を持っているそうですね。正直私も少し興味ありますけど、スキルってその人の固有なので他の人がどうこう出来るもんじゃないし」
そう言ってにたりとした笑いをしてこちらを見る。
「今の所は私としてはリルさんたちをどうこうしようとは思いませんよ~」
「……そうですか。じゃあ今から私たちは港町を目指します。さようなら!」
私はそう言ってイリカさんに背を向ける。
「お、お姉ちゃん、待ってよ!!」
そんな私にルラも慌てて駆けよって来る。
「いいの? 悪の組織の幹部やっつけなくて?」
「関わらなくていいのならそれでいいわよ。とにかくジュメルと関わり合いは持ちたくない」
そう言ってずかずか歩き出す。
『あんれ、リルの嬢ちゃんたち、もう行っちまうだがに?』
「えっと、道に迷って助けてもらったのは感謝します。家に泊めてもらったのも」
イリカさんから離れて行こうとするとオーガのコルネル長老が声をかけて来た。
私は一旦足を止めてそちらを見て頭を下げてお礼を言う。
「でも、イリカさ…… ジュメルとは一緒に居られません。ここでお別れです。お元気で、長老。お姉さ……いえ、お婆さんにもよろしく伝えてください」
『ん、んだば気ぃ付けてな』
そう言ってあの子供に見せてはいけない笑顔で笑ってくれる。
オーガは本来狂暴な魔物として恐れられている。
でも、こうして話が分かるオーガもいる。
けど……
「私たちには目的がある。村に帰るって」
だからここを離れる。
そう自分に言い聞かせて私たちはこの場を後にするのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
愛鶴ソウ
ファンタジー
十二の公爵によって統制された大陸の内、どの公爵にも統治されていない『東の地』
そこにある小さな村『リブ村』
そしてそこで暮らす少年剣士『クロト』。
ある日リブ村が一級魔物『ミノタウロス』によって壊滅させられる。
なんとか助かったクロトは力を付け、仲間と出会い世界の闇に立ち向かっていく。
ミノタウロス襲撃の裏に潜む影
最弱属性魔剣士の雷鳴が今、轟く
※この作品は小説サイト『ノベルバ』、及び『小説家になろう』にも投稿しており、既に完結しています。
7番目のシャルル、狂った王国にうまれて【少年期編完結】
しんの(C.Clarté)
歴史・時代
15世紀、狂王と淫妃の間に生まれた10番目の子が王位を継ぐとは誰も予想しなかった。兄王子の連続死で、不遇な王子は14歳で王太子となり、没落する王国を背負って死と血にまみれた運命をたどる。「恩人ジャンヌ・ダルクを見捨てた暗愚」と貶される一方で、「建国以来、戦乱の絶えなかった王国にはじめて平和と正義と秩序をもたらした名君」と評価されるフランス王シャルル七世の少年時代の物語。
歴史に残された記述と、筆者が受け継いだ記憶をもとに脚色したフィクションです。
【カクヨムコン7中間選考通過】【アルファポリス第7回歴史・時代小説大賞、読者投票4位】【講談社レジェンド賞最終選考作】
※表紙絵は離雨RIU(@re_hirame)様からいただいたファンアートを使わせていただいてます。
※重複投稿しています。
カクヨム:https://kakuyomu.jp/works/16816927859447599614
小説家になろう:https://ncode.syosetu.com/n9199ey/
【魔物島】~コミュ障な俺はモンスターが生息する島で一人淡々とレベルを上げ続ける~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【俺たちが飛ばされた魔物島には恐ろしいモンスターたちが棲みついていた――!?】
・コミュ障主人公のレベリング無双ファンタジー!
十九歳の男子学生、柴木善は大学の入学式の最中突如として起こった大地震により気を失ってしまう。
そして柴木が目覚めた場所は見たことのないモンスターたちが跋扈する絶海の孤島だった。
その島ではレベルシステムが発現しており、倒したモンスターに応じて経験値を獲得できた。
さらに有用なアイテムをドロップすることもあり、それらはスマホによって管理が可能となっていた。
柴木以外の入学式に参加していた学生や教師たちもまたその島に飛ばされていて、恐ろしいモンスターたちを相手にしたサバイバル生活を強いられてしまう。
しかしそんな明日をも知れぬサバイバル生活の中、柴木だけは割と快適な日常を送っていた。
人と関わることが苦手な柴木はほかの学生たちとは距離を取り、一人でただひたすらにモンスターを狩っていたのだが、モンスターが落とすアイテムを上手く使いながら孤島の生活に順応していたのだ。
そしてそんな生活を一人で三ヶ月も続けていた柴木は、ほかの学生たちとは文字通りレベルが桁違いに上がっていて、自分でも気付かないうちに人間の限界を超えていたのだった。
戦国鍛冶屋のスローライフ!?
山田村
ファンタジー
延徳元年――織田信長が生まれる45年前。
神様の手違いで、俺は鹿島の佐田村、鍛冶屋の矢五郎の次男として転生した。
生まれた時から、鍛冶の神・天目一箇神の手を授かっていたらしい。
直道、6歳。
近くの道場で、剣友となる朝孝(後の塚原卜伝)と出会う。
その後、小田原へ。
北条家をはじめ、いろんな人と知り合い、
たくさんのものを作った。
仕事? したくない。
でも、趣味と食欲のためなら、
人生、悪くない。
物置小屋
黒蝶
大衆娯楽
言葉にはきっと色んな力があるのだと証明したい。
けれど、もうやりたかった仕事を目指せない…。
そもそも、もう自分じゃただ読みあげることすら叶わない。
どうせ眠ってしまうなら、誰かに使ってもらおう。
──ここは、そんな作者が希望や絶望をこめた台詞や台本の物置小屋。
1人向けから演劇向けまで、色々な種類のものを書いていきます。
時々、書くかどうか迷っている物語もあげるかもしれません。
使いたいものがあれば声をかけてください。
リクエスト、常時受け付けます。
お断りさせていただく場合もありますが、できるだけやってみますので読みたい話を教えていただけると嬉しいです。
大陸一の賢者による地属性の可能性追求運動 ―絶対的な物量を如何にして無益に浪費しつつ目的を達するか―
ぽへみやん
ファンタジー
魔王城への結界を維持する四天王を倒すべく、四属性の勇者が選ばれた。【地属性以外完全無効】の風の四天王に対抗すべき【地の勇者】ドリスは、空を飛び、高速で移動し、強化した物理攻撃も通用しない風の四天王に惨敗を喫した。このままでは絶対に勝てない、そう考えたドリスは、【大陸一の賢者】と呼ばれる男に教えを乞うことになる。
// 地属性のポテンシャルを引き出して、地属性でしか倒せない強敵(主観)を倒そう、と色々試行錯誤するお話です。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる