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第十章:港町へ
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しおりを挟む定期航路に現れた海獣のせいで航路が一時止まってしまった問題も解決したので、私たちはアスラックの港町に戻って来ていた。
「いや、流石はカーネルの絶賛するお二人だ。あの海獣を撃退するとは!」
ハウザー冒険者ギルドマスターはそう言って私たちを迎えてくれた。
「これで問題無く定期船は出られるんですよね?」
「ああ、アーロウ商会にもすでに連絡はしてある。定期船も準備に入るだろう。積み荷を積み終われば出航も出来る。そうそうこれは報酬だよ」
そう言ってハウザーさんは皮の袋を手渡して来る。
持った感じ結構重い。
「出航まで二人は宿屋にいるのかな?」
「もう他の仕事はしませんよ?」
私たちに暇があるのかどうか確認するような感じだったので先にくぎを刺す。
するとハウザーさんは残念そうに肩をすくませる。
「そうか、しかしまあ助かった。出来れば君らのような有能な冒険者にはもうしばらくこのアスラックに滞在してもらいたかったのだがな」
「あのぉ~、私たち冒険者じゃないですけど……」
そもそも私たちは冒険者ではない。
確かにユエバの町でカリナさんたちを手伝ったりはしていたけど、冒険者になるつもりは無かったので正式に登録をしているわけではない。
なので本来ならこういった仕事を受ける義理は無いのだけど、今回は私たちも使う予定の定期船の為だった。
これ以上面倒事はごめんである。
「なんにせよ助かった、その気があれば声をかけてくれ。すぐに上級冒険者として登録するからな」
「そうはならないと思いますけどね。それじゃ、失礼します」
私はそう言ってこの場を去る。
でないとなんやかんや言われて他の仕事押しつけられるかもしれないので。
「お姉ちゃん、お腹すいた~」
「そうね、せっかく報酬も貰ったし美味しいご飯でも食べましょうか?」
ルラはお腹置押さえながらそう言うのでアスラックの町で美味しいものでも食べようかと思う。
アーロウ商会で圧力鍋買うのは何時でも出来るしね。
* * *
「あれ? あれってデーヴィッド船長かな??」
町の通りに差し掛かりどこのお店でご飯食べようか見ているとルラがそんな事を言って来た。
見れば肩を落としたデーヴィッドさんが白壁のお店に入ってゆく。
私はその店を見ると、どうやら食事が出来るお店のようだった。
地元の人が行くようなお店ならきっとおいしいのだろう、私はすぐにルラに提案してみる。
「どうやらデーヴィッドさんも食事のようね? ルラ、あのお店行ってみる?」
「そうだね、行ってみよう!!」
二人して頷いてから私たちはデーヴィッドさんが入って行ったお店に向かうのだった。
* * *
「すんすん、あ~いい匂い~」
「うん、当たりかもこのお店」
お店に入ってすぐにスパイスの効いた香りが漂ってくる。
お店の中は一般的な酒場のようになっていて、テーブルがいくつかある。
そんな中、一番奥のテーブルにデーヴィッドさんは座っていた。
「こんにちは、デーヴィッドさんも食事ですか?」
「こんにちは~デーヴィッド船長さん! このお店って何がおすすめなの~」
顔見知りなので挨拶してそちらに行ってみる。
「ああ、エルフの嬢ちゃんたちか…… 冒険者ギルドに行ってたんだよな?」
「はい、今回の海獣退治が終わったので報酬をもらってきました。 あ、同席良いですか?」
今まで何をしていたかを話して同席していいかどうか聞く。
デーヴィッドさんは「ああ、どうぞ」と言って空いている席に私たちを座らせてくれた。
「おや? デーヴィッドこっちのお嬢さんたちは?」
「ああ、兄貴。こっちのエルフの嬢ちゃんたちは今回の海獣退治の立役者だよ。この二人のお陰で海獣を撃退させたんだ」
「へぇ、そいつは凄い! さぞ有名な精霊使いなんだろうな?」
座っていたらいきなり声をかけられた。
振り向いてみればエプロンをした三十路ちょっと前くらいの人がいた。
「いらっしゃ、俺はハーランド。この店の店長だ。エルフのお客さんは久しぶりだね。ご注文は?」
「あ、ども。えっと何が良いのかな?」
「あたしお肉!」
にこにことした感じで注文を取るハーランドさん。
このお店のではどんな料理を出すのだろう?
「それじゃぁ、何かおすすめはありますか? デーヴィッドさんもおすすめがあれば教えてください」
「そうだな、兄貴何時ものやつ頼むよ」
「分かった、鶏のスパイス焼きだな? エルフの嬢ちゃんたちもそれでいいかな??」
この香りは鶏のスパイス焼きだったのか。
お肉はたくさん食べられないけどこの香りは食欲をそそる。
ルラは勿論、私もその料理を頼む事にした。
「それじゃぁ少々お待ちください」
ハーランドさんはそう言って奥へと行く。
その姿を見送って私は気になった事をデーヴィッドさんに聞いてみる。
「デーヴィッドさんってこのお店の店長さんと兄弟なんですか?」
「ん? ああ、そうだよ。だから船では俺が料理担当もしているんだ。あいつらに任せておくとろくな食い物しか食わないからな」
なるほど、デーヴィッドさんは飲食店に兄弟がいるから料理が上手だったんだ。
あのお魚と野菜たっぷりの素朴なスープは美味しかったもんね。
「あれ? 兄さん帰って来てたんだ」
お料理が来るのを待っていると店の出入り口に荷物を抱えた男性が入って来てこちらに気付いてそう言ってくる。
「おう、今帰ったよ。サンダース、変わりはないか?」
「相変わらずだよ。ギリギリやっているって感じかな?」
荷物をカウンターの方へ置いてその男性はやってきた。
そして私たちに気付く。
「いらっしゃい。兄さんが女性と一緒だなんて珍しいね。しかもこんなきれいなエルフのお嬢さんとだなんて」
「きれいって///////」
初対面でそんな事言われると流石に恥ずかしい。
サンダースと呼ばれた彼はすっと手をだして挨拶してくる。
「弟のサンダースです」
「あ、えっとリルです。こっちは双子の妹にルラです」
「こんいちは~、ルラです~」
握手をしながら挨拶をする。
彼はにっこりと笑いながらデーヴィッドさんに聞く。
「もしかして兄さんが告白中だった?」
「いや、俺はもうちょっと胸のある女性が……」
そう言うデーヴィッドさんは私の呪殺するかのような視線に気付き苦笑いをする。
まったく、余計な事を言うから。
「ど、どちらにせよ兄貴の料理は旨いんだぜ。エルフの嬢ちゃんたちもきっと気に入るはずさ」
デーヴィッドさんはそう言って私の視線から逃れようとする。
まあ、ずっと睨んでいるわけにもいかず私は軽いため息を吐いて椅子に座りなす。
そしてハーランドさんのその料理を楽しみに待つのだった。
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