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第十章:港町へ
10-29出航
しおりを挟む「橋げたを上げろ!」
大きな声がして船に乗り込む為の橋げたが引き上げられる。
私たちは今定期船に乗船してとうとうこのイージム大陸を離れる。
船着き場には沢山の人が定期船の再開を見守る為に手を振っている。
その中には見知った顔もちらほらと。
「あ、お姉ちゃんあれってデーヴィッドさんたちだ!」
「ほんとだ、見送りに来てくれたんだ」
ルラはデーヴィッドさんたちに大きく手を振っている。
そして私は気付く。
あまり目立たない所にハウザーギルドマスターもいたりする。
あ、ネヴェリアさんまでいて、なんかお祈りしている。
アスラックの町ではそれほど関わっていないのにわざわざ見送りに来てくれるとは。
私もルラ同様に手を振って皆さんにお別れをする。
多分次にここへ来れるのは数百年後だろう。
今いる人たちにはもう会えないかもしれないけど、このイージム大陸ではいろいろな人と出会った。
そんな事を私は思いながら徐々に離れていくアスラックの港町を見るのだった。
◇ ◇ ◇
「うえぇ~思いのほかにきついぃ~」
アスラックの港町を出て早二日目。
前回の海獣討伐と違って今回はVIP待遇で船に乗っているので船室も豪華、お食事も良いモノが出てそれはそれは優雅な旅であった。
でも約一週間くらいの船旅、航路は小さな島々をかすめるかのように行くらしくたまに見かける小さな島以外に変わり映えのしない大海原。
水の精霊がもの凄く多くて、単一の精霊力がここまで強いと感覚が狂ってくる。
なんだかんだ言って私もエルフなんだと実感したりもしている。
「なぁに、ルラって船酔い?」
「う~ん、そうじゃないんだけどやたらと水の精霊が話しかけてくると言うか、何と言うか……」
ルラは精霊魔法があまり得意じゃないけど使えない訳じゃない。
だから精霊も感じ取れる。
でもそんなに水の精霊たちがうるさいかな?
「ん~、確かに水の精霊たちが多いけどそれほど話しかけて来てくれている?」
「うん、なんかさっきからずっとあたしに話しかけて来るの~」
珍しい事もある。
なのでずっと船の端から海を眺めていたルラの隣に私も行ってみる。
涼やかな風が吹いて来て気持ちいい。
唸っているルラに目に魔力を込め見てみると……
「うわっ! なにこれ!?」
ルラの周りに水の精霊たちがまとわりついている。
そして何やら必死にルラに話しかけている様だ。
私は慌てて水の精霊たちに話しかける。
「水の精霊たち、こんにちは。どうしたのそんなに慌ててルラにまとわりついて?」
エルフ語で優しく語り掛けると何人かのウンディーネたちが私に気付きこちらにやって来る。
そしてルラを指さしながらくるくると私の周りをまわる。
耳に魔力を込め、何を言っているか聞き取ろうとすると途端にその声が耳に飛び込んでくる。
『良かったわー、話の分かるお人がおりはって。一大事どす。こちらのお嬢さん、たいそうお強いようどす。どうかうちらに手ぇ貸してくれなまし!』
なんか訛りの強い精霊だわね。
いや、何時もはボディーランゲージやその意味だけが頭に直接入ってくるから耳で聞くなんてした事無かったっけ……
それにしても、この訛りってこの辺のウンディーネ特有なのかな?
「落ち着いて、それで一体何があったってのよ?」
『それなんどすが……』
そう言いながらウンディーネたちは私の前に集まり始めるのだった。
* * *
「つまり、その竜神が魔力まき散らしながらこのへんで暴れまわっているって言うの?」
『そうなんどすえ、おかげでうちらにまで影響力出てしまいはる。このままではこの船の航路にだって影響でますえ?』
ウンディーネたちのわいわい話しかけて来る言葉を何とかまとめて聞き返してみると、本来この辺にいるはずの無い竜神が暴れまわっている事らしい。
竜神って言うから黒龍のコクさんのようなのかと聞いてみると、どうやら日本の昔話なんかでも出てくるような細長い水龍のようだ。
しかしそこは竜族、膨大な魔力を持っているのでその魔力を放出しながら暴れまわっていると当然の如く精霊たちにも影響が出る。
かくしてたまたま以前に海獣をぶっ飛ばしたルラを見たウンディーネの一人がルラを見かけみんなで助けに来てもらうために来たと言う事だ。
「う~ん、そんな事言われてもあたしは海の中で力使えないし、そもそもそこまで行く手段がないよ?」
『それなら大丈夫どすえ。ほらあそこどす』
そうルラに言いながらウンディーネは船が進むその先を指さす。
するとそこには見事な竜巻があったりもする。
「ちょっ! 何時の間にあんな竜巻が!! このままじゃこの船が沈んじゃうじゃないの!!」
私がそう言っているとどうやら他の人たちも気付いたようで甲板上が大騒ぎになる。
慌てて船を竜巻から遠ざけようとするも既に目の前にまで来ている。
そして私は竜巻の中にあれ狂う水龍がいる事に気付く。
竜神はその眼を真っ赤に血走らせ何かに憤怒している様だったのだ。
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