腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~

さいとう みさき

文字の大きさ
414 / 437
第十六章:破滅の妖精たち

16-19先生

しおりを挟む

 私たちは先生と呼ばれているアインさんに会いに行く。


「この先が学校ですじゃ。この学校が始まってかれこれ七百年くらいは経つと思われますのぉ」

 ラディンさんに連れられたそこは広場から少し離れた山が切り崩された場所にあった。
 いや、山が切り崩されたと言うか、すっぱりなくなっていると言うか。

 ちょうど村を見下ろすような場所にあるここはやっぱり断崖絶壁に面した造り。
 正直、ここから落ちたら命は無いような場所に思う。

 と、崖を上るように前を歩く獣人の少年が足を滑らせる。


「あっ!!」


 私が声を上げた瞬間彼は真っ逆さまに崖の下へと落ちて行く。


「ラディンさん! 子供が!!」

「ああ、足元をちゃんと見て無かったじのゃなぁ。ま、ここでは日常茶飯事ですじゃ」


 いやいやい、いくらこんな場所でもこれが日常茶飯事って!!


「助けに行かなきゃ!!」


「お姉ちゃん、あの子上って来たよ?」

「へっ?」

 ルラに言われそっちを見るとその男の子は平然と崖を上って来る。
 しかもロッククライミングみたいに足場を見つけるとそこから上に飛び上がるかのように!!


「たいていの子は谷底に落ちる前に何らかの方法で崖に足場や突起を見つけああやって上って来るのですじゃ。稀に谷底に落ちてもかすり傷程度で済みますから、軽く手当てしてまた昇ってきますので心配ありませんのじゃ」

「い、いや、この崖どう見ても谷底が見えないんですけど……」

 下を見るとびゅっと風が吹き上げて来る。
 スカートが翻っちゃうのを片手で押さえながら足場の少ないこの道を歩くのはちょっと怖い。
 いくらエルフ族は身軽とはいっても流石にこの高さから落ちたら死んじゃう。

「もうじき着きますじゃ」

 しかしそんな私たちにラディンさんは何事もないかったように振り返って言うのだった。


 * * *


 そこはそこそこの広さがある学校だった。
 学校と言うか、何処かの田舎の分校よろしく、小さい石造りの校舎があってその奥に住居らしい家がある。
 校庭と言うか、広場みたいな場所はあるけど、山を切り崩したように意外と広い。
 その先にはなだらかになっていて、山頂のような場所に繋がっていた。


「今日の授業は終わりのようですな。ちょうどいい、アイン先生は多分あちらですな」

 ラディンさんはそう言って住居の方へ向かう。
 と、住居の前でさっきの子供とやや細みながらもしっかりと筋肉のついた男性が上半身裸で薪を割っていた。


「アイン先生、お久しぶりです。今大丈夫ですかな?」

「ああ、ラディン。よく来たな。ちょっと待っていてくれ。パルム、これをペグに渡してくれ」

「うん、分かった先生。それじゃ俺行くね!」

「ああ、気を付けて帰るんだぞ」

 そう言って先程の少年はアインさんに何か渡されたものを背中に背負って先程来た道を駆けて行く。
 ちらっと見た感じまったくケガもなく平気の様だった。


「待たせたな、ラディン。ん? そちらは??」

「あ、私リルと言います。こっちは双子の妹ルラです」

「こんにちは~! ルラだよ!!」

「エルフの客人とはな、俺はアイン。この村で指導をしている者だ」

 そう言ってアインさんは手を差し出す。
 私はその手を握り返し握手する。
 しかしルラは握手した瞬間顔がこわばる。

「アインさんって、強いよね?」

「ん? まぁそこそこにはな。だがこの村には俺以上に強いやつは沢山いるぞ」

 そう言って優しく笑う。
 ルラは手を放してから私を見て言う。


「お姉ちゃん、この村ってほんとおかしいよね? あたしも分かっていたけどみんなものすごく強いし、なんか変なんだよね」

「変?」


 ルラのその言葉に私は首をかしげる。
 変と言うか、凄い人が多くは感じる。
 ラディンさんの奥さんだって無詠唱で魔法使ってたし、さっきの少年だって。


「それで、どんな要件だ?」

 アインさんはラディンさんに向かって聞く。
 するとラディンさんは私たちに視線を向けて言う。

「いえね、シェル様からこちらのリル様とルラ様がしばらくこの村に滞在するので面倒を見るように言われましたのですじゃ。それでアイン先生の事を話したら是非とも会ってみたいと」

「そうか……」

 アインさんは私たちを見てちょっと目線を泳がす。


「あの、アインさんってシャルさんを知ってますよね?」


 私がそう言うとアインさんはびくっとなって額に脂汗を溜め私から視線を外す。
 これって確信犯だな。

「シャルさん、アインさんが迎えに来てくれる事ずっと待ってますよ」

「あー、その、なんだ。俺にはまだ使命が残っていてだなぁ……」

 更に額に脂汗を流す。

「でも、もう七百年も待たせてるんですよね?」

「うっ……」

 アインさんはさらにビクッとなり完全に顔を背ける。


「アイン先生?」

「いや、ラディンにも以前話をしただろう、シェル様の妹君の事だ……」

「ああ、エルフの村に行くには女神様への恩返しが終わらないといけないと言うあれですな」

 ラディンさんに言われアインさんは渋々そう言う。
 しかし、女神様への恩返しとは?

「あの、エルハイミさんへの恩返しって?」

「あー、まあその、なんだ。俺もこっちの世界であの方に助けられたんでな。この世界でせめてもの罪滅ぼしだ。俺も望む温和で平穏な日々の為にな」

 そう言うアインさんお表情はなんか優しかった。
 うーん、まあこう言う顔されたらシャルさんの事問い詰められそうにないなぁ。

「シャルさんアインさんが迎えに来るまで絶対にここへ来ないって言ったよ~。あ、でもアインさんの風のメッセンジャー来る時は凄く嬉しそうだった。でもシャルさんの事全然言ってくれてないから少し怒ってたよ~」

 私はそう思っているとルラがシャルさんの事暴露した。

「う、うむ…… 分かってはいる。だからさっきっ届け物を頼んで持って行ってもらった。シャルと俺とが出会ってちょうど七百年目なのでな……」

 そう言ってさっきの少年が走って行った方向を見る。
 うーん、何だちゃんとシャルさんの事も気に掛けていたんだ。


「そ、それでリルとルラは俺に何を聞きたいんだ?」

「ああ、そうだった。じつは私の親友をこのジルの村に転生する事を進められたんです」


「ほう」



 私のその言葉にアインさんは目を細めるのだった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

7番目のシャルル、狂った王国にうまれて【少年期編完結】

しんの(C.Clarté)
歴史・時代
15世紀、狂王と淫妃の間に生まれた10番目の子が王位を継ぐとは誰も予想しなかった。兄王子の連続死で、不遇な王子は14歳で王太子となり、没落する王国を背負って死と血にまみれた運命をたどる。「恩人ジャンヌ・ダルクを見捨てた暗愚」と貶される一方で、「建国以来、戦乱の絶えなかった王国にはじめて平和と正義と秩序をもたらした名君」と評価されるフランス王シャルル七世の少年時代の物語。 歴史に残された記述と、筆者が受け継いだ記憶をもとに脚色したフィクションです。 【カクヨムコン7中間選考通過】【アルファポリス第7回歴史・時代小説大賞、読者投票4位】【講談社レジェンド賞最終選考作】 ※表紙絵は離雨RIU(@re_hirame)様からいただいたファンアートを使わせていただいてます。 ※重複投稿しています。 カクヨム:https://kakuyomu.jp/works/16816927859447599614 小説家になろう:https://ncode.syosetu.com/n9199ey/

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

処理中です...