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第二十八話 器_5
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…………。
……………………。
………………………………。
そう、すべては終わったはず――だった。
今、俺は近所の警察署に呼び出されて説教されていた。
机を挟んで対面には俺より少し年上と思しき目つきの鋭い中年男性が、見覚えのあるガ○プラを肩に載せて座っている。
普通ならなんだこの取り合わせと考えるところだが、若かった頃ならアイドルとして通用してそうなイケメンだとこんなんでもかっこよく見えてくるから世間とはずるいものである。
「…おい、聞いてるか?」
「は、はい。聞いてます」
男の目つきが細められる。
いらん思索に耽っていたのがばれたようだ。
「知らなかったんだろうけど、それでもこうほいほいと呪物を生み出されると困るんだよねぇこっちも。ただでさえここは土地柄生まれやすいのに…」
うちに現れた、刑事と名乗ったこの男はそのまま俺を面談室へ蹴り込むと、不機嫌さを隠そうともせず一方的に話し始めていた。
「はぁ…」
話に身が入らないのは、いまいち彼の言ってることの意味がわからないせいでもある。
「…判ってないようだな。これ、これだよ」
それが相手にも伝わったようで、彼は言いながら肩の薄汚いガ○プラを掴み、机の上に置く。あちこちパーツが欠けたり、泥や砂で薄汚れてはいたものの、間違いない。俺が酒に明かせて造ったWDDSAだ…いやWFDSAだったっけ?
どちらが訪問販売協会で構成される団体の名称だっけ、と益体も無いことを考える間もなく。
「わたしウイングドラゴンガ○ダムデスサンドアームズ。いまあなたの前にいるの…」
「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!」
顔を寄せたら意外に可愛い声が発されて、思わず「スポンジ・ボブ」の玩具が喋ったのを目の当たりにした子供みたいな反応で飛び上がってしまった。
そんな様子を白い目で見ていた刑事がぽつりと言う。
「しゃべったじゃねえよ、お前のせいでしゃべるようになったんだよ」
「は? …え?」
いやいや、俺はガ○プラ組んだだけで何もしてないんだが?
「…はぁあ。そこからか。もしかしてお前野良か?」
「は? 野良…?」
「しょうがねえ、一から説明してやる、座れ」
「あ、はい」
俺が再びパイプ椅子に着席したのを見計らい、刑事さんは話し始めた。
「まず、基本的なことから説明するがな。人形をはじめとした、人間をかたどったものってのは昔から形代として様々な呪術に利用されてきた。そのへんは聞いたことくらいあるよな?」
「ええ、まあ」
創作でもありきたりのネタだし、オカルトに詳しくない俺でも一応それくらいは話に聞いたくらいはある。
「それはもちろんガ○プラであってもだ。むしろ昔の市松人形などよりも身近にある分、現代においては人形としての認知は上だ」
「そうなんですか?」
「そうなんだ。で、形代ってのは元々は神霊や精霊といった、形を持たないものが宿るためにある。お前動画でひとりかくれんぼなんかやってたが、あれなんかまさにそのための儀式で、お前は知らず知らず降霊させてたわけだ。忘れたとは言わさんぞ?」
俺はおずおずとうなずく。
そりゃ、グ○カスタムに自動的に動き回る機能なんて俺はつけてないもの。水を吸った白米詰めた程度で動き出すなら今頃電気炊飯釜は次世代の人形制作に必須な道具としてひっぱりだこにされていることだろう。
というか、そんなことまで把握されているとは驚きだ。
「そうやって一度でも霊が降りた器物はな、その後は呪物という存在になる。これはもはや単なる道具ではなく、精神的なエネルギーを吹き込まれたことでひとつの生命体に近づいた証というか…いやいい、神のよりしろになったという事実から存在がただの電化製品からランクアップしてしまうとだけ覚えてくれ」
「ははぁ」
いまいち良くわからないが、促されるままにうなずく。
「問題はそこだ。お前は知らなかったかもしれないがな、そうやってお前がここしばらく適当な降霊しまくったせいで強力な依り代がぼんぼこ生み出された結果、この近辺の霊的バランスはただでさえ面倒だったのがそこに入り込もうとする奴らが増えたことによりさらに混沌と化してしまった。お前が余計なことして恨みを買ったせいで、こうして俺が事情を知ることができたのもその影響の一端だ」
言いながら男はWDDSAを指差す。
「先日知らん番号が携帯に掛かってきたから出てみたら、こいつからの電話でな。私後ろにいるの、とか有名な都市伝説よろしくやってくるから色々やって話を聞きだしたことでお前の存在がわかったんだ。こいつがたまたま俺をターゲットにしたことを深く感謝しろよ」
「感謝っすか」
といわれても、いまいちピンと来ない。
なおWDDSAは生みの親である俺に対してはがっつり敵愾心を持っているようで、さっきからフットワークも軽く俺の腕相手に果敢に殴りかかってきている。手首の代わりにつけた頭部のアンテナが服の上から刺さって地味に痛い。
「…他人事だな? あのな、俺以外が狙われていたら、最悪人死にが起きていた可能性があるんだぞ。そうなればこの哀れな人形は力ずくで祓わなければならなかったし、そうなりゃお前も間接的な加害者として刑事責任を問われる可能性が高かったんだからな」
刑事責任て。
「いや、だって俺のときは別に何も…」
「いったんは反応がなくなったから問題ないとでも思ったか? 言っとくが、それは憑依した霊が何らかの理由で器からいったん離れたというだけで、器自体は霊の受け皿としての力が消えたわけじゃない」
「ん? 違うんですか?」
そもそもただのガ○プラにそんな力があるわけが無い…のだが。
「ざっくりいってしまえば、お前には霊の入れ物となる器を生み出す才能があったんだよ。それを霊的に力ある土地で行使したせいで、開花しちまったんだ」
「なんと?!」
初耳である。よもやこの俺にそんなトンデモ能力があろうだなんて。
「で、だな。お前を放置しておくと、どんな問題があるかをざっくり説明しよう。まず、お前に器を作ってもらいたい浮遊霊などが今後ワンサカ集まる。今のままだと今後夜はひとりになれる機会は無いと思え」
「ええ?! いやですよそんなの!」
冗談じゃない、俺はプライベートを大切にしたい派なのだ。
しかし、刑事は肩をすくめばっさり切って捨てた。
「悪戯に霊を刺激するような真似をしつづけたお前が悪い、世の中にゃ知らなかったですまんことはごまんとあるんだ。それにまだ話は終わってない」
刑事さんは邪魔になったのか、スパーリングに飽きて自分の腕をよじよじ昇ろうとしてくるウイングドラゴンガ○ダムデスサンドアームズをいったん引き剥がし、再び机の上に置いた。こうしてみると意外と可愛らしいかもしれない…見た目がキモくなければ。
もう少しデザイン的に気を使ってやればよかったろうか。全パーツをリカちゃんにしてやるとか。いやないか。
「問題なのは、お前のその力を見込んで邪神やらなんやら呼ばれる奴らを下ろそうとしてる連中も狙ってくることだ。はっきりいってこいつらは霊なんかより余程やばいぞ、肉体も財力も地位も権力もあるから極東の小さな島国から一人かっさらう程度造作も無い。むしろお前に言うことを聞かせるため、一家まとめて戸籍が世界から消える可能性が高い。おまけに呼び出される奴は大抵この世界を滅ぼそうと考えるろくでなしばっかだからな、被害はこの世界にすら及ぶ可能性は高い、そうなりゃ世界規模の大戦犯確定だ」
「げええ?!」
と、とんでもないことになった。
「まさかこんな大事になるなんてまったく知らなかったんですよ! た、助けてください!!」
刑事さんは顔をしかめてうんざりしたように言う。
「まったく…やっとことの重大さが判ったようだな。まあ、こちらとしてもお前みたいな危険人物を野放しにするのは結果的に自分の首を絞めることになる。しょうがないが、とりあえずは警察の管理下に置かれることになると思え」
刑事さん曰く、国自体もこういう特例のため特別な役職を設けているのだそうだ。”管理下”というのはそこで働くことを意味するわけで、許可無く国外に出るなどは許されなくなる代わりに警察組織に就職が強制され、以降公務員として身元が保証されるようになる。一応対外的には警察官として扱われるそうな。
…まさか四浪して科学者の道を諦めたと思ったら国家公務員に転職することになろうとは、人生摩訶不思議なものである。
「まあ、そういうわけで生活は今よりは大分マシになるからそこは喜んでいい。家族も傍で暮らせるしな。ただし、今回ここで話したことについては他言無用でいること」
「やはり、秘密がばれるとまずい?」
「いいや。単に君の身が危なくなる」
「誠心誠意込めて黙らせていただきます」
「ああ、そうしてくれ。俺も同僚の死体はなるべくみたくない」
こともなげに言った刑事さんの言葉に、俺はびっくりした。
「刑事さんが同僚なんですか?」
「ああ。言わなかったか、安瀬乃署超常現象対策部特捜課の楪《ゆずりは》だ。今日から君直属の上司となる」
その言葉に俺は目玉をひん剥いた。
「いいっ!? いやいや、俺まだバイトが…」
「ああ、そっちはすでに組織から話がいってるはずだ」
「ええ…」
すでにここまで身元を抑えられてるとは思いもしなかった。
もしかしなくても、やばい組織なんじゃなかろうか…
後悔しても先にたたずである。
しかし、だ。
「なんだ、お前。やる気十分じゃないか」
「え?」
楪さんがにやり、口元を吊り上げて言う。
「お前、気づいてなかったのか? 顔がにやけてるぞ」
言われて俺も口元が上がっていることに今更ながら気づいた。
新しい事実、新しい環境、そして自分の新しい可能性。
どうやら、自分でも思っていた以上に心躍っていたらしい。
科学が未知の世界を切り拓くたび、様々なものを人類に与えてきた。
今日の発展と栄光、そして驚きと胸の高鳴り。未知なるものを真っ先に知ることができる職場なんて、最高ではないか。
そう、例えこの身はそうではないとしても、俺は心だけでも科学者でいたいのだ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ツギハ17ニチ19ジ
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そう、すべては終わったはず――だった。
今、俺は近所の警察署に呼び出されて説教されていた。
机を挟んで対面には俺より少し年上と思しき目つきの鋭い中年男性が、見覚えのあるガ○プラを肩に載せて座っている。
普通ならなんだこの取り合わせと考えるところだが、若かった頃ならアイドルとして通用してそうなイケメンだとこんなんでもかっこよく見えてくるから世間とはずるいものである。
「…おい、聞いてるか?」
「は、はい。聞いてます」
男の目つきが細められる。
いらん思索に耽っていたのがばれたようだ。
「知らなかったんだろうけど、それでもこうほいほいと呪物を生み出されると困るんだよねぇこっちも。ただでさえここは土地柄生まれやすいのに…」
うちに現れた、刑事と名乗ったこの男はそのまま俺を面談室へ蹴り込むと、不機嫌さを隠そうともせず一方的に話し始めていた。
「はぁ…」
話に身が入らないのは、いまいち彼の言ってることの意味がわからないせいでもある。
「…判ってないようだな。これ、これだよ」
それが相手にも伝わったようで、彼は言いながら肩の薄汚いガ○プラを掴み、机の上に置く。あちこちパーツが欠けたり、泥や砂で薄汚れてはいたものの、間違いない。俺が酒に明かせて造ったWDDSAだ…いやWFDSAだったっけ?
どちらが訪問販売協会で構成される団体の名称だっけ、と益体も無いことを考える間もなく。
「わたしウイングドラゴンガ○ダムデスサンドアームズ。いまあなたの前にいるの…」
「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!」
顔を寄せたら意外に可愛い声が発されて、思わず「スポンジ・ボブ」の玩具が喋ったのを目の当たりにした子供みたいな反応で飛び上がってしまった。
そんな様子を白い目で見ていた刑事がぽつりと言う。
「しゃべったじゃねえよ、お前のせいでしゃべるようになったんだよ」
「は? …え?」
いやいや、俺はガ○プラ組んだだけで何もしてないんだが?
「…はぁあ。そこからか。もしかしてお前野良か?」
「は? 野良…?」
「しょうがねえ、一から説明してやる、座れ」
「あ、はい」
俺が再びパイプ椅子に着席したのを見計らい、刑事さんは話し始めた。
「まず、基本的なことから説明するがな。人形をはじめとした、人間をかたどったものってのは昔から形代として様々な呪術に利用されてきた。そのへんは聞いたことくらいあるよな?」
「ええ、まあ」
創作でもありきたりのネタだし、オカルトに詳しくない俺でも一応それくらいは話に聞いたくらいはある。
「それはもちろんガ○プラであってもだ。むしろ昔の市松人形などよりも身近にある分、現代においては人形としての認知は上だ」
「そうなんですか?」
「そうなんだ。で、形代ってのは元々は神霊や精霊といった、形を持たないものが宿るためにある。お前動画でひとりかくれんぼなんかやってたが、あれなんかまさにそのための儀式で、お前は知らず知らず降霊させてたわけだ。忘れたとは言わさんぞ?」
俺はおずおずとうなずく。
そりゃ、グ○カスタムに自動的に動き回る機能なんて俺はつけてないもの。水を吸った白米詰めた程度で動き出すなら今頃電気炊飯釜は次世代の人形制作に必須な道具としてひっぱりだこにされていることだろう。
というか、そんなことまで把握されているとは驚きだ。
「そうやって一度でも霊が降りた器物はな、その後は呪物という存在になる。これはもはや単なる道具ではなく、精神的なエネルギーを吹き込まれたことでひとつの生命体に近づいた証というか…いやいい、神のよりしろになったという事実から存在がただの電化製品からランクアップしてしまうとだけ覚えてくれ」
「ははぁ」
いまいち良くわからないが、促されるままにうなずく。
「問題はそこだ。お前は知らなかったかもしれないがな、そうやってお前がここしばらく適当な降霊しまくったせいで強力な依り代がぼんぼこ生み出された結果、この近辺の霊的バランスはただでさえ面倒だったのがそこに入り込もうとする奴らが増えたことによりさらに混沌と化してしまった。お前が余計なことして恨みを買ったせいで、こうして俺が事情を知ることができたのもその影響の一端だ」
言いながら男はWDDSAを指差す。
「先日知らん番号が携帯に掛かってきたから出てみたら、こいつからの電話でな。私後ろにいるの、とか有名な都市伝説よろしくやってくるから色々やって話を聞きだしたことでお前の存在がわかったんだ。こいつがたまたま俺をターゲットにしたことを深く感謝しろよ」
「感謝っすか」
といわれても、いまいちピンと来ない。
なおWDDSAは生みの親である俺に対してはがっつり敵愾心を持っているようで、さっきからフットワークも軽く俺の腕相手に果敢に殴りかかってきている。手首の代わりにつけた頭部のアンテナが服の上から刺さって地味に痛い。
「…他人事だな? あのな、俺以外が狙われていたら、最悪人死にが起きていた可能性があるんだぞ。そうなればこの哀れな人形は力ずくで祓わなければならなかったし、そうなりゃお前も間接的な加害者として刑事責任を問われる可能性が高かったんだからな」
刑事責任て。
「いや、だって俺のときは別に何も…」
「いったんは反応がなくなったから問題ないとでも思ったか? 言っとくが、それは憑依した霊が何らかの理由で器からいったん離れたというだけで、器自体は霊の受け皿としての力が消えたわけじゃない」
「ん? 違うんですか?」
そもそもただのガ○プラにそんな力があるわけが無い…のだが。
「ざっくりいってしまえば、お前には霊の入れ物となる器を生み出す才能があったんだよ。それを霊的に力ある土地で行使したせいで、開花しちまったんだ」
「なんと?!」
初耳である。よもやこの俺にそんなトンデモ能力があろうだなんて。
「で、だな。お前を放置しておくと、どんな問題があるかをざっくり説明しよう。まず、お前に器を作ってもらいたい浮遊霊などが今後ワンサカ集まる。今のままだと今後夜はひとりになれる機会は無いと思え」
「ええ?! いやですよそんなの!」
冗談じゃない、俺はプライベートを大切にしたい派なのだ。
しかし、刑事は肩をすくめばっさり切って捨てた。
「悪戯に霊を刺激するような真似をしつづけたお前が悪い、世の中にゃ知らなかったですまんことはごまんとあるんだ。それにまだ話は終わってない」
刑事さんは邪魔になったのか、スパーリングに飽きて自分の腕をよじよじ昇ろうとしてくるウイングドラゴンガ○ダムデスサンドアームズをいったん引き剥がし、再び机の上に置いた。こうしてみると意外と可愛らしいかもしれない…見た目がキモくなければ。
もう少しデザイン的に気を使ってやればよかったろうか。全パーツをリカちゃんにしてやるとか。いやないか。
「問題なのは、お前のその力を見込んで邪神やらなんやら呼ばれる奴らを下ろそうとしてる連中も狙ってくることだ。はっきりいってこいつらは霊なんかより余程やばいぞ、肉体も財力も地位も権力もあるから極東の小さな島国から一人かっさらう程度造作も無い。むしろお前に言うことを聞かせるため、一家まとめて戸籍が世界から消える可能性が高い。おまけに呼び出される奴は大抵この世界を滅ぼそうと考えるろくでなしばっかだからな、被害はこの世界にすら及ぶ可能性は高い、そうなりゃ世界規模の大戦犯確定だ」
「げええ?!」
と、とんでもないことになった。
「まさかこんな大事になるなんてまったく知らなかったんですよ! た、助けてください!!」
刑事さんは顔をしかめてうんざりしたように言う。
「まったく…やっとことの重大さが判ったようだな。まあ、こちらとしてもお前みたいな危険人物を野放しにするのは結果的に自分の首を絞めることになる。しょうがないが、とりあえずは警察の管理下に置かれることになると思え」
刑事さん曰く、国自体もこういう特例のため特別な役職を設けているのだそうだ。”管理下”というのはそこで働くことを意味するわけで、許可無く国外に出るなどは許されなくなる代わりに警察組織に就職が強制され、以降公務員として身元が保証されるようになる。一応対外的には警察官として扱われるそうな。
…まさか四浪して科学者の道を諦めたと思ったら国家公務員に転職することになろうとは、人生摩訶不思議なものである。
「まあ、そういうわけで生活は今よりは大分マシになるからそこは喜んでいい。家族も傍で暮らせるしな。ただし、今回ここで話したことについては他言無用でいること」
「やはり、秘密がばれるとまずい?」
「いいや。単に君の身が危なくなる」
「誠心誠意込めて黙らせていただきます」
「ああ、そうしてくれ。俺も同僚の死体はなるべくみたくない」
こともなげに言った刑事さんの言葉に、俺はびっくりした。
「刑事さんが同僚なんですか?」
「ああ。言わなかったか、安瀬乃署超常現象対策部特捜課の楪《ゆずりは》だ。今日から君直属の上司となる」
その言葉に俺は目玉をひん剥いた。
「いいっ!? いやいや、俺まだバイトが…」
「ああ、そっちはすでに組織から話がいってるはずだ」
「ええ…」
すでにここまで身元を抑えられてるとは思いもしなかった。
もしかしなくても、やばい組織なんじゃなかろうか…
後悔しても先にたたずである。
しかし、だ。
「なんだ、お前。やる気十分じゃないか」
「え?」
楪さんがにやり、口元を吊り上げて言う。
「お前、気づいてなかったのか? 顔がにやけてるぞ」
言われて俺も口元が上がっていることに今更ながら気づいた。
新しい事実、新しい環境、そして自分の新しい可能性。
どうやら、自分でも思っていた以上に心躍っていたらしい。
科学が未知の世界を切り拓くたび、様々なものを人類に与えてきた。
今日の発展と栄光、そして驚きと胸の高鳴り。未知なるものを真っ先に知ることができる職場なんて、最高ではないか。
そう、例えこの身はそうではないとしても、俺は心だけでも科学者でいたいのだ。
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ツギハ17ニチ19ジ
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