【本編完結】転生令嬢、目指すはスローライフ〜イベント企画担当者ではないのよ!

ブラウン

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本編

第72話 ジェイシス様我が家にお越しです

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 それから慌ただしく、私は着せ替え人形のような心境だった。さっき着ていた洋服で良いのでは?自然体で良いのでは?とお母さまに伝えたら、第二弾般若顔。ドナドナされ、今お迎えに上がりました。

「ようこそ、スタンフォート公爵殿」

「申し訳ない、モンテスキュー侯爵殿。アイリ嬢が領地に行くと聞いて居ても立ってもいられず、こうしてきてしまった。本当に申し訳ない」

「いえいえ、中へどうぞ。アイリ、ガゼボに案内して差し上げなさい」

「はい、スタンフォート公爵様。お久しぶりでございます。お会いできて嬉しいです。ガゼボに案内いたしますので、どうぞこちらに」
 
 よし、カーテシーと定型挨拶が言えたわよ。淑女教育の賜物。お母さまのお顔が怖い。何かいけなかったかしら。はて?

 スタンフォート公爵様が腕をそっと出されたので、手を添えガゼボにご案内した。

「突然で申し訳なかった。アイリ嬢」

「いえ、でも、お仕事大丈夫ですか?」

「大丈夫です。すでに今日の分は終わってますから。先へ先へと仕事をこなしていかなければ、溜まってしまいますが、今日はもう大丈夫です」
仕事ができる人は違うなぁ。

「それならよかったです。こちらにどうぞ」

「これはすごい。短時間でこれほどの食事を用意していただけるなんて申し訳ない。ちょうど昼を抜いて仕事をしていたのでありがたいです」
 なんですと?昼を抜いて仕事なんてどんなブラック企業なのですか。それは体に悪い。ビシッと言わなければ。

「お昼ご飯を抜いてまで仕事をされていたのですか?他の部下たちは?」

「部下の者もそういえば一緒に仕事をしていましたね」

 パワハラ上司か?上司が昼ごはんで席を立たずに仕事をしていると部下も仕事をすることになるんだよ。昼ごはんにいけないんだよ。昼の節電で電気消せないんだよ。電気消しても、パソコンの灯りで顔が浮かび上がっているんだよ!上司が残業していると定時退社できないのよ。はっ、いかんいかん、前世の上司を思い出したわ。それをわかっていない上司はダメ上司。

「ジェイシス様、それは体に悪いですね。ご飯は朝昼晩ときちんと食べないと体を壊します。食べすぎてもブクブク太りますし、時間帯が遅くても太ります。程よい量と適宜な時間に食べることをお勧めします。そして何より、上司が昼も夜も仕事をしていると部下が休憩が取れないのですよ。昼休憩時間1時間は必要です。それに3時ぐらい、おやつの時間は大事。そして定時退社は必要です。みんな家族や友人や恋人と過ごす時間を与えないでどうします?上司として失格です!」
 よし、言い切った。あの時のムカつく上司を思い浮かべて言ってしまった。
 びっくりした顔で見つめられてしまった。

「ア、アイリ嬢。素晴らしい考えです」
 手を握られた。
「そうですね、私が昼、仕事をすれば部下も食事をせずに仕事をし、夜も仕事をしていますね。これは改めなければいけないですね。あなたとの時間がないと思ってたのですが、自分に非がありました。テイジタイシャ?というのはなんですか?」

「えっ、定時退社は、例えば8時からの夕方5時までが仕事時間としましたら、5時で仕事を切り上げて終わりにするという決まり事です。それ以上は仕事をしてはいけないということです。それにお昼休憩を1時間ぐらい取れば、ご飯を食べ、少し目を閉じているのでもいいのですが休息をして午後の仕事を頑張ることにつながります。働き方改革は大事ですよ」
そう、前世も働き方改革で在宅勤務などをしていたが、いかんせん、紙を使用したものが多く、実際会社に行かないと仕事ができなかったのよ。電話はかかってくるけど書類がない。負の連鎖だったわね。数字を取るための在宅勤務だったな。ダメダメ、今はそんな前世の思い出は不要。

「素晴らしい考えだ。なるほど効率性を上げるには休憩は大事ですね。部下と話し合ってみますね」

「は、はい。上司と部下の報連相は大事ですからね」

「?ホウレンソウ?野菜ですか?」

「すみません、前世の仕事の言葉で報連相、報告・連絡・相談は大事ということです。悩みやストレスを抱え病気になってしまいますから、きちんと報告し、連絡し、悩みや困ったことは相談するというものです。ただし、嫌な上司にはできないですけどね。それが辛いところです。あっ、この料理、力作なので食べてください。そういえばお酒飲まれますか」

「お酒ですか?少しいただいてもいいですか?」

「我が領地で作っているお酒です。どれが好みか飲み比べしてください。小さいグラスなので酔わないとは思いますが、ジェイシス様はお酒はお強いのですか?」

「まぁ、嗜む程度には飲むよ」
 だんだん砕けた口調にお互いなってきた。少し営業でもしちゃおうかなぁ。

「こちらがウィスキー、魔法で熟成したので、深みがどうかなぁ。私は飲んでないのでわからないです。そしてこれがショーチュー。このまま水で薄めてもいいのですが、レモンを入れて爽やかにしたりしてもいいです。ジャポング皇国の梅もなかなかいいと思います。そしてアップルシードル、こちらは女性向けかなぁ。どうぞ飲み比べしてください、そして感想を教えてください」

「では、まずアップルシードルから、確かに女性向けだね。伯母上や母上が好きそうだな。次がショーチュー?これはうまい。水でもいいし、レモンを入れてもいい。なるほど。最後がウィスキー?というものか。うわ、これはうまいな。氷で薄めて飲んでもいい。氷でちびちびと飲んで会話する。これはいい。これも前世のものですか?」

「そうです。ドリガン親方にだいぶ無理を言っているので,美味しいお酒と言えばウィスキーかなと思ったのです。ドリガン兄弟はこのまま飲んでますよ。もう少し味わってなんでと言っているのですが、グイグイ飲んでしまうのです」

「あはは、ドワーフだから酒の強いものが好きだからな。だが、この料理とお酒で満足だ。毎日こうしていたいね」
 はわわわ、イケメンが、イケメンがウィンクしている。心臓に悪いぞ。お酒を飲んでいないのに顔が熱いなぁ。参った。話を変えないと。営業、営業。そしてもう少し働き方改革のことを力説しよう。

「お気に召されて嬉しいです。そう言えば先ほど仕事には休憩が必要と言っていたのですが,こういうクッションで目を瞑ってリラックスするのもいいと思うのですが、座ってみませんか?」

「大きなクッションですね」

「貴族の方は地べたには座らないでしょうから、ソファーや椅子にこのクッションを置き、座ってみてください」

「こ、これは、包み込まれるような感触、寝心地が良い。寝てしまいそうだ」

「これをお昼休憩に使えば、リラックスできると思うのです。そして、アラームです。寝過ごすことがないようセットしておけば音が鳴る仕組みです」
あの、人をダメにするやつをどうにか再現できないかと、スライムを使ったところ出来てしまった。すぐ、水になったり、色々試行錯誤し、核を抜いて凍らせたが、全くダメでそのまま放置していたらビーズみたいになった。この発見はすごい。秘匿です。

「これを売ってくれないかなぁ。アラーム?も一緒に、そうだな10台ほど、融通してもらえないだろうか」
堕ちた(言ってみたかった)
「お父さまに聞いてみます」

「ところで領地に帰るというのはどういうことですか?あと少しで学園入学ですよね?準備は終わったのかい?」

「準備は終わりました。今回、ルルーシェ様を領地に遊びに来ないかと伝えたところ、王太子ご夫妻以外がうちの領地に遊びに来ることになってしまったので、大忙しとなりました」

「は?そう言えば、国王陛下から数日不在にして良い日はいつが大丈夫かと提言があり、宰相以下が大慌てで調整していたが、それなのか!なるほど、そしてアイリ嬢が色々用意することになってしまったということかな」

「そうです。国王陛下はうちを拠点に隣の辺境伯へついでに視察に行くと言っているのです。そしてカイデール殿下が来るので、お兄さまのご学友も来ると言っているのですよ。もう、王城の料理人を貸して欲しいとお父さまに言ったところです。明日あたり進言してくれるはずです」
 抗議の言葉をジェイシス様に述べてもしょうがないけど、親戚でしょ、なんとかしてという思いも込めて言ってみた。

「なるほど、王城の者を行かせるのは大変だから、うちの王都の料理人を貸しましょう。私が食べることが少ないので、作りたくても作れないと不満を漏らすものもいるので、ぜひ応援させてください。これほどの美味しい料理を学べることに料理人も喜ぶでしょう。できれば私も行ってよろしいですか」

「えっ?ジェイシス様もお越しに?えー、あのじゅ、準備が、えっ王族と同じスペースでよろしいのですよね」

「いえ、私はアイリ嬢と裏方に回りますよ。あなたを助けたいです」

「いえいえいえ、それは滅相もございません。私、海でルーと遊ぶ予定がありますから」

「では、その間は私は仕事をしていますよ。高位になると転移便もあるので、大丈夫ですよ」
 仕事持参ですか?転移便?魔鳥ではないのか。

「あの、お父さまに相談させていただいてよろしいですか」
 お父さまに丸投げよ。接待を丸投げされたのだから、お断りの言葉はお父さまにお任せよ。

「よい返事をお待ちしてますよ。それにしても美味しい料理に美味しい酒だ」

「お土産に持ち帰りますか?少しだけならお酒ありますし、料理はマジックバッグに入っているのでいつでもお昼休みのご飯を食べられます。部下さん達にも食べさせることができる量です」

「美味しい料理はありがたい。ぜひいただくよ。それから良い返事をお待ちしております」

 それから手の甲に口付けされた。ニコリとされた。

 そしてお土産を渡し帰っていきました。

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