枢要悪の宴

夏草

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外伝

【R18】湖畔の悪魔・上

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※※※男性受け触手異種姦あります※※※
※※※本編とは関係のない、読み飛ばせる話となっております※※※


(はぁ、面倒くさいな)
 スラヴレンの湖畔の一角。テオファン司祭は生あくびをしながら、夜の見回りをしていた。
 この世へ姿を現す邪悪な悪魔を祓う。それは聖職者の仕事であるが故、悪魔が盛んに活動するといわれる夜の見回りは彼らにとって欠かせない仕事となっていた。しかし、当番制でこそあるが、一週間ほどすると回ってくるこのパトロールはひどく退屈なものだった。かといって、時たま【お世話になっている】ため、やらないという選択肢もないのだが。
(悪魔は現れないだろうな……ここ最近は晴れが続いたから)
 はたして悪魔が昼間はどうしているのかは知らないが、日中に曇りが続けば相応に遭遇の頻度があがることは経験上把握していた。雨の日や、今日のように月がくっきりと浮き出るような夜は、まずお目にかからない。
(はやく寝たい。眠いな)
 何度目かになるかわからない欠伸をすると、テオファンはカンテラの光をぐるりと周囲に撒いた。こうして見ても変わったものは何一つもない。
(帰るか)
 そう思い、ぬかるんだ土を踏みしめ、その先の道へ背中を向けると――喉にどろりと残るような『硫黄の臭い』がした。
「――ッ!」
 近い。なぜこんな近くになるまで気づかなかったのだろう。そんなことを考える暇もなく、テオファンはただ前に転がった。
 刹那、背後から何かが倒れてきて、暗闇の湖畔の土と葉を舞い上がらせる。それを避けたテオファンは立ち上がると『臭い』の元を見据えた。
「……なるほど」
 巨大な体であった。太く長い胴がそびえたち、大量の腕のようなものが頭部から生えている。シルエットとしては樹木に近いが、生物的な質感を持った深緑の肌を持っており、落ちたカンテラと月の光を反射して両生類に似た艶を映していた。
「相変わらず気色悪い見た目をしていますね」
 悪魔は何本もの腕を鞭のようにしならせて地面へと叩きつけてくる。月明かりのおかげで視界の確保には苦労しないが、この木々が並んだ立地では動き回ることが難しい。テオファンは樹木の影等をうまく使い、避けながら相手をさらに観察した。
 腕が密集した部分――木に例えるなら幹の上、樹冠だろうか――の奥には、どうやら口と思わしき器官があるらしい。時折見える白い臼歯と、その間を赤い舌が躍るように動いていた。ならば、眼球もどこかにあるのだろうかと探したが、ゆらゆらと絶え間なく動き回る『腕』のせいで見つけられそうにもない。
(弱点を見つけられれば楽だったんだけどな。まぁ仕方ない)
 そしてこの悪魔に対してテオファンが発見した大きな点がひとつある。それは「この悪魔は本当の樹木のように移動することが出来ない」ということだ。草が根をはるように、こいつも両脚と思わしき部位を土の中に深く沈めている。
 動けないならば、なぜこいつが突然現れたのかは謎であるが、悪魔の生態を研究する気はないので今は現物対処のみとする。
「……」
 何度目かの腕の打撃。それも難なく躱すと、テオファンは指をくい、と引いた。
 ひぅん、という悲鳴のような音が鳴り、悪魔の『腕』に糸が絡みつく。先ほどからの打撃を避けている間にこの空間一帯に糸を設置していたのだ。相手が動かないならば、逆に『巣』に堕としてしまえば勝敗はいとも簡単につく。
 指先にわずかな抵抗を感じつつも、テオファンは両腕を素早く振り下ろした。
≪Gi。Gigigigigigiy!!≫
 上がる度し難い悲鳴。引き千切れていく腕たち。ぶちぶちと肉感的な音を立てながら落ちていく腕は、細長いものから太いものまで千差万別だ。しかし、それらは切り落とされた後でも一様にびくびくと動いており、テオファンの足元をどす黒い色の体液で汚していった。
「……まぁ、でしょうね」
 だが、それでもテオファンの顔色は優れない。なぜなら、悪魔の切り落とされた腕の先端は、再び肉が盛り上がっていき、数回の瞬きのうちに生え戻ったからだ。
 悪魔の再生能力。持ち得ている種もそれなりに存在することは知っており、この程度で焦る要素は何一つない。それを考慮して、先ほどの攻撃は仕掛けたつもりだった。
 大量の腕が動いていることで直接的に糸をまとわせることが出来なかった太い胴体。今そこには、テオファンの鋭い糸が何重にも巻き付いていた。どれだけ再生能力を持っていようとも、一瞬で体を粉々にされてしまえば悪魔といえど死に至る。
「伐採のお時間です」
 胸の前で握った両手両腕を、大きく速く開く。巻き付いた糸を交差させ、より強い力でその肉を分断する。どんな刃物より切れ味のいい武器――のはずだったが。
「……!?」
 指先から伝わったに、ぞわりと、する。
 
 テオファンの糸の切断方法の原理は簡単だ。糸が繋がった指と腕の速度と、糸の幅という極小の接地面積からもたらされる斬撃である。
 どんなに速い剣劇でも、刃物を振るより指を曲げたほうが速い。その速度が覆らなければなによりも鋭利な糸となる。たとえ相手が鋼のような剛体であろうと、速度と糸の強度さえあれば原理的には切断が可能である。実際にやったことはないのだが。
 つまるところ。速度がなければただの糸。裁縫に使われる糸と何ら変わりはない。
 
 だから、鳥肌が立った。
 この悪魔の幹の内部が、これほどまでに速度を押し殺す粘性をもっていることに。
 たとえ表面は切断できても、ここまで速さを喰う物体が相手だと歯が立たない。その上、あの悪魔の体内に糸が取り残される。
 まずいと瞬時に判断し糸を切断しようとしたが、悪魔がその体を痛みにくねらせるほうが速かった。
「あぁッ!」
 悪魔の体の動きと連動するように、今度はテオファンが引っ張られる。糸が繋がっている指輪を支点にし、体が無理やりに動かされる。ごきり、と嫌な音が人差し指からしたが、その程度の痛みには構っていられず、弾き飛ばされて近くの樹木に体を強かにぶつけた。
 糸であることの第二の弱点は、相手と繋がることだった。もし相手が己より速く動けば糸の主導権はあちらへと移ってしまう。
「がはっ……げほ、ぉえッ……」
 背中やら腹やらを打ち付け、込みあがってきた酸味を口から吐き出す。気分が悪い。世界がぐるぐると回っている。立ち上がろうと両手を地面につけば、脱臼した指が悲鳴をあげた。
「ぁッ、う。……じょ、じょう、だん」
 ――ですか。そんな軽口を言うまでもなく、テオファンは片足を捕まれた。
 
 
「は、うぐ、ぅう……ふー……ッ」
 体中に滴る粘液を吸ったカソックが、ぐっちょりと濡れて重くなっていた。
 悪魔に捕らえられて果たしてどのくらい時間が経ったのだろうか。すでに両手は使い物にならないことになっていた為、テオファンはいいように嬲られていた。一応、夜の見回りはあまりにも長時間戻らないと代わりの者が探しに来る制度にはなっているが、その時間まであとどのくらいだろうか。
「……ぅ、うむぅう……」
 ぐちゅり、と『腕』が動いた。すでに体内へ侵入しているソレからもたらされる歪な感触を、テオファンは唇を噛みしめて耐えた。
 カソックの形こそ残ってはいるもの、衣服は乱雑に破かれ、下半身に至っては下着までもがただの布切れと化していた。悪魔は『腕』をテオファンの体中に絡ませ、その何本かは後孔より体内へと潜り込んでいた。
 悪魔によってはをするものもいるのは知っている。彼らの美醜の価値観など知ったことではないが、今回、どうやら自分は好みのタイプであったらしい。捕らえられるや否や、こうして服を取り払われ、粘液を塗布され、終いには醜い悪魔の一部を咥えこまされている。生きたまま内臓を喰われたり、意識のあるまま飲み込まれるよりかは『命があるだけマシ』ともいえるが、屈辱は拭えなかった。
「つ、ぅ……」
 細い『腕』が、形の良い耳とはだけた胸元へと伸びる。首を振って逃れようとしても、繊細な器官の中にもぐりこまれたものを無理に引き離すこともできず、テオファンの表情が歪む。
 耳の中に入ったものはあまり奥深くまでは進まず、浅い場所をニチニチと出し入れするだけだった。たったそれだけではあるが、粘液の音が直接鼓膜へと響き、ギリと強く奥歯を噛む。胸に伸びた『腕』は、すでに硬くなっている乳頭をつまむと、きゅうと甘く噛んだ。
「ひっ!う、ふぅー、は……」
 声など出してたまるかと深呼吸し、真っ赤な顔のまま沸き上がる快楽を押さえる。こんな異形の化け物に犯されているというのに、経験豊富な肉体は素直に刺激を受け取っていた。
 同年代と比べれば、テオファンは『そういった経験』は豊富だった。自分の容姿が他者にどのような影響を与えるかなど、とうに知っていた。
 相手が女性であれ男性であれ、年上であれ年下であれ。求められれば拒否はせず、すべて受け入れて――手の中に堕としてきた。性行為など意味を成さない交わりで、欲しいのはその後にある利益である。
 だから、こんな悪魔との交わりは――端的にいればである。
(くそ、くそくそ……なんで俺が悪魔とセックスしなきゃいけないんだよ……!)
「んぁなぁ!あ、くぅゥ……ッ!」
 脚を大きく広げられ、悪魔の眼に晒されるようにして犯される。別にこれが人間であったなら許したかもしれない。しかし相手は悪魔だ。許せるわけはない。
 粘液が泡立つほど激しく突き上げられ、テオファンの薄い腹が内側から形を変えられる。苦しさで息がつまり、それでも解放されることはなく胸を吸われて耳を弄られる。完全に玩具として扱われていても、じわじわと重なった気持ちよさはもはや隠しきれずに、中心の反応として如実に表れていた。
「う、うぅうーッ、ふぐぅうう!」
 つま先を丸めて血が出来るほど唇を食い締めても、両脚の間にある自身はすでにそそり立ち、たらたらと透明な汁を流している。
 抗えない法悦。止むことのない凌辱。すでに関節が外れているのにも関わらず、テオファンは両手を握りしめた。
 そして、奥を突き上げられ、胸を摘まみあげられ――すべての刺激が一気に押し寄せたとき、我慢していたものが決壊した。
「ひ、ぁああぁッ!」
 びくびくと身体は意志に反して痙攣し、張り詰めていたものからどろりと白い体液が噴き出す。悪魔は嬉しそうにそこへも『腕』を絡ませると、しゅるしゅると扱きあげた。
「あッも、もやめ、やっめろぉ……!」
 達したばかりの場所を強引に触れられる耐えがたい感覚に悲鳴をあげる。脚を必死に動かしても、がっちりと固定されている為なんの抵抗にもならない。口からは制止の言葉が出ているものの、悪魔に言葉が通じるはずもない。それでもテオファンは、もはや反射的な反応として声を上げた。
「やめ、や、あ。あぁああッ!」
 二度目の痙攣。今度は白く濁ったものではなく、透明な液体を吐き出す。量の多いそれが、パタパタと地面へと染み込んでいった。
 
 
 その頃。スラヴレンの教会にて。
 ルイスはなかなか帰ってこないテオファン司祭のことが気にかかり、少々早めではあるが、彼を迎えに行こうとしていた。
 何か事件に巻き込まれた可能性もあるかもしれない為、戦いに使うナイフを袖の中に仕込みながら、カンテラを用意する。
(司祭は……湖畔のほうまで行くと言っていたな……)
 ブーツの靴ひもを結び直すと、ルイスは教会を出ていった。
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