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4-2.ある寒い日の夜(番外編)
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しおりを挟む王輝は寒がりだ。
これは遼と王輝が関係を持ち始めた当初から、遼は感じ取っていたことだった。そもそも王輝本人も「冷え性だ」と言い、冬は「寒い寒い」と口癖のように呟いていた。
「今夜は冷え込みそうですので、暖かくしておやすみください」
ニュースキャスターがそう締め括り、ニュースは終了した。時刻は二十二時。次に始まった特集番組を横目に、遼はキッチン横に設置してあるウォーターサーバーから冷たい水をコップに注ぎ、一気に飲み干す。風呂から上がったばかりの火照った身体に、冷たい水が沁み込んでいき、遼は心地よさにふぅと息を吐いた。
「あつっ……」
長く湯船に入っていたこと、そして、元々暑がりの遼は、厚めのスウェットを腕まくりした。
もう一杯と、遼がコップに水を注いでいると、玄関から何やら音が聞こえてくる。毎晩の訪問者に、遼はすっかり慣れてしまったが、思わず頬が緩む。
「ただいまー!あー!寒かった!」
慌ただしくリビングに入ってきたのは王輝だ。ロングコートにマフラー、そして手袋をしている。王輝の細身のラインは服で隠され、着込んだせいで膨れたフォルムだ。その格好のまま、ヒーターの前に駆け寄り、暖を取るようにヒーターに手をかざす。
「おかえり。飯は?」
「んーロケ弁食べてきた」
「風呂沸いてるぞ。俺さっきまで入ってたから、寒くないと思う」
「やった」
「ちゃんと入れよ」
「はいはい、わかってる」
王輝は頬をむくれさせながら立ち上がり、風呂場へと向かった。遼はその背中を見送ったあと、ふふっと幸せな笑みをこぼす。
冬の寒さが厳しくなり始めた時から、王輝はこうやって毎晩遼の部屋に帰ってくるようになった。王輝曰く「遼の近くにいると暖かい」とのことだ。暑がりの遼の体温は、王輝にとって砂漠の中のオアシスのような存在だ。それに、遼の部屋は、ヒーターと加湿器があり、いつも快適な環境にしてある。それは喉や肌のケアのためだった。それも王輝にとってはお気に入りだった。
本来ならば王輝の部屋もそうあるべきで、マネージャーの須川がヒーターや加湿器を完備したが、王輝が面倒がって使用していないのが現状だ。
もちろん、王輝は自分の部屋で過ごすこともある。しかし、なぜか遼の部屋のほうが暖かい気がして、勝手に部屋に上がり込んでは、遼のベッドで眠った。後からベッドに入ってくる遼の体温が心地よく、王輝はいつもより良く眠れる気がした。遼が先に眠っている時は、王輝はそっとベッドに忍び込んで暖を取った。すでに暖かくなっている布団の中は最高に気持ちよかった。
と言うことで、王輝と遼は最近は一緒に眠る日々が続いていた。ただ眠るだけの時もあるし、セックスになだれ込むこともある。今日はどちらだろうと、遼はぼんやりと考えながら、コップに揺れる水を飲み干した。
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