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第1章 人狼さん、親友探しの旅に出る
10話 人狼さん、レクチャーされる
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目の前には程よく火が通り、肉汁の滴る焼けた肉が一つ。
ただし、先程まで死闘を繰り広げた人型の豚が素材である。
さて、どうしたものか。
例の豚さんだと思うと二の足を踏んでしまうが、食欲を誘ういい匂いだ。焼いた肉の匂いにつられて体が空腹を訴えてくる。
確実に美味しいと思われるが、素材が素材のなので矢張り躊躇してしまう。
生きていた『本体』を知っているから残酷な気がしてしまうけれど、それって偽善的な考え方だよね。しかも私、一匹自分で殺しちゃってるし。
うーん、でも人型……。
「……」
「どうした? 美味いぞ? これぐらい食えないと、この世界の食いモン食えないぞ?」
思わず渡された肉をガン見していると、ニヤリと笑いながらすすめてくる。
確かにノアの言うことも一理ある。話を聞く限り、魔物の肉はこの世界では普通に食べられているようだし、食わず嫌いは駄目だろう。
元の世界でだって、見てはいないけど生き物の命を奪っていたわけだし。その肉を平気で食べてたんだんだから、同じことだと言えるよね。……多分。
起き上がったせいか食欲もそれなりに出てきたようなので、思い切って口にしてみる。
「ん、美味いな」
味は脂の乗った豚肉っぽい。
本体が筋肉質だったので硬い肉だと思ったけど、予想以上に柔らかい歯ごたえだ。それが適度な塩と香草で味付けされており、シンプルながらも肉の旨味を引き出している。
何だか癖になる味だ。拒否感は全然沸かないし、素直に美味しく食べられる。
「まだ食うか?」と差し出され、礼を言って受け取る。
(肉ってこんなに美味しかったっけ? ハイオークとかいう高級肉だからなのかなぁ。それとも、人狼の体だから味覚が変ったのかな。いくらでも食べられそう)
そんなことを考えながら口にしていると、最後の肉を食べ切ったノアが「食い足りない」と呟き、側においてあった鞄から、板に乗った巨大な肉の塊を取り出す。
「え?」
一瞬、見間違えたのかと凝視する。
が、目の前には変わらず大きな肉の塊が鎮座している。どう見ても鞄に入る容量を超えているのに、それをノアが難無く取り出したのだ。
「あれ? 収納アイテムって初めて見る?」
凝視しているのに気づいて声をかけてきたノアに、無言で頷く。
「もしかして、恩恵とか無い世界?」と問われ、「無いな」と返す。
マジか……と真顔で呟かれ、この世界ではこれが普通なのだと納得する。
そして、おもむろに鞄を手にして、こちらに見やすいように掲げてくれる。
それは、肩から下げられるタイプの平たい皮の鞄で、至って普通の鞄に見えた。
幅はそれなりにあるようだが、これに両手で抱えるぐらいの肉の塊が入っていたとは、実際に見た後でも信じられない。
「この鞄は《収納》の恩恵持ちが作ったやつで、外見以上の容量を持ってるんだよ。こう見えても、これはハイオーク三体ぐらいなら軽く入るんだぜ」
その分値段がメッチャ高いんだけどな! と胸を張られ、平たい鞄を凝視してしまう。
……うん、原理はわからないけど、そういうモノなんだろう。あれだ、いわゆるゲームで言うところの便利アイテムだ、きっと。
けど、沢山の荷物が小さい鞄に納められるっていうのは、便利そうだと思う。
「で、これは《浄化》の恩恵持ちが作った、洗浄用の魔道具な。血まみれだったお前が今綺麗なのはこのおかげだぞ」
「?」
そう言って、小石の様なモノを投げてくる。
そういえば、血まみれで倒れたはずだったのに、今はその臭いさえしていない。
どうやら、この魔道具とやらで綺麗にしてくれたらしい。
受け取った小石を手のひらに乗せる。
見た限り親指ぐらいの大きさで、普通の黒い平たい小石に見えるが、表面になにやら模様が掘られているのがわかる。
「それを手にして『浄化』と唱えると、表面に見えている浄化の魔法陣が発動する仕組みになってるんだ。一度使うとお終いだから、消耗品としていくつか持っておくのが常識だな。俺らみたいに至近距離で戦うタイプには必須アイテムだし、旅にも重宝される」
「魔法陣……」
「あぁ。で、鞄の中身も収納の魔法陣が描かれていて、それで空間を広げてるんだそうだ。で、これらを魔道具と呼んでいて、この世界では日常品として一般的に使われている。ここまでOK?」
「た、多分」
突然始まったこの世界の講釈に、驚きながらも頷く。
神託の通りに色々教えてくれるらしいので、有難く傾聴することにする。
「他には……これだな」
そう言いながら、次は傍に置いてあったランタンを翳す。
アンティーク風のランタンで、真鍮で出来た飾り気のない長方形の骨組みに、シンプルなガラスがはまっている。装飾品なのか、赤い石がはめ込んであるのが印象深いが、いたって普通のランタンだ。
ただ、炎の代わりにぼんやりとした光の玉が中に浮いており、それが周囲を優しく照らしている。あまりに幻想的な風景に、思わず凝視してしまう。
でも、こちらでは普通の現象なんだろう。ノアが平然としてるし。
「《ライト》の恩恵持ちだと、こうやって照明の魔道具を作ってるな。これは魔石をセットすることで、長時間灯っていられるし、石の付け替えも可能だ」
そう言って、赤い石を突っつく。
どうやら赤い石が魔石らしい。だよね、これも消耗品だったらやってられないよね。あと、火の心配が無いのは、安全で良いと思う。
「魔石が明りを持続させるのか」
「そうだな。魔石は魔力が凝って出来た物だからな。薪で火を燃やすと同じで、これは魔法陣を通して魔力で光を持続させている」
え、良くわからないけど、魔力はエネルギーの一種ってことで良いんだよね? 多分。
「こいつら以外にも色んな魔道具があって、生活魔法の恩恵持ちはこうやって魔道具を作って生業にしてるんだ」
「魔法陣を描けば動くってわけじゃないのか?」
「ああ。これらは、その恩恵がある者が描いた魔法陣ではないと発動しないんだ。だから誰でも作れるものじゃないな」
「なのに、魔道具は日常品として使われてるのか?」
「だな。だからこそ、生活魔法の恩恵持ちは仕事に困ることは無い」
成程。魔道具っていうのは、生活魔法の恩恵を持っている人達しか作れない道具っていうことなんだね。
日常品というくらいだから、本当に多種多様な魔道具があるんだろうね。浄化用の魔道具は消耗品だし、仕事は無くならなさそう。
で、その人達が作成して、必要な人達が買うことで、この世界の生活が成り立ってるっぽい。
「専門の職人みたいなものか……?」
「そんなもんだな。あとは元からあるモノが特化する恩恵とか?」
「?」
「例えば、《薬師》の恩恵持ちだと、薬草の調合が簡単に出来て良質の薬を作れる、とかかな? 恩恵無しが作るものより数段効果が高いから、それが強みで商売になるんだ」
む。それって、私の《料理》の恩恵に近くないかな?
ということは、美味しい料理が作れるってことだよね。料理人として雇ってもらえるのかも。
「まぁ、恩恵っていうのは、そうやって天からある種の才能を授かるってことだな」
「天」
「まぁ、神様ってやつだ」
「なるほど……。俺の世界とは全く違う世界だ」
あまりの異世界っぷりに、感嘆してしまう。
この世界の魔道具が、私の世界のテクノロジーに該当するっぽい。科学技術の代わりに魔法の恩恵があるんだね。
逆に言えば、恩恵が無いから私の居た所は科学技術を発展させることで成り立ってきたとも言えるのかな。
後は確か、この世界には科学的なものが無くて、それに近いのは錬金術だと神様が言っていた気がする。今の話だと、生活魔法の他に錬金術があるということだろうか。
「では、錬金術というのはどういうモノなんだ?」
「錬金術は知ってんのか?」
「そんな話をイヴァリース、でいいのか? がしていた」
「へー」
説明が一息ついたのか、ノアが肉を捌き順に焼きだす。
先ほど食べた分を考えると軽く引くほどの量が焼かれていくけれど、どうやら人狼という種族は随分と燃費が悪いらしい。
こちらのお腹も食べ足りないと要求しだしたので、これが普通なのだと理解する。人狼さんの家って、エンゲル係数メッチャ高そう……。
「錬金術はなー、あれは結構特殊な恩恵だな」
「特殊?」
「ああ」と頷きながら、鞄に残りの肉ををしまい込み、例の小石を使って汚れた手を洗浄する。
それを見て自分の持っていた石を思い出し、返そうとすると、持って行けと更に数個渡された。なので、素直に礼を言って手持ちの袋にそれらを仕舞う。
「錬金術ってのは、そこらにある鉱物をレアな鉱石に変えたり、薬師より上級の薬を作り出したりと色々出来るんだよ。他にも独自の魔道具作ったりもするな。あとは自動人形やホムンクルスとかいう人造人間を作ったり、不老の石を作ったりするらしい。まぁ、そこまで行くのはごく一部だけだけど、そこまで行けたら伝説級で尊敬されまくりだ」
思った以上に、多彩で地位の高い恩恵らしい。
流石科学の代用品。色んなモノや、あり得ないモノが混じってるわ……。
「ここまで聞くと何でもできそうなんだけど、逆にやれることが多すぎて死ぬまでやっても全てに到達できないんだそうだ。なので、自分のやりたいものや、得意なものに絞って極めるわけだが、それを習得するのにもかなりの時間が必要らしい」
「それは……恩恵としてどうなんだ?」
「ハズレではないだろ。習得できれば引く手数多の職だな。似たような恩恵達の上位版だし。まぁ、あくまで習得出来れば、だけどな」
「上位の恩恵だから習得が難しいのか」
「多分なー。恩恵なんだから習得できないわけはないんだろうけど、道のりが長すぎて大器晩成型と言われてるわな。そう考えると、速攻で使える生活魔法系の方がいいのかもな」
「恩恵にも色々あるんだな」
「まあな。けど、恩恵無しよりは恵まれてるさ」
錬金術とは、中々難儀な恩恵らしい。
とりあえず、元居た世界と全く違う事だけは理解できた。出来たけど、やっていけるのかどうかはわからない。大丈夫かな、私。
ノアの話からすると、私の場合、《剣術》の恩恵があるから剣士としてやっていけるってことだよね? 後は《料理》もあるから、料理人にもなれるっぽい。
ヒナを探しながら剣士として彷徨いつつ、料理のバイトでもして資金を稼ぐ形で行こうか。それに、ハイオークの肉とか売れるなら、良い資金源にもなりそう。
うん、行けそうじゃない?
で、ヒナを見つけたら恩恵を確認して、それからの生活を考えればよさそう。
まずは、ノアに人間のいる場所まで連れていって貰おう。
話はそれからだね。
ただし、先程まで死闘を繰り広げた人型の豚が素材である。
さて、どうしたものか。
例の豚さんだと思うと二の足を踏んでしまうが、食欲を誘ういい匂いだ。焼いた肉の匂いにつられて体が空腹を訴えてくる。
確実に美味しいと思われるが、素材が素材のなので矢張り躊躇してしまう。
生きていた『本体』を知っているから残酷な気がしてしまうけれど、それって偽善的な考え方だよね。しかも私、一匹自分で殺しちゃってるし。
うーん、でも人型……。
「……」
「どうした? 美味いぞ? これぐらい食えないと、この世界の食いモン食えないぞ?」
思わず渡された肉をガン見していると、ニヤリと笑いながらすすめてくる。
確かにノアの言うことも一理ある。話を聞く限り、魔物の肉はこの世界では普通に食べられているようだし、食わず嫌いは駄目だろう。
元の世界でだって、見てはいないけど生き物の命を奪っていたわけだし。その肉を平気で食べてたんだんだから、同じことだと言えるよね。……多分。
起き上がったせいか食欲もそれなりに出てきたようなので、思い切って口にしてみる。
「ん、美味いな」
味は脂の乗った豚肉っぽい。
本体が筋肉質だったので硬い肉だと思ったけど、予想以上に柔らかい歯ごたえだ。それが適度な塩と香草で味付けされており、シンプルながらも肉の旨味を引き出している。
何だか癖になる味だ。拒否感は全然沸かないし、素直に美味しく食べられる。
「まだ食うか?」と差し出され、礼を言って受け取る。
(肉ってこんなに美味しかったっけ? ハイオークとかいう高級肉だからなのかなぁ。それとも、人狼の体だから味覚が変ったのかな。いくらでも食べられそう)
そんなことを考えながら口にしていると、最後の肉を食べ切ったノアが「食い足りない」と呟き、側においてあった鞄から、板に乗った巨大な肉の塊を取り出す。
「え?」
一瞬、見間違えたのかと凝視する。
が、目の前には変わらず大きな肉の塊が鎮座している。どう見ても鞄に入る容量を超えているのに、それをノアが難無く取り出したのだ。
「あれ? 収納アイテムって初めて見る?」
凝視しているのに気づいて声をかけてきたノアに、無言で頷く。
「もしかして、恩恵とか無い世界?」と問われ、「無いな」と返す。
マジか……と真顔で呟かれ、この世界ではこれが普通なのだと納得する。
そして、おもむろに鞄を手にして、こちらに見やすいように掲げてくれる。
それは、肩から下げられるタイプの平たい皮の鞄で、至って普通の鞄に見えた。
幅はそれなりにあるようだが、これに両手で抱えるぐらいの肉の塊が入っていたとは、実際に見た後でも信じられない。
「この鞄は《収納》の恩恵持ちが作ったやつで、外見以上の容量を持ってるんだよ。こう見えても、これはハイオーク三体ぐらいなら軽く入るんだぜ」
その分値段がメッチャ高いんだけどな! と胸を張られ、平たい鞄を凝視してしまう。
……うん、原理はわからないけど、そういうモノなんだろう。あれだ、いわゆるゲームで言うところの便利アイテムだ、きっと。
けど、沢山の荷物が小さい鞄に納められるっていうのは、便利そうだと思う。
「で、これは《浄化》の恩恵持ちが作った、洗浄用の魔道具な。血まみれだったお前が今綺麗なのはこのおかげだぞ」
「?」
そう言って、小石の様なモノを投げてくる。
そういえば、血まみれで倒れたはずだったのに、今はその臭いさえしていない。
どうやら、この魔道具とやらで綺麗にしてくれたらしい。
受け取った小石を手のひらに乗せる。
見た限り親指ぐらいの大きさで、普通の黒い平たい小石に見えるが、表面になにやら模様が掘られているのがわかる。
「それを手にして『浄化』と唱えると、表面に見えている浄化の魔法陣が発動する仕組みになってるんだ。一度使うとお終いだから、消耗品としていくつか持っておくのが常識だな。俺らみたいに至近距離で戦うタイプには必須アイテムだし、旅にも重宝される」
「魔法陣……」
「あぁ。で、鞄の中身も収納の魔法陣が描かれていて、それで空間を広げてるんだそうだ。で、これらを魔道具と呼んでいて、この世界では日常品として一般的に使われている。ここまでOK?」
「た、多分」
突然始まったこの世界の講釈に、驚きながらも頷く。
神託の通りに色々教えてくれるらしいので、有難く傾聴することにする。
「他には……これだな」
そう言いながら、次は傍に置いてあったランタンを翳す。
アンティーク風のランタンで、真鍮で出来た飾り気のない長方形の骨組みに、シンプルなガラスがはまっている。装飾品なのか、赤い石がはめ込んであるのが印象深いが、いたって普通のランタンだ。
ただ、炎の代わりにぼんやりとした光の玉が中に浮いており、それが周囲を優しく照らしている。あまりに幻想的な風景に、思わず凝視してしまう。
でも、こちらでは普通の現象なんだろう。ノアが平然としてるし。
「《ライト》の恩恵持ちだと、こうやって照明の魔道具を作ってるな。これは魔石をセットすることで、長時間灯っていられるし、石の付け替えも可能だ」
そう言って、赤い石を突っつく。
どうやら赤い石が魔石らしい。だよね、これも消耗品だったらやってられないよね。あと、火の心配が無いのは、安全で良いと思う。
「魔石が明りを持続させるのか」
「そうだな。魔石は魔力が凝って出来た物だからな。薪で火を燃やすと同じで、これは魔法陣を通して魔力で光を持続させている」
え、良くわからないけど、魔力はエネルギーの一種ってことで良いんだよね? 多分。
「こいつら以外にも色んな魔道具があって、生活魔法の恩恵持ちはこうやって魔道具を作って生業にしてるんだ」
「魔法陣を描けば動くってわけじゃないのか?」
「ああ。これらは、その恩恵がある者が描いた魔法陣ではないと発動しないんだ。だから誰でも作れるものじゃないな」
「なのに、魔道具は日常品として使われてるのか?」
「だな。だからこそ、生活魔法の恩恵持ちは仕事に困ることは無い」
成程。魔道具っていうのは、生活魔法の恩恵を持っている人達しか作れない道具っていうことなんだね。
日常品というくらいだから、本当に多種多様な魔道具があるんだろうね。浄化用の魔道具は消耗品だし、仕事は無くならなさそう。
で、その人達が作成して、必要な人達が買うことで、この世界の生活が成り立ってるっぽい。
「専門の職人みたいなものか……?」
「そんなもんだな。あとは元からあるモノが特化する恩恵とか?」
「?」
「例えば、《薬師》の恩恵持ちだと、薬草の調合が簡単に出来て良質の薬を作れる、とかかな? 恩恵無しが作るものより数段効果が高いから、それが強みで商売になるんだ」
む。それって、私の《料理》の恩恵に近くないかな?
ということは、美味しい料理が作れるってことだよね。料理人として雇ってもらえるのかも。
「まぁ、恩恵っていうのは、そうやって天からある種の才能を授かるってことだな」
「天」
「まぁ、神様ってやつだ」
「なるほど……。俺の世界とは全く違う世界だ」
あまりの異世界っぷりに、感嘆してしまう。
この世界の魔道具が、私の世界のテクノロジーに該当するっぽい。科学技術の代わりに魔法の恩恵があるんだね。
逆に言えば、恩恵が無いから私の居た所は科学技術を発展させることで成り立ってきたとも言えるのかな。
後は確か、この世界には科学的なものが無くて、それに近いのは錬金術だと神様が言っていた気がする。今の話だと、生活魔法の他に錬金術があるということだろうか。
「では、錬金術というのはどういうモノなんだ?」
「錬金術は知ってんのか?」
「そんな話をイヴァリース、でいいのか? がしていた」
「へー」
説明が一息ついたのか、ノアが肉を捌き順に焼きだす。
先ほど食べた分を考えると軽く引くほどの量が焼かれていくけれど、どうやら人狼という種族は随分と燃費が悪いらしい。
こちらのお腹も食べ足りないと要求しだしたので、これが普通なのだと理解する。人狼さんの家って、エンゲル係数メッチャ高そう……。
「錬金術はなー、あれは結構特殊な恩恵だな」
「特殊?」
「ああ」と頷きながら、鞄に残りの肉ををしまい込み、例の小石を使って汚れた手を洗浄する。
それを見て自分の持っていた石を思い出し、返そうとすると、持って行けと更に数個渡された。なので、素直に礼を言って手持ちの袋にそれらを仕舞う。
「錬金術ってのは、そこらにある鉱物をレアな鉱石に変えたり、薬師より上級の薬を作り出したりと色々出来るんだよ。他にも独自の魔道具作ったりもするな。あとは自動人形やホムンクルスとかいう人造人間を作ったり、不老の石を作ったりするらしい。まぁ、そこまで行くのはごく一部だけだけど、そこまで行けたら伝説級で尊敬されまくりだ」
思った以上に、多彩で地位の高い恩恵らしい。
流石科学の代用品。色んなモノや、あり得ないモノが混じってるわ……。
「ここまで聞くと何でもできそうなんだけど、逆にやれることが多すぎて死ぬまでやっても全てに到達できないんだそうだ。なので、自分のやりたいものや、得意なものに絞って極めるわけだが、それを習得するのにもかなりの時間が必要らしい」
「それは……恩恵としてどうなんだ?」
「ハズレではないだろ。習得できれば引く手数多の職だな。似たような恩恵達の上位版だし。まぁ、あくまで習得出来れば、だけどな」
「上位の恩恵だから習得が難しいのか」
「多分なー。恩恵なんだから習得できないわけはないんだろうけど、道のりが長すぎて大器晩成型と言われてるわな。そう考えると、速攻で使える生活魔法系の方がいいのかもな」
「恩恵にも色々あるんだな」
「まあな。けど、恩恵無しよりは恵まれてるさ」
錬金術とは、中々難儀な恩恵らしい。
とりあえず、元居た世界と全く違う事だけは理解できた。出来たけど、やっていけるのかどうかはわからない。大丈夫かな、私。
ノアの話からすると、私の場合、《剣術》の恩恵があるから剣士としてやっていけるってことだよね? 後は《料理》もあるから、料理人にもなれるっぽい。
ヒナを探しながら剣士として彷徨いつつ、料理のバイトでもして資金を稼ぐ形で行こうか。それに、ハイオークの肉とか売れるなら、良い資金源にもなりそう。
うん、行けそうじゃない?
で、ヒナを見つけたら恩恵を確認して、それからの生活を考えればよさそう。
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話はそれからだね。
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