最後の男

深冬 芽以

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9 いびつな三角関係

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 じわじわと迫り上げてくる快感に、身体が仰け反る。同時に胸を揉み上げられて、意識が分散する。

「早くれたいんだけど……」

 耳元で囁かれ、恥ずかしさで余計に目を開けられなくなる。



 ホント、このギャップはズルイでしょ――!



「彩……」

「挿れ……て」

 私は智也の首に腕を絡ませると、彼の耳元で言った。

 待ってましたと言わんばかりに、智也が押し入ってくる。

「あっ――。ああっ!」

「あーーー……、気持ちいーーー」

 息を吐きながら、智也が言った。

「『地味で真面目な堀藤さん』がこんなに気持ちいい身体してるなんて、誰も知らないんだよな」

「真面目はともかく、地味って……」

「派手ではないだろ?」

「そうだけど……」と、私は子供っぽく少し口を尖らせた。

 智也はクスッと笑って、キスを落とした。

「お前の素顔を知っているのが俺だけだと思うと、すげー興奮する」

「え?」

「料理上手だけどケーキ作りは出来ないとか、地味って言われて口を尖らせるとか、俺しか知らないだろう?」

 昨日も、智也は声を荒げていた。相手はまた、近藤さん。

 仕事中にスマホをいじって、その上ミスをした近藤さんが悪い。けれど、女性社員は近藤さんに同情し、陰で智也の悪口を言っていた。

『ホント、鬼だよね!』とか、『あんなんだから結婚できないんだよ』とか。



 ベッドの中じゃこんなに優しくて甘いなんて、誰も知らない……。



 誰も知らない智也の素顔を、私は知っている。嬉しいと、思った。



 智也も同じ気持ちだった……。



「そうね」と言って、私は智也の頬に触れた、

「鬼課長が実はヤキモチ焼きだとか、甘えたがりだとか、かなりHだとか、私しか知らないと思うと、興奮する」

 下腹部に力を入れて、膣内なかをキュッと締める。智也が、ギュッと目を閉じて、ハアッと息を吐いた。

「まったく……最高だよ」

 後はもう、激しく突き動かされて、昼間だとか、お腹の傷が恥ずかしいだとか、そんなことを考える余裕もなくなって、智也が両手で私の腰を掴んだ時に、ダイエットを続けようと思うので精いっぱいだった。



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