最後の男

深冬 芽以

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13 感情のままに

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『問題があるとしたら、AB型の女の考え方にあり、時にB型の男を拒絶してしまうかもしれません』

 占いを思い出した。

 現在いまが、まさに拒絶されている状態だ。

『B型の男から出来るだけ率直な考えをAB型の女に伝えるようにすると分かり合えます』



 俺の率直な考え……。



「俺は、好きな女性ひとと結婚したいです」

 前を走る白の軽自動車が、ウインカーもださずに車線変更した。あまり、近寄らない方が良さそうだ。

「彩さんが俺を受け入れてくれたら、きっと結婚を考えると思います」

 正直、もう考えている。

 彩さんと、真君と亮君と一緒にいれば、嫌でも『家族』を意識してしまう。

 彩さんの、子供たちに対する無償の愛を、俺にも向けてほしい。

「俺の、率直な考えです」

 無謀な車線変更を繰り返す前の車を避け、俺は右折した。スター○ックスのドライブスルーの看板が目に入り、矢印に従ってウインカーをだした。

 注文している車の後ろで、停まる。

「彩さんは何を飲みます?」

「ホットコーヒーを」

 俺はレギュラーサイズのホットコーヒーを二つ、注文した。店員から受け取った一つを、彩さんに手渡す。

 ドライブスルーの出口から、店の駐車場に入って、停車した。

「千堂課長のお気持ちは本当に嬉しいです。嬉しいですけど、もう結婚は……」

「離婚の理由を……聞いてもいいですか?」

「……」

 彩さんはコーヒーを一口飲んだ。俺も。

「結婚には向いていない人だったんです。自分が一番大切で、自分が一番大切にされていないと気がすまない人だったので……」

「本当に、暴力はなかったんですか?」

「……殴られたことはありません」

 彩さんは両手でしっかりと持ったカップを、じっと見つめているようだった。

「けど、よく怒鳴られた?」

「カッとなると……」

「俺も、そうなると思う?」

「それはっ――」

 否定しようと、してくれたと思う。けれど、彼女は言わなかった。

「わかりません。人は……変わりますから」

 付き合い始めるまでと、付き合ってみてからでは、まるで別人のようだ。

 俺にも経験がある。

 彩さんも、そうかもしれない。

 まして、結婚だ。

 恋人だった時と、夫婦になってからと、親になってからで、元夫は変わってしまったのかもしれない。

 もちろん、誰しも変わるだろう。けれど、その変化がかみ合わなければ、長く一緒にいることは出来ない。

「溝口課長との関係を解消して、俺とのことを考えてくれるってことは、それなりに好意を持ってくれている、と思っていいですか?」

「それは……」

 彩さんは少し困った顔で俺を見て、それから俯いた。

「……はい」

「今は、それで十分です」

「え?」

 俺はコーヒーを置き、座りなおして彩さんの方に身体を向けた。
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