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14 欲しいものと必要なもの
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しおりを挟む「ちょっと会わない間に、そんなことになってたの!?」と、蓉子が甲高い声で言った。
「年下の男二人に言い寄られるなんて、羨ましー」
「何、言ってんの。旦那さん、いい人じゃない」
「それはそれ、これはこれ、よ」と、蓉子は悪巧みをしている子供のように笑った。
「面白がって……」と、私はため息をつく。
蓉子は小学生の頃からの友達。中学生の頃は仲が悪かったけれど、今は親友と呼べる私の数少ない友達。
お互いに、素をさらけ出せる、気心の知れた仲だ。
「私が行けなかったホテルに、まさか年下上司と泊ったなんてねぇ。お礼にデザートをご馳走になってあげてもいいけど?」
「はいはい。五百円までね」
「やった! イチゴのパフェで」
蓉子が指さしたのは、春らしいイチゴフェアのメニュー。パフェは税込み四九九円。
今朝、急に蓉子からランチに誘われた。
蓉子の旦那さんが子供たちを映画に連れて行くから、時間が出来たと。
偶然にも今日は真と亮が土曜授業で、私は母親に子供たちのお昼ご飯を頼んで出て来た。
十一時オープンのファミレスに十一時二分に入り、私たちはまずドリンクバーのグラスを二つずつテーブルに置いた。
数年前には一杯ずつ取りに行けばいいとやらなかったことを、今では当然のようにしている。
元夫はこういうことを恥ずかしいと思い、『みっともない』と吐き捨てた。
「で? どうだった?」と、蓉子はキャラメルラテのストローを指でつまみながら聞いた。
「何が?」
「どっちのHが良かった?」
私は思わず周囲を見渡した。
両隣にはまだ誰もいない。良かった。
蓉子は平然とキャラメルラテをすする。
「昼間っからする話じゃ――」
「昼間しか会えないんだから仕方ないでしょ!」
確かに。
蓉子の子供はまだ幼稚園児で、ママがいなきゃ眠れない。ホテルに泊まるはずの日は、実家の母親に預けることになっていた。蓉子の実家は私の実家から徒歩五分の場所。
「――ってか、そこ重要?」
「重要でしょ! で? どっちが良かった?」
「……どっちも」と、私は小声で言った。
「違い過ぎてどっちとか言えない」
「マジ!? どっちがどんな風に良かった?」
親友といえども、これ以上は言うつもりはない。正確には、言えない。酔ったはずみでもなきゃ。
店員が料理を運んできた。蓉子はビーフシチューオムライスで、私はミートドリア。私は食後のイチゴパフェを二つ、追加注文した。
それぞれもう二杯ずつ飲み物を持って来てから、食べ始めた。
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