最後の男

深冬 芽以

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14 欲しいものと必要なもの

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「私の意見、聞いとく?」

「……一応」

「彩に遊びは無理だよ」

「……」

 だよな、と思った。

 私はそんなに器用じゃない。

「千堂課長の横槍が入るまでの数か月で、彩が溝口課長に本気にならなかったのが不思議なくらい」

「私だって……少しくらいは……」

「割り切って遊べるって? 無理だね。実際、『ごっこ』の線引きが怪しかったんでしょ?」

 図星だ。

 智也に、お姉さんに会わせたいと言われたあたりから、このままじゃマズいと思い始めていた。

「どうせ遊べないなら、気兼ねなく本気になれる相手にしたら?」

「千堂課長ってこと?」

 店員がやって来て空の皿を下げ、デザートを持って来てもいいか、と聞いた。私より先に、蓉子が頷いた。

 隣の席では、まだ父親が赤ん坊を抱いていた。

「ホントは、すでに結構好きでしょ」

「わかんない」

「何が?」

「なんか……実感ないっていうか、本当に本気にしていいのかわかんない」

「ヤッ――……ったくせに?」と、さすがの蓉子も声量を下げた。

 少し前のめりになって、小声で話す。

「本気じゃなきゃ、子持ちの年上女とヤッたりしないでしょ」

「私に本気になること自体があり得なくない?」

「聞いてみたの?」

「本当に本気かって?」

「『私のどこが好き?』って」と、蓉子が胸の前で両手を組み、首を傾げて可愛い子ぶって言った。

「……聞けるか!」

「ははは! さすがに、恥ずかしいよね。けど、それらしいことは言われてないの?」

「んーーー……。会社と子供たちの前でのギャップが好きだとかは言われた」

「あんた、会社でどんだけ猫被ってんの?」

「社会人として恥ずかしくない程度に」

「なら、素直に言葉通り受け取っておけば?」

 先ほどと同じ店員がパフェを運んできた。隣の席の年配の奥さんが、私たちと同じものをと注文した。

 私はパフェに挿してあるイチゴのポッキーから、蓉子は頂上に乗っかっているイチゴから食べ始めた。

「バツイチ子持ちの年上女に、そこまで積極的にアプローチしてくれる男なんて、貴重だよ?」

「そうなんだけど……」

「年下は初めてで心配?」

 確かに、年下とは付き合ったことがない。とは言っても、高校時代のクラスメイトと二歳年上の元夫しか、男性を知らない。

「そういうんじゃないけど……」

「じゃあ、なに?」

「ギャップが……」

「ギャップ?」

 アイスを口に入れた蓉子が、冷たさにしかめっ面をした。

「すっごい奥手そうなのに、実は強引で、だけど時々顔を真っ赤にして涙目になるんだもん。なんかもう……」

「ほだされてんな」

 私は頷いた。
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