最後の男

深冬 芽以

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19 呪縛からの解放

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 彩は、人に合わせて笑うのをやめた方がいいよ』

 小学校を卒業する時に、友達と交換したサイン帳に書かれていた言葉。

 私の第一の心の傷トラウマ

 私は子供の頃から人付き合いが苦手で、女子のグループだとか、親友だとか、好きな男子の話なんかに共感できなかった。だけど、一人でいるのはなんか嫌で、何となく話を合
わせたし、何となく笑っていた。

 それが見透かされていたと知り、ショックだった。

 大人になった今となっては、わざわざ卒業のサイン帳にそんなことを書いてきた友達もどうかと思うけど。

 中学生になって、ますます友達付き合いが下手くそになった。

 グループ同士のいがみ合いや、恋に協力しなきゃ友達じゃないとか言われ、挙句に成績が落ちて親に叱られる始末。

 好きだった部活で部長になれて頑張っていたけれど、副部長のグループに無視シカトされるようになって退部した。

 一時、自暴自棄になっていじめる側に回ったこともあったけれど、それでもいつの間にかいじめられているのは私だった。

 その頃、いじめたりいじめられたりを繰り返していた蓉子とは、今は無二の親友。

 お互いの心の闇を知り尽くした相手だから、気兼ねなく胸の内を明かせる。
中学での成績が悪くて、あまりいい高校に進めなかったけれど、友達関係にうんざりしていた私の成績は学年トップ二十に入るほど上がっていった。

 同じ時期に気の合う友達が出来て、グループデートなんかが流行って、何となくよく目が合うクラスメイトと付き合うようになった。

 初めての彼氏だった。

 初キスも、初エッチも、その人。

 一年ちょっと付き合った高校三年の春頃から、会話が続かなくなり、デートも減って、一緒にいるのが苦痛になってきた。

 友達から、彼が新しく入った一年のマネージャーと仲がいいらしいと聞いた。

 浮気と呼べるほどの事ではないし、私は彼が好きだったから、耐えた。

 けれど、彼は変わってしまった。

 友達が遊び半分でも煙草を吸うのを嫌悪し、真面目と言うほどではないにしても親を泣かせるようなことはしなかった彼が、幽霊部員の不良と一緒になって煙草を吸い、授業をさぼるようになった。

 一年のマネージャーも一緒に。

 私と一緒にいてもつまらなそうにため息をついたり、一緒に煙草を吸わないだけで舌打ちするようになった。

 私は彼に別れを告げた。

 なぜか彼は泣き出し、謝った。

 彼にとっても私は初キス、初エッチの相手だったから、少しは特別な相手として見てもらえていたんだと思った。

 別れてすぐはツラかったけれど、二週間ほどして彼がマネージャーと付き合い始めたと知って、吹っ切れた。

 一年後、彼がマネージャーを孕ませて結婚すると聞いた。別れて良かったと、心底思った。

 その頃には、私にも恋人が出来ていた。

 それが、元夫。
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